1日1個のリンゴで医者いらず? イギリスに由来を持つ英語のことわざ

英語には、イギリスの歴史と文化から生まれたことわざが多数存在する。今回は、イギリスに起源を持つ英語のことわざをいくつか取り上げたい。いずれもイギリスのみならず英語圏に広く普及しており、かつ、世代を超えて伝えられてきた智慧と教訓を示す含蓄あることわざだ。

■An apple a day keeps the doctor away 「An apple a day keeps the doctor away」、直訳すれば「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」は、リンゴの栄養価を説いたことわざである。英語圏で広く知られることわざだが、もともとはイギリスの南西部、ウェールズに起源を持つそうだ。

記録によると、1866年にペンブルックシャーで「Eat an apple on going to bed, and you'll keep the doctor from earning his bread(寝る前にリンゴを食べると、医者はパンを稼げなくなる)」という形で登場したのが最初のようである。ちなみに、ペンブルックシャーとは、ウェールズの南西部に位置するカウンティ(郡)で、美しい海岸線と農村地帯で知られる人気の観光地だ。

実際、リンゴにはビタミンC、食物繊維、抗酸化物質など豊富な栄養素を含むフルーツで、心血管疾患のリスクを低減するとされている。1日1個とはいかなくても、積極的に食べてはいかがだろうか。

■Don't count your chickens before they hatch 「Don't count your chickens before they hatch」、直訳すれば「卵が孵る前にひよこを数えるな」も、イギリスに起源を持つ英語圏で広く知られることわざだ。日本のことわざで言えば、「捕らぬ狸の皮算用」がぴったりだろう。

由来は、16世紀のイギリスの詩人、Thomas Howellが1570年に発表した詩集の中の、「Counte not thy Chickens that vnhatched be, / Waye wordes as winde, till thou finde certaintee(未孵化の卵の数を数えるな、/ 確実性を見つけるまでは言葉を風と同じように扱え)」という一節だ。

これがもとになって、物事の結果が出る前に先走って期待しないよう警告する成句となった。ただし、同様の意味を持つ格言は、中世や近世初頭のラテン語文献にも存在していたことが示唆されている。

■Every cloud has a silver lining 「Every cloud has a silver lining」、直訳すれば「どんな雲にも銀の縁がある」は、どんな悪い状況にも良い面が存在するという意味のことわざだ。「lining」とは、物の内側を覆う布や素材を指すが、この表現では特に雲の暗部を縁取る明るい光の帯を意味する。

この成句の起源は、『失楽園』で有名なジョン・ミルトンが1634年に発表した戯曲『Comus』にさかのぼる。彼はこの作品で、暗い雲が月明かりに照らされた際に見せる銀色の縁を描写し、どんな困難な状況の中にも希望があるというメッセージを伝えた。

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