【岩本輝雄】劇的な逆転勝ちだけど、マリノスが勝つべくして勝ったと思う。CLのレアルみたいだったね

[ACL決勝・第1レグ]横浜 2-1 アル・アイン/5月11日/横浜国際総合競技場

5万3704人。トリコロールに彩られたスタンド。ファイナルに相応しい雰囲気だった。ホームにアル・アインを迎えたACL決勝の第1レグで、マリノスは2-1で逆転勝ちした。

アル・アインは“ザ・中東”というチームだったね。しっかり守って、カウンター。本当に痛いのか分からないけど、よく倒れていたし(笑)。まあでも、それも時間の使い方という意味では、うまいなぁとは思った。

割り切った戦い方で、カウンターも鋭い。マリノスの隙を見逃さず、先制点も奪ってみせた。でも、僕としては安心して見ていられたかな。

前半からマリノスはチャンスを作っていた。後半に入っても、それは変わらない。同点にするまで多少、時間はかかったけど、攻めあぐねている、とは違って、いつ点が入るのかなという感じだった。

ヘッドで同点ゴールを挙げた植中はいいね。スピードがあって、常にゴールを狙っている。チャンスにもよく絡んでいて、ポジショニングもセンスがある。準決勝でも点を決めているし、良い流れに乗っているんじゃないかな。

その植中のゴールをアシストしたヤン・マテウス。右サイドからクッとカットインして、柔らかいクロスを入れた。あのカットインも、試合を通じて“縦”を見せていたから効いたんだろうね。縦にも中にも行けるから、相手の対応もちょっと遅れる。これぞヤン・マテウスというアシストだった。

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そして逆転弾は渡辺。途中出場で、馬力のあるプレーを見せていた。中盤の深い位置でも、前に出て行っても、存在感があった。攻撃を活性化させて、決定的な仕事もこなす。マリノスの攻撃を一段階、引き上げてみせた。

終わってみれば、2-1。シチュエーションは違うけど、この前のCLでレアルがバイエルンに土壇場で逆転した試合を思い出したよ。劇的な勝ち方かもしれないけど、でも力の差はあったように見えたし、マリノスが勝つべくして勝った試合だったと思う。

決着をつける第2レグは、敵地でのゲームだ。相手はホームでさらに勢いを出してくるだろうね。簡単な試合にはならないだろうけど、僕は優勝すると思っている。

点は取られるかもしれない。でも、たとえ先制されても慌てる必要なんてまったくない。マリノスの攻撃力はやっぱり凄いし、選手層も厚い。マリノスは本当にブレないからね。どんな時でも攻撃的。それをずっと貫いて、ここまで来た。マリノスらしく、強気な戦いでトロフィーを持ち帰ってくるよ。

【著者プロフィール】
岩本輝雄(いわもと・てるお)/1972年5月2日、52歳。神奈川県横浜市出身。現役時代はフジタ/平塚、京都、川崎、V川崎、仙台、名古屋でプレー。仙台時代に決めた“40メートルFK弾”は今も語り草に。元日本代表10番。引退後は解説者や指導者として活躍。「フットボールトラベラー」の肩書で、欧州CLから地元の高校サッカーまで、ジャンル・カテゴリーを問わずフットボールを研究する日々を過ごす。23年に『左利きの会』を発足。

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