体重増加の原因になることも…40代以降の女性健康トラブルを左右するものとは!?

40代以降の女性に現れるさまざまな健康トラブル。「もしかして更年期のせい?」と思われる方も多いでしょう。

更年期症状の不調を引き起こす女性ホルモンの減少、症状の緩和について、湘南リウマチ膠原病内科の上原武晃院長に聞きました。

Q.女性ホルモンとはどのようなものですか。40代以降、女性ホルモンはどのように変化しますか

女性ホルモンにはいくつか種類があり、代表的なものが「エストロゲン」と「プロゲステロン」です。これらのホルモンは、女性の生殖システムや体内のさまざまな機能に影響を与えます。それぞれの詳しい役割は以下の通りです。

・エストロゲン
卵巣で主に分泌されるホルモンで、女性の性的特徴や月経周期の調節に重要な役割を果たします。また、骨密度を維持する・皮膚や粘膜を健康に保つなど、さまざまな生理学的機能にも関与します。

・プロゲステロン
主に卵巣で分泌され、子宮内膜の成長や月経周期の調節・妊娠維持などに重要な役割を果たします。

40代以降、女性ホルモンの量は少しずつ揺らぎながら減少します。卵巣機能が低下し、エストロゲンやプロゲステロンの分泌量がアンバランスになる「更年期」と呼ばれる時期で、月経不順やホットフラッシュなどの「更年期症状」が起こります。更年期症状が生活に支障をきたすほど重い場合には、「更年期障害」となります。

Q.更年期症状にはどのようなものがありますか

一般的な更年期症状には、以下のものがあります。

・ホットフラッシュ(のぼせ):突然の体温上昇を伴う感覚。顔や首が赤くなり、発汗やほてりを伴う。
・夜間の発汗:夜中に汗をかく。
・精神的な症状:不安・イライラ・うつ的な気分・情緒の起伏が大きくなる。
・睡眠障害:ホットフラッシュや夜間の発汗、不安感などが、睡眠障害の原因となる。
・不規則な生理周期:生理の周期が不規則になり、最終的に閉経する。
・膣乾燥:膣の粘膜が乾燥し、性交痛や不快感を引き起こす。
・性欲の減退:性欲が低下することがある。
・記憶と認知の問題:集中力の低下や記憶力が減退する。
・体重増加:体重が増加することがある。特に腰や腹部に脂肪が蓄積しやすい。
・骨密度の低下:骨密度が低下し、骨折のリスクが増加する。
・関節の痛みやこわばり:手や指・肘・肩・膝等に慢性的な痛みや、動かしにくさといったこわばり症状を起こす。

Q.更年期症状を緩和するために摂取するといい食材や栄養素、成分はありますか

40代以降の女性が日常生活の中で女性ホルモンを増やすことは難しいですが、さまざまな食材や栄養素をバランスよく摂取することは、女性ホルモンの減少による更年期症状の緩和や健康維持に役立ちます。

摂取するといい食材や栄養素、成分と、その働きについては以下の通りです。

・カルシウムとビタミンD
カルシウムは骨密度を維持し、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)のリスクを軽減するために重要な栄養素です。また、カルシウムの吸収を助けるビタミンDの摂取も大切です。カルシウムを多く含む食品としては、乳製品(牛乳・チーズ・ヨーグルト)、緑黄色野菜(ブロッコリー・カボチャ)、豆類(大豆・豆腐)、魚介類(サケ・サバ)などがあります。

・食物繊維
更年期はエストロゲンの減少により、コレステロール値が上昇しやすくなります。食物繊維で便通を改善することが、コレステロール値を下げるのに役立ちます。穀物(オートミール・全粒穀物)、果物(リンゴ・バナナ)、野菜(ほうれん草・かぼちゃ)、豆類(レンズ豆・ひよこ豆)などから摂取できます。

・植物性のエストロゲン様物質
植物性のエストロゲン様物質は、女性ホルモンと同様の働きをすることが知られています。大豆製品(豆腐・豆乳・大豆)・亜麻仁・くるみ・イモ類(さつまいも・ジャガイモ)などに含まれます。

・抗酸化物質
抗酸化物質は体内の酸化ストレスを軽減し、細胞の健康を保つのに役立ちます。ベリー類(ブルーベリー・ラズベリー)、ビタミンCを多く含む野菜(赤ピーマン・ブロッコリー)、ビタミンEを多く含む食品(アーモンド・ひまわりの種)などが良い摂取源です。

Q.更年期症状への対策としてできるセルフケアはありますか

更年期症状への対策としてのセルフケアには以下の方法があります。

・適度な運動
定期的な運動は体重管理や骨密度の維持に役立ちます。有酸素運動(ウォーキング・ジョギング・水泳)や筋力トレーニングなど、適度な運動を取り入れましょう。

・ストレス管理
ストレスはホルモンバランスに影響を与えます。リラックス方法やストレス解消法(瞑想・ヨガ・趣味の時間など)を積極的に取り入れてストレスを軽減しましょう。

・十分な睡眠
十分な睡眠はホルモンバランスや心身の健康に重要です。良質な睡眠を確保するために、睡眠環境の整備や睡眠のリズムを整えることが大切です。

・喫煙やアルコールの制限
喫煙や過剰なアルコール摂取は、女性ホルモンに影響を与える可能性があります。健康のために喫煙を避け、アルコール摂取を控えましょう。

・サプリメントの摂取
「エクオール」といわれる大豆成分由来のサプリメントの摂取で、更年期症状による健康トラブルが和らぐと報告されています。

これらのセルフケアを組み合わせることで、更年期の症状を軽減することが期待できます。

Q.更年期症状は病院で治療できますか

更年期に起こる症状は医療機関で治療できます。主な治療法には以下のものがあります。

・ホルモン補充療法(HRT)
更年期障症状の管理には、HRTがよく用いられます。エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンを補充し、更年期に起こる症状を軽減する治療法です。HRTは経口薬・パッチ・クリーム・注射などの形態で行われます。

・その他の薬物療法
更年期に起こる症状に対して、プラセンタや漢方・ビタミンEなどの薬物が処方される場合があります。

・骨粗鬆症治療
更年期におけるエストロゲンの減少は骨密度の低下を引き起こし、骨粗鬆症のリスクを高めます。骨粗鬆症の治療には、骨密度を改善する薬物(ビスホスホネートなど)が使用されます。

これらの治療は個々の症状や患者の状態に応じて選択され、医師の指導のもとで行われる必要があります。更年期症状が生活に大きな影響を与える場合は、専門家と相談して適切な治療法を見つけましょう。

教えてくれたのは・・・

上原武晃 院長

日本リウマチ学会専門医・指導医・評議員。大学病院・市中病院を経て2019年神奈川県茅ヶ崎市に湘南リウマチ膠原病内科を開院。3,000例を超えるリウマチ膠原病専門診療の経験を通し、女性特有の関節症状の鑑別、リウマチ膠原病疾患の早期発見早期治療、専門ケアに注力した診療を行っている。更年期など女性特有の体の不調、手や指のこわばりや関節痛などの診察のため、東京・神奈川を中心に毎月1,000人を超える患者さんが来院している。

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取材/文:山名美穂(Instagram「@mihoyamana」)
編集:サンキュ!編集部

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