【5月12日付社説】双葉郡の消防団/団結維持し活動の充実図れ

 双葉郡8町村の4月1日現在の消防団員数が1244人で、東京電力福島第1原発事故前に比べると7割弱になっている。地域再生が進む中で住民の安全安心を守る消防団への期待は大きく、活動の充実が課題になっている。

 全体では震災前の7割弱だが、団員数を町村別にみると傾向が異なる。広野町は震災前より3割増えており、楢葉町は震災前から微増となっている。一方、ほかの町村の団員数は減っており、葛尾村は震災前の8割弱、川内村と浪江町は約6割、双葉町と富岡町は約5割の状況だ。大熊町は、震災前の3割まで減少している。

 広野町と楢葉町は、町内事業所の勤務者らに活動を大規模災害時などに限定した「機能別団員」になってもらうことで団員数を確保してきた。富岡町などでも、工業団地で働く人にどのように関わってもらうかを検討している。各町村は、震災後に進出してきた企業団体に協力を求めるなどして、団員数の増強を目指してほしい。

 双葉郡の消防団では、避難指示が解除された後も生活拠点を避難先に設けている団員が少なくない。川内村と葛尾村は避難状況などを踏まえ、分団を統合し組織力の維持を図った。大熊町は町外生活者が多いことから、行政区単位にあった分団を居住実態に合わせ町内在住、町から1時間、町から1時間以上の3分団に再編した。

 ある消防団幹部は「避難先からでも検閲などに駆けつけるのは、震災前から続く人間関係があるからだ」と、団員が結束を保っている背景を語る。各町村には、帰還状況を踏まえた組織改編などの議論をする場合には、団の機能向上と人のつながりの維持を両立するような丁寧な合意形成を心がけてもらいたい。

 各消防団は地元での活動に工夫を凝らしており、富岡町では団員が「とみおか守り隊」を結成して町内をパトロールしている。浪江町では、警戒の目が手薄となる休日に各分団が輪番で巡回に取り組んでいる。このほか、役場に勤務している団員が分団や班をつくるなどして、夜間を含めた火災や災害などに備えている。

 火災などには、基本的に常備消防の双葉地方消防本部が対応するが、担当者は「人海戦術が必要な大きな山火事などでは消防団の協力が不可欠」と訴える。双葉郡ではさまざまな施設の整備が進み、地域の風景は日々変化している。町村と消防団、双葉地方消防本部が情報共有や合同訓練などを通じて、地域の防災力を常に向上させていくことが重要だ。

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