超満員!夢のオールスター戦で藤波辰爾とタイガー戸口が不穏なやりとり マサ斎藤が「やめろ!」と制止

戸口にトリプルドロップキックを決める鶴田、藤波、マスカラス(右から=1979年8月26日、日本武道館)

【プロレス蔵出し写真館】5月6日、日本武道館で日本プロレスリング連盟の「ALL TOGETHER~UJPW発足記念大会~」が行われた。今大会は加盟を表明している9団体から新日本、ノア、DDT、大日本、ドラゴンゲート、スターダムの6団体が参加した。

プロレスオールスター戦「ALL TOGETHER」は昨年に続いて今回が4度目の開催とのこと。

オールドファンにとってオールスター戦といえば、決して交わることがないと思われていた新日本プロレスと全日本プロレス、そして国際プロレスの3団体が一堂に会した東京スポーツ創立20周年記念イベントとして企画された「8・26夢のオールスター戦」が思い浮かぶ。

今から44年前の1979年(昭和54年)8月26日、日本武道館は始まって以来の超満員1万6500人の観衆で埋め尽くされた。当日売りのチケットを求めて会場に一番乗りしたのは、なんと前日の25日午前8時30分に並んだ2人の高校生。その後、行列は伸びて徹夜組は約40人。午前9時過ぎには約2キロの大行列となり、11時から予定されていた当日売りの発売を30分繰り上げる措置が取られた。

ジャイアント馬場とアントニオ猪木が約8年ぶりとなるBIコンビを復活させ、タイガー・ジェット・シン&アブドーラ・ザ・ブッチャー組から勝利を挙げた。猪木は「馬場さん、今度は一騎打ちだ。オレの挑戦を受けてくれ」と絶叫。馬場も「よし、やろう」と、その場の雰囲気に合わせるかのように応じたが、〝だまし討ち〟のような猪木のマイクアピールに不信感を募らせた。

2度目のオールスター戦が企画されたが、実現には至らなかった。

さて、この日メインに次ぐ歓声を集めたのはセミファイナルのラッシャー木村 vs ストロング小林ではなく、この試合の前の第7試合。ジャンボ鶴田&藤波辰巳(現・辰爾)&ミル・マスカラスの〝飛行トリオ〟がマサ斎藤&高千穂明久(後のザ・グレート・カブキ)&タイガー戸口(キム・ドク)組と対戦した6人タッグマッチだった。

試合はマスカラスが斎藤をフォールして勝利を収めたが、パンフレットの試合カードでは45分3本勝負となっており、観客の混乱を生んだと、ファンが振り返っていた。

さらに、40年以上たってこの試合について語ったのは戸口だった。

「藤波のヒザがオレの急所に当たった。それでオレは頭にきた。『やんのか』って言ったらあいつも構えたけど、斎藤さんが『戸口やめろ!』って大きな声で制した」と明かし、斎藤が止めなければ、試合がどうなっていたかわからないとも語っていた。

問題の場面は、飛行トリオが戸口にトリプルドロップキックを決めた(写真)後に起こった。鶴田が戸口をダブルアームスープレックスで投げてから藤波にタッチ。藤波は戸口のボディーにトーキック。戸口もチョップで返してチョップ合戦を展開。藤波が足を取りにいくと戸口はフロントネックロックで藤波の動きを止め、そのままの体勢でロープに押される戸口。

ロープブレークで、離れ際に藤波は戸口の股間にヒザを当てた。戸口はムッとして拳を握ったが、藤波は一歩も引かず臨戦態勢を取った。

戸口はファンクラブのインタビューで「オレと藤波とじゃウエートが違う。一緒にされたくない」と語っていて、ジュニアのレスラー、まして日本プロレスの後輩・藤波を〝見下していた〟。現に開始直後、藤波と対峙した戸口は片手を高く上に伸ばして大きさを強調していた。

当時の藤波はWWF(現WWE)ジュニアヘビー級王者としてブレーク中。この自分を〝なめた〟態度に〝カチン〟ときた藤波がヒザを繰り出したようだ(事情通の話)。

もっとも、ユーチューブで試合映像が公開されるまでは、選手同士にしかわからない些細なやりとりだったが…。

ところで、この大会で新日 vs 全日による団体対抗戦と呼べるものは、坂口征二 vs ロッキー羽田戦だった。

羽田は坂口戦が決まるとナーバスになり、明け方まで酒を飲んで気を紛らせたと語られる。

「日プロの先輩・坂口が相手だから。結局、誰がどう見たって坂口にとっては安全パイ。だれもロッキーなんかに期待してない。100人いたら100人が坂口の勝ちって言うでしょ? ロッキーにしてみれば、どうやっていい試合にするかってことしか考えてないわけだから。開き直ってやればよかったのに、半分ビビっちゃって。(坂口が)仕掛けてくるかも? あるわけないでしょ」。当時の全日担当記者が回想する。

試合は羽田が先手を取り、平手打ちから坂口を場外に放る。さらにドロップキックなどで攻め立てるも、2発目を払い落とされ、ジャンピングニーパットからアトミックドロップで轟沈。〝力の差〟を感じさせる結果となった。

この大会は3団体混合のバトルロイヤル、長州力とアニマル浜口が初タッグ結成、〝鹿児島選手権〟といわれた荒川真(後のドン荒川) vs スネーク奄美、新日と全日が混合タッグ結成とオールスターらしいカードが組まれた。

40年以上経過しても何かしら話題に上がる、貴重な大会となった(敬称略)。

© 株式会社東京スポーツ新聞社