まるでジブリのような景色…「しずむ夕日が立ちどまる町」愛媛・伊予市双海町でゆっくり流れる時間に癒されたい

瀬戸内海の伊予灘に面した愛媛・伊予市双海町。夕暮れの海岸線は太陽と海が溶け合う幻想的な風景が広がり、「しずむ夕日が立ちどまる町」として知られている。双海町の絶景スポットや注目の新店舗などを鉄道でめぐった。

「千と千尋の神隠し」のような景色

今回の鉄道旅で乗車するのは、JR予讃線の海回り。最初の目的地は下灘駅だ。

海岸線を縫うように走るこの区間は「愛ある伊予灘線」の愛称でも親しまれていて、車窓に広がるオーシャンビューは、季節や時間ごとに違った表情で楽しませてくれる。

松山駅を出発して約50分、下灘駅に到着。駅の目の前には海が広がる。

ホームから見下ろす伊予灘の水平線。ノスタルジックな雰囲気が漂う下灘駅は、愛媛屈指の絶景スポットとして知られる無人駅だ。

千葉から来た男性:
パンフレットを見て来たんですけど、イメージ通りでした。癒される感じがありますよね

カナダから来た女性:
とても良いです。「千と千尋の神隠し」のような場所だと聞いて来ました

街の魅力を伝えるお土産屋さん

国の内外から多くの観光客が訪れる下灘駅。そんな駅舎の一角に2024年2月にオープンしたのが「下灘商店」。伊予市や双海町のおいしいものや魅力的なものを紹介しているお土産屋だ。

双海町産のかんきつを使った生絞りジュースは、「イヨカン」「マドンナ」「かんぺい」と品種ごとのおいしさを楽しめる。

キウイの産地でもある双海町。キウイのジャムはお客さんも珍しがり、購入する人も多いという。

下灘商店で店長を務める高木綾子さんは、4年前に神奈川から伊予市に移住した。

下灘商店・高木綾子店長:
海も山もすぐ近くにある。ストレスフリーで自然と仕事と日常の全部が共存している。自分が感動して移住しているので、この地域の魅力を伝えたい

双海オリジナルのキャラクター「フタミィ」もいる。「かみにゃだ」と「しもにゃだ」と呼ばれる猫のキャラクターで、ガチャガチャは大人気だという。

カプセルトイの売り上げは双海地域の活性化に取り組む団体に寄付され、下灘駅などの景観美化に利用されている。

下灘商店・高木綾子店長:
いつか地域の人と観光客が交わるような場所ができたらいいなと思っています

中米のコーヒーを味わう

続いて向かったのは、下灘駅から約6km先の喜多灘駅。駅から5分ほど歩くと「カトラッチャ珈琲焙煎所」に到着だ。

店内にはコーヒー豆が入った瓶がずらっと並んでいて、すべて中米のホンジュラスから輸入しているコーヒー豆だという。

オーナーの今井英里さんは、青年海外協力隊として、中米・ホンジュラスの教育現場で先生や子供たちに算数を教えていたそうだ。その時、現地で飲んだコーヒーに感銘を受けたという。

カトラッチャ珈琲焙煎所・今井英里オーナー
すごくフルーティーだったんですよ。バナナの甘さがあったりチェリーの酸味があったり、これが本物かって思わされました

ホンジュラスのコーヒーを知ってほしいと、今井さんは帰国後の2019年に大洲市で店をオープン。1年前に双海町に移転してきた。

今井さんはコーヒー豆をホンジュラスの生産者から直接仕入れている。ダイレクトトレードと言われる取引の方法で、仲介業者を挟まない分、生産者の所得アップにつながる仕組みだ。

カトラッチャ珈琲焙煎所・今井英里オーナー:
発展途上国なので、経済面で豊かではなくて、子供たちが働かないといけないような環境。教育ではなくて、ビジネス・経済の方面から、ホンジュラスというひとつの国に関わっていきたいなと思わされましたね

今井さんが見せてくれたコーヒー豆の粒の大きさは均一だ。粒の大きさがそろっていないと焙煎する時に火の入り具合が変わるのだという。大きさが均一になることで火の入り方が統一化され、安定したコーヒーになりやすいという。

今回いただいたのは、今井さんが店を開くきっかけとなった、コーヒー生産者・ナンシーさんから仕入れた豆でいれた一杯だ。

カトラッチャ珈琲焙煎所 今井英里オーナー:
これはチェリーみたいなさわやかな酸味とカカオミルクみたいな甘みがあるコーヒー。きょうはアイスコーヒーでいれるんですけど、より引き締まった感じになります

今井さんは、「一杯のコーヒーに含まれているおいしさと、ストーリーや生産者の言葉や思いを味わってもらえたら」と話す。

ゆっくり流れる時間を思い思いに

列車は再び下灘駅へ。到着したのは、今まさに夕日がしずもうとしている時間帯。

昼とはまた違った雰囲気になり、光が海に反射してきらきらとして幻想的な景色が広がっていた。下灘駅のマジックアワーの始まりだ。訪れた人たちは夕焼けを思い思いに楽しんだ。

訪れるのが3回目だという男性は、下灘駅について「駅と水平線が見られるのが良い」と語る。

「しずむ夕日が立ちどまる町」双海町。ゆっくりと流れる時間の中で、伊予灘の絶景に癒されてみてはいかがだろうか。

(テレビ愛媛)

© テレビ愛媛