中国、南シナ海に海上原発の建設推進、米軍当局者は環境汚染と安全保障で懸念

中国が南シナ海の紛争地域の海に浮かべる海上原発の建設を推進している。米軍当局者は環境汚染と安全保障の二つの側面で危険要因になるものだとして懸念を示した。写真は南シナ海の海上原発。

中国が南シナ海の紛争地域の海に浮かべる海上原子力発電所の建設を推進し物議を醸している、と韓国紙が伝えた。米軍当局者は中国が実際に海上原発を造るには数年以上かかる見通しだとしながらも、環境汚染と安全保障の二つの側面で危険要因になるものだとして懸念を示した。

現時点で海上原発を運用する国はロシアだけだ。ロシアは2019年12月、極東地域チュクチ自治管区内のペベクでアカデミック・ロモノソフという名称の海上原発を稼動させた。無動力のバージ船に複層構造の発電所を設置した構造で、加圧水型の軽水炉2基と蒸気タービン2機が組み込まれている。

ハンギョレ新聞によると、中国は南シナ海海域の軍事施設に電力を供給するために、海上に浮かべて発電する原子炉を2010年から研究・開発している。米紙ワシントン・ポストが2日、米軍当局者の話を引用して報じた。

退任を控えていた米軍のジョン・アキリーノ・インド太平洋司令官はワシントン・ポスト紙に「中国の海上原発の構想は地域のすべての国にとって潜在的な影響を及ぼす」とし、「中国メディアは中国政府がこれらの海上原発を利用し、南シナ海に対する軍事的統制を強化する意図だとはっきりと報じている」と述べた。

このような状況は中国が台湾、日本、フィリピン近海を含む南シナ海でますます軍事力を誇示し、軍事的な緊張が高まる中で起きている。最近、フィリピンの西側の海では中国海警局の公船がセカンド・トーマス礁(中国名・仁爱礁)付近の比国軍派遣隊への補給を始めた艦艇を阻止するため、放水を繰り返すなど直接の衝突を辞さずにいる。

中国は海上原発の軍事的な意味を隠していない。共産党機関紙・人民日報の姉妹紙「環球時報」は2016年、「政府が南シナ海に原子炉20基を設置し、商業的開発や石油探査、海水淡水化などを支援する計画」としつつ、軍事利用の可能性にも期待感を示した。

環球時報は「海上原発が設置されれば、南シナ海の島と環礁は本質的に原子力推進航空母艦となる」と説明。「これらは遠くから来る米国の空母艦隊よりも軍事的にさらに有利だ」と強調した。

新米国安全保障センター(CNAS)のトーマス・シュガート研究員は「中国の海上原発の設置は中国が南シナ海に建設した人工島に対する支配をよりいっそう強化するものだ」と指摘。戦略国際問題研究所(CSIS)のグレゴリー・ポーリング氏は「中国が行うことには実際以上に私たちの警戒心を呼び起こすものが多い」と付け加えた。(編集/日向)

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