【計算された無能?】『涙の女王』で描かれた財閥家の男たちはなぜあんなに駄目だったのか

社会的なシンドロームを巻き起こした『涙の女王』。このドラマは登場人物の人間性が本当によくわかるほどキャラクターの設定が巧みだった。その中で特に目立ったのが、クイーンズグループという財閥の経営を担った3人の男たちである。

それは会長のホン・マンデ(キム・ガプス)、副会長のホン・ボムジュン(チョン・ジニョン)、専務理事のホン・スチョル(クァク・ドンヨン)だ。彼らは3世代にわたって財閥を率いていた。

しかし、ドラマを見る限りでは、「本当にこの3人で財閥を運営していけるの?」と不思議な疑問が湧いていた。どう考えても切れ味がある経営者には見えないのだ。

マンデは苦労して会社を作って財閥まで成長させた創業者。とてつもない成功者かと思えば、非常に感情的に経営をしていて、巨額の裏金まで作っていた。しかも30年寄り添ったモ・スリ(イ・ミスク)にとことん騙されていた。人間を見る目がなかったのだ。結局はモ・スリに裏切られてすべてを失った。

そのマンデの息子がボムジョンだ。彼は仕事よりジクソーパズルに熱中するような人物で、経営者としては本当に頼りなかった。本来、2世であれば経営の帝王学を学んで先進のビジネスを進めていくのが当たり前なのに、そういう雰囲気が全くなかった。場当たり的に経営判断をしているところがあり、とうてい有能な経営者とは言えなかった。

その息子がスチョルである。

左からクァク・ドンヨン、キム・ガプス、チョン・ジニョン(写真提供=OSEN)

愛すべきキャラ

彼は新しい巨大プロジェクトを任されるほどの立場なのだが、戦略性がなく、結局は財閥を乗っ取られるきっかけを作ってしまった。あまりにも甘やかされていて、人間関係をうまく築くことができなかった。

このように財閥家を運営する3人の男たちが揃って冴えない経営者として描かれていた。それに比べるとキム・ジウォンが演じたヘインは、デパート部門を任されてシャープな経営に徹していた。本当に好対照であった。

しかし、そこがまた『涙の女王』の狙いであったかも……。というのは、財閥家の男たちはコミカルな場面を盛り上げるのに最適だったのだ。そういう意味では、この3人が本当に「愛すべきキャラ」に思えてきた。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

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