病原体持つマダニの生息域が拡大か…感染症「日本紅斑熱」過去最多の報告数 死亡率10%のSFTSは2013年国内初確認

マダニが媒介する主な感染症
日本紅斑熱の発疹と刺し口(福井大学医学部附属病院のリケッチア症診療の手引きより)

 マダニの活動が盛んになる時期になった。仕事やレジャーなど屋外で活動する時は、病原体を持ったマダニに刺されることで起こる感染症に注意したい。ダニ媒介感染症に詳しい福井大学医学部附属病院の岩崎博道教授は、マダニに刺されたら必ず発症するわけではないとした上で「生息場所で活動する人は注意が必要。予防は刺されないようにすることに尽きる」と訴える。

 マダニが媒介する代表的な感染症が「日本紅斑熱」。主な症状は40度前後の高熱、発疹、刺し口。発疹は手足に多く見られ、刺し口は直径5ミリ前後の黒っぽいかさぶたができ、その周りが赤くなる。

 近年、報告数は増加傾向で、昨年は全国で過去最多の501例の報告があった。福井県内は6例だった。岩崎教授は報告数が増えている理由について、病気の認知度が高くなったこともあるが、病原体をもったマダニの生息域が広がっていると分析する。また、痛みもかゆみもないため「感染に気付いていない人もいるだろう」と話す。治療薬を使えばほとんどの場合で重症化することなく回復する。

 近年は「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の報告も増えてきている。2011年に中国で見つかり、日本国内では13年、福井県内では17年に初めて確認された。県内ではこれまでに計3例の報告がある。症状は発熱のほか、嘔吐(おうと)や下痢といった消化器症状、血小板や白血球の減少など。岩崎教授によると重症化しやすく、死亡率は10%ほどある。感染後6日~2週間で発症するという。治療薬はない。

 主にSFTSウイルスを保有するマダニに刺されることで感染するが、国立感染症研究所は今年3月、ヒトからヒトに感染したケースを国内で初めて確認したと発表した。感染したのはSFTSの患者を担当した医師で、症状は軽快しているという。

 マダニ類の多くは、ヒトや動物に取り付くと、皮膚にしっかりと口器(こうき)を突き刺し、数日間血を吸い続けるという。吸血中のマダニを見つけた時は「無理に引き抜こうとしないで」と岩崎教授。マダニの一部が皮膚内に残ってしまう恐れがあるためだ。皮膚科を受診して処置してもらうようにする。

 予防は、肌の露出を少なくして刺されないようにする。草むらややぶなど、マダニが多く生息する場所では、長袖・長ズボン、足を完全に覆う靴、帽子、手袋を着用し、首にタオルを巻くといい。虫よけスプレーも有効。活動後は入浴して脇の下や足の付け根、手首、頭部などがマダニに刺されていないか確認する。

 岩崎教授は「マダニの生息場所で活動した後に症状がある時は早めに受診を。適切な診断のためにも生息場所で活動したことをしっかり伝えてほしい」と話している。

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