「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」1周年。多くの人が夢中になったハイラルでの新しい冒険を振り返る

by アサミリナ

【ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム】

発売日:2023年5月12日

価格:

7,920円(パッケージ版)

7,900円(ダウンロード版)

14.520円(Collector's Edition)

2023年5月12日発売のNintendo Switch用アクション・アドベンチャーゲーム「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」(以下、「ティアキン」)が、発売から1周年を迎えた。

「ティアキン」は広大なフィールドをプレーヤーの自由に冒険できるという、オープンワールドのアクションアドベンチャー。前作の「ブレス オブ ザ ワイルド」(以下、「ブレワイ」)では地上だけだった舞台が、今作ではなんと空と地底にまでフィールドが広がった。探索せどもせどもまだ先があるという広大なフィールドと、目的地は見えているのにどうやって行けばいいのかわからない模索感、次々と沸き起こる新しい発見など、「ブレワイ」と同じ舞台でありながらここまで違う遊びを作れるのか、ということに驚きつつ、どこまでも止まらないワクワク感で夢中になるプレーヤーが続出した。

そんな「ティアキン」の1年間を振り返りたい。

「ティアキン」といえばまずは探索でしょ

「ティアキン」の魅力といえば、やはり広大なフィールド。

どこに行って何もするのも自由なのだが、現在進めているシナリオの目的地は表示されるようになっており、「オープンワールドの放り出されている感じが苦手……」という人でもプレイしやすいようになっている。その点は「ブレワイ」より大分親切になっているので、「ブレワイ」が苦手だったという人も改めてチャレンジしてほしいのが「ティアキン」である。

しかし、あてどなく探索するのが本作の醍醐味であることは間違いない。数十時間広大な世界をずっと探索していたのに、まだ新しい発見があるというのが珍しくないのが本作である。

例えば序盤で行くことが可能なりんご畑のことを、今ならば多くのプレーヤーが知っているだろう。しかし筆者がここにたどり着いたのは、プレイからなんと60時間ほど経ったころであった。「序盤で行ける場所」とありながら、まったくスルーしていた場所だったのだ。

このりんご畑はソナパノの祠のすぐ近くにあるので、ソナパノの祠を攻略しに行っていれば恐らく普通に見つけられたであろう場所だ。そしてソナパノの祠への到達難易度は大して高くない。だが、筆者はずっと別の方角の探索に夢中だったので、60時間ほど経ってようやくソナパノの祠方面の探索を開始し、そしてりんご畑を発見したのだった。

なお、筆者がこのりんご畑を発見したのは本作のレビューのためのプレイ中だったということもあって、まだ攻略情報などが世に出回る前だった。

そして地上と空へ行く方に夢中になり、地底にたどり着いたのはプレイから80時間近くが経過した頃だった。実を言うと、「ティアキン」を楽しみにしていたあまり、事前情報をほぼシャットダウンしていた筆者は、本作の冒険に地底が含まれているということに、それまで気づかなかったのである。しかも地底にたどり着いたのは割と偶然という感じで、ついでに「地上をもう探索しきったから」とかではまっっったくない。むしろ地上もまだまだ探索するべき場所があったのだが、「ここは入れるのかな?」くらいの気持ちで飛び降りたら、地底にたどり着いたのだった。

この地底が、なんとまた広い。ただし、地上世界に比べて暗闇が続き、探索のヒントらしいものもほぼない。しばらくあてどなく彷徨い、この時になってようやく「地上でやたらめったに手に入ったアカリバナって、ここで使うのか!」と気づいた。

これまで洞窟の中くらいしか使い道のない割に入手個数は多かった、アカリバナ。アカリバナをぽいっと投げてみると、ようやく地面が見えた。そしてアカリバナがぼんやりと辺りを照らしてくれる。とにかく夢中でアカリバナを投げた。時には闇に吸い込まれていく時もあったが、無我夢中で投げまくった。何百個とあったアカリバナは、あっという間に底をついた。

とりあえず地底と言えば、コーガ様

地底には、賛否両論あったと聞く。「景色の変わり映えがしない」、「暗闇がこわすぎる」といった意見にはうなずける部分もある。特に地上での冒険が色とりどりだったからこそ、どうしても見た目的に陰鬱な地下世界には抵抗があったというプレーヤーもいるだろう。

だが、そもそも地底の探索はクリアに必須というほどではない。もちろん達成率には影響をするが、達成率を気にしないというのであれば地底はあまり行かなくても良い場所なのだ(一応メインストーリーで多少は訪れる必要がある)。

ただ、地下には地下の魅力があったのも確かだ。例えば戦闘は地上よりも難易度が高い。なので、地上ではあまりアイテムを駆使せずに戦っていたような人でも、アイテムを色々試して戦う検証のような戦い方をしていくことになる。

地底のあちこちにある敵の砦には、たくさんの強敵がいる。そこにコンラン花やバクダン花などを活用して立ち回ると、少し楽に攻略できる。

さらに探索には、ゾナウギアでのアイテムクラフトが役に立つ。メインストーリーを進めていく上では(ほぼ地上)必要なゾナウギアは大抵近くに落ちていたのだが、地底ではこれまで集めてきた手持ちのゾナウギアを使う場面が増えてくる。

これまでに地上で得た知識を活かし、いかに工夫して冒険を進めていくかを問われるのが、地底での冒険の良いところだと筆者は思っている。

あくまで「筆者の場合」ではあるが、地下の探索は言うほど苦痛ではなかった。確かに大変な旅ではあったが、地下には「景色があまり変わらないからこその探索の工夫」が施されていたように感じられた。「暗闇がこわい」という点についてはどうしようもできないが、ぜひ地下の探索もあわせて「ティアキン」だと感じてもらえれば幸いだ。

ちなみにこの地底、地上世界ととある法則でつながっている。少々ネタバレになる内容ではあるが、下記記事などが参考になるだろう。

筆者はこの記事を見る前に自分で法則性に気付いていたのだが、その時は少々背筋がぞくっとした。蓋をあけてみれば大した話ではないのかもしれないが、このゲームがいかに練られて作られているのか、地底の法則からも気づいてしまって、「この開発陣……すごいな……!」と思ったのだった。

不格好でもいい、それが自分で得られた解ならば

「ティアキン」といえば、リンクの4つの新能力も楽しさを増大させていた(正確には5つなのだが、ブループリントは攻略に必須ではないので割愛する)。

まずは本作で最も使ったであろう「ウルトラハンド」。特定のオブジェクトを持ち上げたり、オブジェクト同士をつなぎ合わせたりすることができる。

例えば板と板をつなぎあわせてみたり、さらにその板を水に浮かべて扇風機を取り付ければボートの代わりになったりする。

操作に慣れるまで少々時間はかかったが、メインストーリーでもまずは簡単なものから作るようになっているので安心してプレイできる

ちなみにX(旧Twitter)で、「ティアキン」のクラフト動画などを目にしたことがある人も多いと思うが、パーツさえ揃えば空を飛ぶ戦闘機のようなものを作ってしまうことも可能だ。

もちろんそこまでのものを作るにはそれなりのパーツが必要になってくる上に、実用性を兼ねようとするとバッテリーの容量も必要になってくる。が、まさにウルトラハンドの可能性は無限大と言ったところで、Xには「宇宙戦艦ヤマト」のような超級の戦艦を作り上げたりと、様々な猛者が登場している。

他にも、天井をすり抜けることができる能力の「トーレルーフ」、特定のオブジェクトの時間を逆再生できる「モドレコ」、武器と特定のオブジェクトを合体させて武器の威力を上げることができる「スクラビルド」がリンクの新能力として「ティアキン」で登場した。

モドレコでどのようなものを逆再生できるのか探すのも、楽しみのひとつ。歯車なんて、わかりやすいほう。例えば空から落ちてきた石塊に、モドレコを使ってみると……?

基本的にこの4つの新能力があれば、試練の祠や様々なミニチャレンジはクリアできるようになっている。

シンプルながら奥深いシステムになっており、例えば知恵の輪さながらのような「一見どう見ても無理そうなのに、頭を使えば解法がわかる」なんていうものが多々ある。

またクリアするための解法は決してひとつではないところもポイントだ。

どこでどのように何をしてどうクリアするかは、プレイヤーの手に委ねられている。もちろん公式が想定する解というのは当然あるはずで、それが最もスマートなクリアの仕方なのだろうけれども、スマートなやり方が「ティアキン」の楽しさではないのだと筆者は思っている。

どんなに不格好でも良い。それが自分で得られた解ならば。

そう、筆者には今でも忘れられない「ティアキン」の不格好な思い出がある。それが「コログを連れて川を渡るために無理やり作った超長い橋」だ。

「もう疲れちゃって 全然動けなくてェ……」の台詞を見たことがある人も多いだろうと思うが、このセリフは「ティアキン」に登場する不思議な妖精コログ族が発しているものだ。

X上でミーム化した、コログのセリフ

このコログたち、つまりは「疲れちゃって全然動けないから、おまえちょっとオレをあそこの友達の所まで運んでくれよな!」と言っているわけだが(大分意訳)、これがなかなか一筋縄ではいかない。

ぱっと見で「いや、どうやって行くんだ?」というくらい辺鄙な場所に友達がいる場合もあれば、「あともうちょっと頑張れば自分で行けない?」という場合もある。例えば下図の場合のコログなど、まぁ少々遠めではあるが充分自力でたどり着けそうな距離である。

コログには対となる、狼煙をあげている友達がいる

ただまあ「もう疲れちゃって 全然動けなくてェ……」と言われたからには、運ぶしかない。運ぶのは、もちろん基本ウルトラハンドを使う(乗り物に乗せて運ぶなどの手段もある)。

しかしリンクは同時にふたつの能力を使えない、泳いでいる時には能力を使えない、など、様々な制約がある中で、このコログを友達のところまで運ばなければならない。

そう、この「泳いでいる時には能力を使えない」というのが地味にポイントなのだ。あと川さえ渡ればたどり着けるのに、川を泳ぎながらウルトラハンドを使うことはできないッ……! しかも近辺に橋らしきものもなく、遠回りすれば良さそうという雰囲気でもない。

そこで筆者が考えたのが「激ウルトラ力技、ウルトラハンドで超絶長い橋を作っちゃおう」作戦である。長ったらしい作戦名だが、ようはそこらへんで片っ端から集められる資材という資材を集め、とにかくひたすら壊れないように綺麗に繋ぎ、えんやこらとそれを持ち上げて、橋の向こう側まで渡してしまおうというシンプルイズベストな解法である。

とにかく片っ端からひたすら繋いでいく

簡単そうに見えるだろう。しかし、実はこれ、見た目より簡単ではない。接着面がずれると、ウルトラハンドで橋を持ち上げた時に折れるのだ。なので意外と接着面には気を使い、地道に板を繋げていく。

そして……で、できたぁ!!!!

紛うことなき橋である

こんなことに、苦節1時間(事実)。今思い返せば、非常にくだらないことだった。でも、ひとりでキャッキャしながら楽しく橋を作っていた。そして筆者は、めちゃくちゃ不格好な、それでも自分で得た解にたどり着いたのである。

かっこいいクラフトを作るだけが「ティアキン」じゃない。自分のアイディアで、何ができるかを試すのが、「ティアキン」なのだ。

ちなみに、当然ながらこれもまだ攻略が出回る前の話である。後程下記の記事を見た時は、ちょっと泣いた。頭のいい人は考えることが違うナー!(泣笑)

攻略をみるのは楽だけど……「ティアキン」の新の面白さはやはり自分の手で得られる解!

正確なプレイ時間はわからないのだが、恐らく「ティアキン」には合計で150時間~200時間ほどは費やしてきたと思う。その間、色んな旅をした。

橋を作るだけに苦節1時間のたうち回っていただけではない。祠ひとつクリアするのに1時間のたうち回っていたこともある。

攻略がなかったからこそ、たくさんのことを自分の頭で考えて、たくさんの解を得てきた。ぶっちゃけ筆者はあまり頭の良い方ではないので、中には解を得られずに一度投げ出してしまったものもある。だが、不思議と日を変えて再チャレンジしてみると、できなかったことができるようになっていたりするのだ。偶然でも、自分の手で解けたことにパアアアと世界が明るくなる。

謎解きと探索の話に力が入ってしまったが、筆者は「ティアキン」のストーリーも大好きだ。まだまだこれからプレイする人もいるだろう作品だけに明確なネタバレは避けたいところだが、本作は物語の冒頭で行方不明になったゼルダを探すというシンプルな目的があり、そのシンプルな目的に沿って「じゃあ、ここでゼルダの手がかりを探そう」、「今度はこっちで探そう」というような内容になっている。

その中で徐々にゼルダが何故行方不明になり、ゼルダに何が起こったのかが判明していく。

ゼルダ

一時期少々界隈をにぎわせた、「ティアキン」のエンディングが良かった、悪かった論争があったのだが、筆者は個人的な感想を言うととても素敵な終わり方だったと思っている。

ネタバレに抵触しない程度となるとこれ以上は語れないのが残念であるが、100時間以上を費やした冒険の果てに待っているエンディングとして、これ以上ないものだった。自分自身の手で紡いできた冒険、すなわちこれが”ゲーム”という存在だからこそ、最高の体験になったと信じている。

「ティアキン」はまだまだ語り切れない魅力に溢れており、1年遅れを取ったくらいどうということはないタイトルである。実際、「ティアキン」でこんなものを作ってみた、というような画像及び動画は、今でもまだ新作が流れてくるほどだ。

何もかっこいい戦艦が作れなくたっていい。不格好な橋を作ってみるだけでもいい。むしろそんなものを全部無視してメインストーリーだけ突き進んだって良いし、ただひたすら広大なフィールドを歩いても良い(ちなみに筆者は最初バトルも逃走しまくっていた)。「ティアキン」の楽しみ方は無限大である。

まだまだ「ティアキン」に触れていくも良し。これから初めてみるも良し。ぜひこれからもたくさんの人に触れ続けてほしいし、新たに触れてほしい作品である。

発売1周年、本当におめでとうございます。

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