一般人からダンス、歌、未経験でアイドルグループ入り…32歳・韓国人アーティストの異色キャリア

ライブ最終日にインタビューに応じたJOONHO【写真:ENCOUNT編集部】

JOONHO、「歌手」の夢を言えず…料理の道へ

韓国人アーティストのJOONHO(ジュノ)が、1つの目標を達成して新曲をリリースする。JOONHOは日韓合同の5人組ボーイズグループ・BEE SHUFFLE(ビーシャッフル)として、2014年にデビュー。17年にグループが活動休止すると、メンバーのGYUMIN(ギュミン)とのユニット・JG(ジェイジー)を結成した。しかし、23年にGYUMINがプロゴルファーの道に進んだことから、同年8月からソロ活動をスタートさせた。そして、周囲と相談の上で『1000人動員チャレンジ ~Numbers With Wings~』の目標を設定。今年3月1日から4月7日までの間に全国15か所で単独公演を行い、合計1000人を動員できたら『新曲がリリースできる』というもので、見事にそれをクリアした。新たな道を切り拓いたJOONHOに、デビュー前のことや今後の夢を聞いた。(取材・構成=コティマム)

韓国では、『PRODUCE 101』や『Girls Planet 999』『BOYS PLANET』など、サバイバルオーディション番組が話題を集めている。日本でも『PRODUCE 101 JAPAN』や『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』などが配信・放送され、各番組からアイドルグループが誕生している。参加メンバーは、事務所の練習生や過去にアイドル経験者もいる。だが、JOONHOは歌、ダンスとも未経験だった。

歌や音楽が好きな両親のもとで育ったJOONHOは、家族でよくカラオケに行き、音楽好きには育っていた。父親は過去に歌手を目指しており、自身も『友達より少し歌がうまかった』ことから、歌手になりたい気持ちはあったという。

「小学校の時に、『将来の夢』を書く紙をもらって、父親に見せる用と母親に見せる用の紙があったんです。母の方には『先生、検事、医者』とか、母が僕になってほしいだろう職業を書いたんですね。父はあまり興味なさそうにしていて、母がキッチンに行ったら僕のところに来て、『歌手、歌手、歌手、歌手』って書いて。『お前はお父さんの代わりに歌手になるんだ』って言ってくれました。ただ、現実的には余裕のある家庭ではありませんでした。両親がお金の問題でケンカするところも見て育ったので、『やりたい』と言える環境ではなかったんですよね」

高校生になったJOONHOは、将来の夢が定まらずに勉強もしないままで「さまよっていた」という。そして、2年生時には担任教師に呼び出された。

「怒られるのかと思っていたけれど、『ジュノ、先生はジュノのことが嫌いだから怒ってるんじゃないよ。実は誰よりもジュノのことが大好きだ。いつもムードメーカーだし、いい子なのは分かっているから。勉強が苦手なんだったら、そんなこと考えなくていいよ。自分の(やりたい)夢を進んでみたら』と言われました。その時、先生という人間の温かさを初めて感じました」

担任から「やりたい道」に進むように背中を押されたたJOONHOは、両親に、「迷惑かけてしまうかもしれないけど、勉強じゃなくて他のことがしたいです」と告げた。両親には「何でもサポートするから。何になりたいの」と聞かれたが、「歌手になりたい」とは言えなかったという。

「現実を冷静に考えて、歌手になれる自信がなかったんです。音楽をやって、最終的なゴールがどこなのか。ボーカルトレーナーかと悩んでいた時、韓国歌手の男の子で料理がとても上手な人がいて、話題になったんです。男子が料理するのがブームになったので、『料理やってみようかな』と思って、料理の学校に通い始めました」

ライブ最終日にパフォーマンスするJOONHO

日韓合同5人組でデビュー後に日本語の猛勉強

事務所や音楽学校ではなく、料理学校に進学。しかし、歌は得意で学校で開催された歌のフェスでは1位になった。そんな中、転機が訪れた。先輩からの誘いでショッピングモールのモデルのアルバイトを始めたところ、当時の社長がSNS上で開催された「読者モデルコンテスト」にJOONHOをエントリー。本人が知らない間にだった。

「そうしたら、僕が(バイトを)辞めた後にテレビ番組の作家さんから連絡が来て、日韓のオーディション番組の話がありました。それがBEE SHUFFLEのオーディションで、運良く最終まで受かって、一般人から急にデビューになったんです」

厳しいレッスンが繰り返される練習生時代を経た訳ではなく、スカウトされ、未経験のままでデビュー。それが決まってからが大変だったという。ダンス、ボーカル、日本語の全てが初めてだったからだ。

「オーディション時は、ファイナリストが1~2か月、ソウルのアカデミーでダンスや歌を学びました。やったことがないことをするのは大変でした。僕はダンスも歌も初めてで、ついていくのが本当に大変でした。日本語もその時までひとつも分からなくて。BEE SHUFFLEになってからは、韓国で日本人メンバーと一緒に生活していたので、少しずつ単語を練習して、来日してからは日本語の先生が宿舎に来てくれて、本格的に勉強を始めました。例えばテレビを見ていて分からない言葉があったら、走って日本人メンバーのもとに行って、『これ、何』って質問していました」

当時の様子について、JOONHOは「迷惑だったと思うけど、みんなのおかげで日本語が上達しました」と振り返る。学生時代は違う道を選びながらも、最終的には「歌手になる」という夢を叶えた。歌手志望だった父親は、今でも「うちの息子、サイコー!」と声をかけてくれるという。

BEE SHUFFLE 時代の5人からJGの2人へ。そして、1人に。想定外の歩みになったが、今はソロ歌手としての自覚にあふれている。

「5人の時は、『メンバーと一緒に有名になりたい、成功したい』と全員で同じ夢を持っていましたが、僕の個人的な夢は『歌手』でした。5人からの成功が先だったけど、その後は歌手として活動したいと思っていました。そして、(ソロ歌手になった)今はただ歌うのではなくて、たくさんの方々に勇気と希望、笑顔、幸せな気持ちをお伝えできるような人になりたいと思っています」

ゼロから始まったストーリー。32歳の今もJOONHOには伸び代があり、ファンとともに真のサクセスを目指していく。

□JOONHO(ジュノ)1992年2月8日、韓国生まれ。2013年、DATVと韓国MBC MUSICが共同制作したアイドル発掘番組『シャッフルオーディション』に参加。日韓5人組ボーイズグループ・BEE SHUFFLEのメンバーとして、14年にメジャーデビュー。デビューシングル『Welcome to the SHUFFLE!!』でオリコン・ウィークリー・ランキング5位を獲得(14年2月17日付)。15年に映画『原宿デニール』出演。17年からメインボーカル同士だったGYUMIN と共にユニット・JG(ジェイジー/JOONHO& GYUMIN)を結成。23年8月からソロ活動を開始した。コティマム

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