【5月12日付編集日記】母の日

 たった数文字の宛名からも、伝わる思いがある。「母の字で書かれた我の名を載せて届いておりぬ宅急便は」。俵万智さんの短歌に、学生時代、実家から送られてきた小包のことを思い出す

 ▼元気でやっているか、ちゃんと食べているか―。段ボール箱には米や野菜、好物の果物だけでなく、親心がぎっしり詰まっていた。新年度が始まってひと月余りたった。進学や就職で親元を離れて暮らし、同じような小包が届いたという人は少なくないだろう

 ▼「たんぽぽの綿毛を吹いて見せてやるいつかおまえも飛んでゆくから」。育った場所から風に乗って飛んで行く綿毛に、わが子の姿を重ねた俵さんの一首だ。とにかく母親は、子どものことを思っている

 ▼きょうは母の日。大手生保のアンケートによると、回答した約9千人のうち、母親とコミュニケーションを取る頻度が、月に1~2回以下という人は約4割を占めた。頻度が低いほどプレゼントを贈らなくなる傾向がある。贈らない理由には、面倒くさい、照れくさいなどが挙げられている

 ▼「いつかまたいつかそのうち人生にいつか多くていつかは終わる」。これも俵さんの一首。ひと言でもいい。母親に「ありがとう」を伝えよう。

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