増える白エビ、温暖化? 本県沖漁、紅エビに交じる「富山湾の宝石」

 本県沖での底引き網漁で漁獲される「紅エビ」の中に近年、富山県の特産として知られる「白エビ」が交ざり込んでいる。今季も鶴岡市の鼠ケ関港で確認された。資源保護の取り組み効果の可能性がある一方、本県漁業者の中には「地球温暖化の影響ではないか」と海洋環境の悪化の影響を懸念する声もある。ただ、はっきりした原因は分かっていないのが現状だ。

 庄内浜は全国有数の「ホッコクアカエビ(甘エビ)」の漁獲があり、地元では「紅エビ」と呼ばれている。山形県水産研究所(鶴岡市)によると、本県の漁獲量は2014年が約145トンで、23年は96トンだった。このうち6割近くは鼠ケ関港で水揚げされており、鶴岡市の県漁協念珠関(ねずがせき)総括支所によると、同港では最大7隻がエビ漁を行っている。一方、白エビは「シラエビ」とも呼ばれ、紅エビとは種類が異なる。富山県沖に漁場が形成されブリ、ホタルイカとともに同県を代表する海産物となっている。

 白エビは本県沖でも取れることは以前からあったが、近年は量が増えつつあるという。底引き網の漁業者でつくる念珠関(ねんじゅせき)発動機船主会の会長・五十嵐万早樹さん(57)=同市鼠ケ関=の紅エビ漁では、3、4年前から数匹交ざるようになり、最近は数十匹入ることもあるという。「白エビは年々増えている。一方でハタハタやマダラは取れなくなっており、温暖化の影響ではないかと心配になる」と海の変化を危惧している。

 ただ、近年、あらゆる魚種で不漁が続く中、白エビは資源保護が進んでいる魚種でもあり、一概に海洋環境の変化とも言えないのが現状だ。富山県水産研究所によると、同県沖の白エビの漁獲量は16年が438トンだったものの、資源管理を行い、4~11月の漁期に操業回数の制限などをしたことで、19年以降は500~600トン前後と水揚げは回復してきているという。

 山形県水産研究所(鶴岡市)の高沢俊秀副所長は「本県沖で白エビが数キロ単位で取れるようになったのは、資源の増加も影響しているとみられる。一過性の可能性もある」と分析。温暖化の影響については「恒常的な現象なのか、慎重に推移を見守る必要がある」と指摘している。

 本県沖では、フグやサワラなど、取れる魚種の変化はこれまでもあった。既存の主力魚種の不漁は続く一方、海の変化を逆手に取り、新たな魚種のブランド化を進めている側面もある。白エビについても、効率的な漁法やブランド化などの検討の対象になる可能性もあるという。

【白エビ】オキエビ科で体長は6~7センチほど。薄紅色をしているが、水揚げ直後は透き通って白っぽく見える。「富山湾の宝石」とも呼ばれる。水深200~300メートルに生息し、夜間は餌を求めて100~150メートル付近に浮き上がる。甘みがありねっとりとした食感が特長。さしみやかき揚げなどで食べられ、1キロ3千円以上で取引されることもある。

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