熱中症対策 汗かく運動や入浴を 「暑熱順化」岡山市消防局に聞く

 日を追うごとに気温が上がる季節を迎え、熱中症の危険性が高まっている。対策として注目されるのが、夏本番までに体を暑さに慣らす「暑熱順化」だ。重装備で活動する消防隊の間では導入が進んでおり、6年前から訓練に組み込む岡山市消防局に予防効果や家庭での取り組み方を教えてもらった。

 「早い時季から暑さに負けない体づくりが重要」。市消防局警防課の今田健介消防司令補(44)はそう強調する。

 市消防局では初めて夏日(最高気温25度以上)を記録した4月中旬から暑熱順化のトレーニングを始めた。防火服の下に雨がっぱを着用し体に負荷をかけながら、40分間のランニングなどを行う。

 目的は汗をかきやすい体をつくること。熱中症は体内にこもる熱が原因となるが、発汗により熱の放出を促すことができるためだ。順調にいけば、運動後の体温や心拍数の上昇を抑えられるようになり「同じ運動をしても、しんどさを感じにくくなる」と今田さん。

 日常生活でも取り入れることができる。推奨されるのが軽く汗をかく運動だ。ウオーキングやサイクリング、ジョギングを週3~5日、15~30分程度行うほか、筋トレやストレッチも効果的。湯船にゆっくりと漬かるのも良いという。いずれも水分、塩分補給を忘れないようにしたい。

 総務省消防庁の統計では昨年5~9月に岡山県内で熱中症疑いによる救急搬送は1865件。最多は7月だが、5月にも87件あり、初夏といえども油断できない。日本気象協会は対策の必要なタイミングを示した「暑熱順化前線」を公開しており、中国地方は5月中旬を目安としている。

 4月からは現行の「熱中症警戒アラート」より一段階上の「特別警戒アラート」の運用が始まった。岡山市消防局は「災害級の熱波に対しては十分な備えが欠かせない」とした上で「暑熱順化には2~3週間かかり、しばらく暑さから遠ざかると効果がなくなる。体が暑さに慣れていないときは、特に注意してほしい」と呼びかけている。

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岡山市立市民病院 桐山英樹・統括診療部長の話

 体が暑さに慣れる前に気温が急に上がると、うまく汗をかけず、体内に熱がこもってしまう。暑くなる前から暑熱順化で汗をかく習慣づくりが大切だ。

 熱中症は暑い環境が原因で起こる体調不良。初期症状は体温上昇、めまいや立ちくらみ、こむら返りなど。重症の場合、多臓器不全で命を落としたり、後遺症が残ったりする。

 軽症なら涼しい所で体を冷やし、水分と塩分の補給で様子を見たい。高熱で意識がもうろうとしたり、頭痛や嘔吐(おうと)を伴ったりする時はすぐに受診してほしい。

 発汗機能が衰えるお年寄りや、未熟な子どもはよりリスクが高い。屋内でも発症の危険があることも覚えておきたい。

桐山英樹・統括診療部長

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