ひとりは寂しくて…年金月30万円超・妻を亡くした〈69歳の元エリート〉、孤独に耐えられず「老人ホーム」に入居も、半年で退去した理由

昨今、高齢者の住まいとして有効な選択肢になりつつある「老人ホーム」。入居の理由はさまざまですが、ひとつが「パートナーを失くした喪失感から」というもの。特に妻に先立たれた夫が入居を決断するケースは多いようです。しかし、せっかく決めた老人ホームでも退去に至ってしまうことも珍しくないとか。みていきましょう。

家のことはすべて妻に依存…そんな夫が妻を亡くしたら

――伯父さんの老け込みようがスゴイ

68歳だという伯父を心配する男性の投稿。半年前、結婚40年という年に妻を亡くし、すっかり意気消沈。しっかりと食べているのか、心配するくらいの激やせぶりだといいます。

伯父は大手企業で役員クラスにまで上り詰めた元・エリート。いまは古くからの友人に頼まれて、仕事を続けているといいます。「仕事くらいしかやることがないから」が伯父の口癖。支えてくれる人がいなくなったことも、激やせの要因だと男性はいいます。

国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』によると、60歳未満の現役世代において、妻の平日1日の平均家事時間は、「30代」が最⾧で253分。最短の「20代以下」でも226分でした。一方夫は、というと、最長の「20代」でも69分。最短の「50代」では39分と、妻の6分の1程度の時間しか家事をしていません。男性のほうが外で働いている時間が長いから……そんな昭和的な言い訳をする人もいるかもしれませんが、では休みの日はどうでしょう。妻では最長が「40代」の281分、最短が「20代」で237分。それに対し、夫は最長が「30代」で110分。最短は「50代」で64分。妻は平日も休日もフル稼働なのに対し、男性は休日は家事時間が増えるものの、それでも妻の1/2~1/3程度。最も家事のしない「50代」では4分の1にもなりません。

最近は60歳で多くが定年を迎えても、そのまま働き続ける人も多いので、「家事をしない夫」はそのまま60代に突入。「妻がいないと家のことは何もできない」という夫が一般的といえそうです。

日本人の平均寿命は男性で81.05年、女性で87.09年。また夫婦においては、男性のほうが女性よりも平均1~2歳程度年上。そのため「夫が先に亡くなる」というのが大多数。妻に先立たれるなど、1ミリも考えていない夫は多いのではないでしょうか。

だからこそ、「夫を亡くした妻」よりも「妻を亡くした夫」のほうがパートナーを亡くしたときの喪失感がヒドイといわれています。

寂しくてひとり暮らしに限界!見学して決めた「老人ホーム」だったが…

周囲が心配するほどの伯父の激変ぶり。

――前はメタボを心配するほどだったのに……

さらに伯父は事あるごとに「寂しい」「寂しい」と訴えるようになったものだから、親戚が皆、心配を口にする……そんな事態が急変する出来事が。突然、「この家も売って老人ホームに引っ越すことにした」というのです。伯父いわく、

――老人ホームなら、食事も掃除も洗濯もしなくてもいい

――常に同年代がいるから、寂しくない

というのが決断の理由。いまのままでは伯父もやせ細ってどうにかなってしまう……と心配していた親戚も、それであれば、と胸をなでおろしたといいます。

伯父はいくつかの老人ホームを見学。「年金をもらうようになったら月30万円くらいになるはず」と伯父。お金の心配はないから、少々高くてもいつまでも安心して暮らせることが第一条件と、いまは必要なくても、医療や介護のフォローがしっかりしているホームを選んだといいます。

これで男性もひと安心かと思いましたが、話には続きがあります。入居から半年経たずに、伯父はホームを転居したというのです。

――えっ、何がいけなかったの?

男性が伯父に聞いたところ、「自宅にいたときよりも、もっと孤独だった」と耳を疑うような理由を口にしたのです。伯父の話を整理すると、

・さすがに月額費用が高いだけあり、サービスの質は申し分なし

・ここなら終の棲家としても申し分なし

・しかし入居者はみな現役を引退した人たち

・ホームから時々仕事に出かける伯父とは話が合わず

・伯父は常にホームでもひとり。周囲に人がいるだけに余計に孤独を感じた

話を聞いた男性は、いまいち釈然としない気持ちになったといいますが、本人が「寂しい」「孤独だ」というなら、仕方がありません。結局、伯父と同じように現役で働く人も入居するホームへと転居を決めました。

老人ホームに入居する理由はさまざまですが、入居前の施設見学は必須です。その際に、チェックすべきポイントが色々とあります。そのひとつが「入居者」。施設によって、要介護者のみとか、自立している人のみとか、要介護者も自立している人もOKなど、条件はさまざま。同じような入居条件だったとしても、要介護者が多い、自立している人が多い、認知症患者が多いなど、施設によって特徴があります。そのあたりをしっかりと確認して決めないと「入居者と合わない」という結果に。男性のように退去を決めるケースも珍しくないのです。

[参考資料]

国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』

© 株式会社幻冬舎ゴールドオンライン