キム・スヒョン、百想芸術大賞で人気賞を受賞! 『涙の女王』に至る華麗なるスター街道

5月7日、“韓国のゴールデングローブ賞”ともいわれる第60回百想(ペクサン)芸術大賞で唯一、一般投票によって決定されるPRIZM人気賞を受賞した、キム・スヒョン。

最新作のNetflixシリーズ『涙の女王』は、NetflixのTV番組日本トップ10をはじめ、週間グローバルトップ10(非英語部門)でも1位を獲得し、世界中でも注目を集めた。今作でダブル主演を務めたキム・ジウォンとは初共演ながら、田舎出身の“スーパーマーケットの王子”ペク・ヒョヌ(キム・スヒョン)と、財閥のクイーンズグループ3代目となる“百貨店の女王”ホン・ヘイン(キム・ジウォン)の夫婦役でスペシャルな相性の良さを見せつけた。

“高飛車な妻と尻に敷かれている夫”という構図から、気づけば“愛らしい妻と頼り甲斐のある夫”となって、観る者の心を掴んで離さないストーリー。結婚3年目を迎え冷え切った夫婦の悲哀や葛藤、そして愛情と未来が復活していくさまを実に感情豊かに、ダイナミックに表現していたキム・スヒョン。

そんなキム・スヒョンは、1988年2月16日生まれの36歳。180cmと高身長で鍛え抜かれたボディだが童顔ゆえに、そのギャップにときめく女性も少なくないようだ。太い眉毛とまあるい瞳に口角がキュッと上がった唇が印象的。高校1年生の時に初舞台を経験し、2007年にシットコム『キムチ・チーズ・スマイル』でドラマデビューを果たす。後に、ペ・ヨンジュンが設立した芸能事務所キーイーストに2010年に所属。ヨン様の秘蔵っ子とも呼ばれるなか、2011年にドラマ『ドリームハイ』の主人公に抜擢され、一躍脚光を浴びた。

2012年のファンタジーロマンス史劇『太陽を抱く月』では、時代劇、そして主演に初挑戦し、最高視聴率40%を超える大ヒットを記録して、大ブレイク。同作でキム・スヒョン演じる王イ・フォンの子ども時代を演じ、「時代劇の申し子」と呼ばれたヨ・ジングとともに、渾身の演技で運命に翻弄される王の姿を披露した。

同年に公開された映画『10人の泥棒たち』に続いて、2013年はドラマ『星から来たあなた』でチョン・ジヒョンと再共演。17世紀初頭、銀河系の彼方から朝鮮に来た宇宙人ト・ミンジュン(キム・スヒョン)と、傍若無人な人気女優のチョン・ソンイ(チョン・ジヒョン)のラブコメディは大いに話題を呼び、韓国のみならずアジアでの人気を獲得。後に、同作は福士蒼汰と山本美月により、日本版としてもドラマ化された。

2017年からは入隊のため俳優業からは遠のいていたが、2019年に除隊後、『愛の不時着』のカメオ出演などもありながら、事務所をGOLDMEDALISTに移籍。2020年には、主演ドラマ『サイコだけど大丈夫』で本格的に俳優業に復帰したキム・スヒョン。愛することも希望を持つこともなく生きてきた、精神科病棟で働く保護士のムン・ガンテ(キム・スヒョン)は、愛を知らない人気童話作家のコ・ムニョン(ソ・イェジ)に出会い、そのサイコな言動に振り回されながらも、次第に惹かれ合っていく。ガンテの自閉スペクトラム症の兄、ムン・サンテ(オ・ジョンセ)ら3人の人生が交差するストーリーだが、生きづらさを抱える登場人物たちの闇が明けていく展開は清々しく、キム・スヒョンだからこそのヒーリング効果があったように思う。

2021年の『ある日~真実のベール』は、主人公の平凡な大学生ヒョンス(キム・スヒョン)が、偶然出会った女性と一夜を過ごし、翌朝目覚めると女性は血だらけの刺殺体となり殺人のぬれぎぬを着せられるという犯罪ドラマ。イギリスBBCのドラマ『クリミナル・ジャスティス』を原作とした同作は、重苦しい展開にハラハラさせられるなか、弁護士のシン・ジュンハン(チャ・スンウォン)の助けを得て、真実が解き明かされていく。終始緊迫感と悲愴感が漂うなか、塀の中のヒョンスとしてシリアスな演技でハッとさせた。

そして2024年。最新作『涙の女王』でさらなる飛躍を見せたキム・スヒョン。カメオ出演した『愛の不時着』では、緑色のジャージでコミカルに登場したキム・スヒョンと対面する“耳野郎”キム・ヨンミンの姿もあったが、『愛の不時着』の脚本家パク・ジウンが『涙の女王』も手がけているため、『涙の女王』ではところどころに『愛の不時着』のオマージュが点在する。『愛の不時着』に出演した名脇役たちが『涙の女王』に続々登場するのを発見するのも面白い。キム・スヒョンとは『サイコだけど大丈夫』で共演したオ・ジョンセも精神科医役で、主役のふたりと縁のあるソン・ジュンギは自身のヒット作から弁護士“ヴィンチエンツォ”として登場。さまざまな楽しみ方ができることも『涙の女王』がヒットした所以のひとつだろう。

今年6月には来日公演も決定し、日本でのますますの人気に拍車がかかりそうなキム・スヒョン。すでに代表作を手に入れている彼が、今後どのような作品選びをしていくのか。次回作も心待ちにしておこう。
(文=かわむらあみり)

© 株式会社blueprint