23年ドラフト全体1位ポール・スキーンズが刻んだ「トラウトやハーパーのような」スーパースターへの第一歩<SLUGGER>

現地5月11日のカブス戦で、パイレーツのトップ有望株右腕、ポール・スキーンズがメジャーデビューを果たした。昨年のドラフト全体1位で指名され、今季は3Aでの27.1イニングで45三振を奪った(奪三振率は何と14.82!)逸材のメジャー初マウンドは、5回途中3失点と結果だけ見ればそれほど圧倒的なものではなかった。

だが、要所要所では間違いなく「ドラフト史上最高の才能」と呼ばれただけのものを見せた。スキーンズのデビューをピッツバーグのファンが万雷の拍手で祝福する中、初回先頭のマイク・トークマンに100マイル超の4シームをズバズバ投げ込んで空振り三振。続く鈴木誠也も3球三振に打ち取るなど、カブス打線から4イニングで7三振を奪った。

5回に連打を浴びて上々のデビューとはいかなかったにしても、100マイル超を16度も計測した4シームに、独特のスプリンカー(スプリッターとシンカーを合わせたような軌道で変化する)は間違いなくメジャー級の威力。結果はどうあれ、憧れのメジャーの舞台にまずは第一歩を踏み出したスキーンズのピッチングは、本人も目指す「メジャーを代表するスーパースター」への期待を感じさせるものだった。

スキーンズが目指すスーパースターとは、もちろん選手としての実力だけを指すものではない。たとえば、4月中旬の3Aでの登板日にこんなことがあった。MLBのトップ有望株であるスキーンズの前には、当然のようにサインを求めてファンが群がり、それこそ球場のスタンド最上部まで延々と続く長蛇の列ができたほど。だがスキーンズは試合が終わってからも球場にとどまり、ひたすらファンにサインをし続けた。

なぜ、これほど熱心にファンへ対応するのかについて、スキーンズはこう語っている。

「僕たちだって、昔は彼らと同じ気持ちだったからさ。11歳の時、アリゾナ・フォール・リーグ(秋に行われるMLBの教育リーグ)に行って、マイク・トラウト(エンジェルス)やブライス・ハーパー(フィリーズ)にサインをもらったんだ。最高だったよ。彼らのプレーを見て、彼らからサインをもらって、家に帰って『トラウトやハーパーのプレーした試合を見たよ』と自慢できるのはとってもクールだった」

メジャーに昇格する以前から、スキーンズのファンに対する姿勢はスーパースターのそれだった。後は、ピッチングでそれにふさわしい実力を証明していけばいい。トラウトやハーパーに負けない「最高にクールな」メジャーリーガーになるための道程は、まだ始まったばかりだ。

構成●SLUGGER編集部

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