キラリと光る攻撃センス、強度の高い守備。松井蓮之は仙台でもJ1昇格請負人になれるか?

[J2第15節]仙台 2-1 群馬/5月11日/ユアテックスタジアム仙台

監督交代直後の群馬に2-1で勝利し、3連勝を飾った仙台。好調を支えるのは、今季に川崎から期限付き移籍で加入したMF松井蓮之だ。

この日も4試合連続先発出場となった松井は8分、MF長澤和輝のコーナーキックからファーサイドでDF菅田真啓がヘディングシュートしたこぼれ球に反応。「良いところで菅田君がシュートを打ってこぼれてきた」ところに飛び込み、落ち着いて右足で移籍後初ゴールを決めた。

「セットプレーの練習からああいう形を狙っていました。こぼれ球への反応は自信がありました。ゴールを決められたのは嬉しいですし、目に見える結果が欲しかったので、今日の得点はとても大きかったと思います」

その後も攻撃では多くの決定機を演出。DFにボールを預けて相手の左ウイングバックの背後をオナイウ情滋に突かせるプレーが成功した。

「前半は思うようなプレーができました。相手が3バックでウイングバックの背後が空いていたので、コイちゃん(DF小出悠太)から1本のボールで攻撃が完結するのが良い形と思いました。

僕らがピックアップして自分たちが背後に出すより、ディフェンスラインから一気に背後へ出す方が点を取りやすかったので、前半は背後であったり、中から攻めたりの使い分けがうまくいきました」

森山佳郎監督も松井の攻撃センスを称える。

「狭いところで相手がプレッシャーをかけてきたところで、長澤と松井が中盤で受けてくれるので、それで相手のプレッシャーの骨を折って行けなくしてしまい、そこから両サイドに展開というところが出てきている」

松井は移籍加入後、チームに溶け込む努力を続けてきた。

「僕自身、一番コミュニケーションを大事にしていて、どういう選手なのか、味方がどういうプレーをしたいのか試合中も聞いていますし、あとは僕が思ったことを伝えて密にコミュニケーションを取っています。右サイドの情滋や(髙田)椋汰、ボランチの相方の和輝さんと結構コミュニケーションを取っているのが、だんだん馴染んできている理由だと思います」

そして守備では球際の強さ、ボール奪取能力の高さを見せている。昨季に町田に期限付き移籍した時もそれは持ち味だったが、仙台への加入当初、森山監督はこの部分が不満だったという。

「キャンプからずっとこのチームは強度とかボールを奪いに行く迫力とか、球際とかかなりやって来たので、そこから比べると予想していたよりも物足りないので、加入した時はちょっと本人を呼んで話をするくらいでした」と、松井本人に話したという。

「ボールホルダーに対して強く行くことや、ゴール前で身体を張ることをベガルタの選手はキャンプからやっていたので、そこが足りないと厳しく言われました」という松井は激しい守備を見せるようになり、加入当初途中出場が多かったが、先発の座を勝ち取れるようになっていった。

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ただ、群馬戦の後半は劣勢の時間帯が増え、62分にペナルティエリア付近で相手を倒してフリーキックを与えてしまい、そのフリーキックから群馬MF高橋勇利也にゴールを許してしまった。

「ちょっと焦ってファウルをしてしまいました。後で椋汰に聞いたら『カバーがいた』と言われたので、あそこは冷静に対応すれば失点していなかった」と松井は反省を口にし、課題と向き合っていた。

「予測やポジショニングは悪くないのですが、ギリギリのところでどうしても無理をして足を出したり身体で行ってしまったりがある」と、森山監督も自陣でのファウルが多いことを課題にあげた。

もっとも、攻守で質の高さを見せ続け、仙台の躍進に貢献する松井。

「もっと得点やアシストなど目に見える結果を増やしていきたいです。僕自身、プレーに満足していないです。もっと良さを出して、チームの中心としてプレーする気持ちで仙台に入りましたし、一番はチームが勝つこと、J1に昇格することが目標なので、自分のプレーもそうですが、まずチームが勝つためのプレーをこれからもやっていきたい」と現状に満足する様子はない。

昨季の町田への移籍に続いてJ1昇格請負人となれるか。仙台に歓喜をもたらし、自身も成長するため、松井は挑戦し続ける。

取材・文●小林健志(フリーライター)

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