中国開発の旅客機C919、来年にはEU乗り入れ許可の可能性―香港メディアなど

上海耐空査定センターの顧新主任は中国で開発された旅客機のC919(写真)について、欧州航空安全機関に対して耐空証明の発行をすでに申請しており、2025年には取得できる可能性があると説明した。

上海適航審定中心(上海耐空査定センター)の顧新主任はこのほど、香港放送局のRTHKの取材に対して、中国で開発され中国国内で商用飛行が始まって約1年が経過したジェット旅客機のC919について、欧州航空安全機関(EASA)に対して耐空証明の発行をすでに申請しており、現状では予測不能な状況が多いと考えられるものの、2025年には耐空証明を取得できる可能性があると説明した。

航空機が飛行するためには、飛行区域の国あるいは国に代わる組織の許可を得なければならない。申請を受けた当局機関は、該当する航空機の安全性などを審査した上で、飛行を許可する耐空証明を発行するか否かを決める。同証明を扱う機関として、国際的な影響力がとりわけ大きい存在が、米連邦航空局(FAA)とEASAだ。

中国は1970年代にジェット旅客機の開発に着手して、米国のボーイング707をデッドコピーしてY-10(運-10)として完成させたが、製造のための工業の基盤もなかったためにしばらくして放棄した。改めて旅客機開発に着手したのは90年代末で、中国商用飛機(COMAC)が最初に手掛けた地域路線用のARJ21は2008年に初飛行した。COMACが次に開発したのは幹線用のC919で、23年5月に商用運航が始まった。

C919の客席数は最大で174席で、その前のARJ21は客席数が最大でも100席程度だったことなどから、中国では「大型旅客機」に位置づけられる。ただし、世界的に「大型旅客機」と見なされるのはおおむね、客席部分に複数の通路がある「ワイドボディー機」で、C919は1通路しかない「ナローボディ機」だ。

旅客機として完成しても、FAAやEASAの耐空証明を取得しなければ、国際市場に向けて広く売り込むことは不可能だ。そのため、C919についてはFAAやEASへの耐空証明の申請が注目されていた。

上海耐空査定センターの顧新主任はこのほどRTHKの取材に対して、C919については欧州航空安全機関(EASA)に対して耐空証明の発行をすでに申請していると説明した。関連手続きを進めているのは、中国国内についての耐空証明を発行した同センターという。顧主任は「われわれは、中国人が認証した飛行機は十分安全だという自信を持っています。センターは手順に沿って航空機についてを(EASAに)示していきますが、国によって技術や習慣に若干の違いがあるので、多くの議論や論争が行われる可能性があります。センターとしては、技術を(公明正大な議論の場である)テーブルの上に置いて努力します」と説明した。

顧主任はC919が耐空証明を取得できる時期については、「これは比較的敏感な問題で、われわれは手順に従って、われわれの飛行機を示す努力をします」と明言を避けた上で、「われわれの計画では、来年に証明を取得することを期待しています」と述べた。顧主任はただし、厳しい議論が発生する可能性があることを、繰り返し強調した。

海外での耐空証明の取得についての地政学的な影響の有無については「われわれは当面、地政学的な問題や政治的な問題を考えません。私たちの仕事の範囲を超えています。全世界の民間航空には、人々の移動の安全を保証するための基準があります。政治的なレッテルを貼って『あなた(の航空機)は安全ではない』とか『私(の航空機)は安全だ』などと言うべきではありません」と述べた。

香港メディアの星島日報によると、東方航空は6月1日に、C919を使って香港から上海に向けてチャーター便を運航し、上海での交流活動に参加する香港の大学生を輸送する。C919にとって初めての中国大陸部外への商業飛行であり、COMAC関連会社の中国商飛客服の佟宇副社長は、「飛行が順調に成功することを期待します」と述べた。(翻訳・編集/如月隼人)

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