トイプードルやチワワに多い心臓病「僧帽弁閉鎖不全症」とは…咳を引き起こすメカニズムと、適切な室温管理【ペットドクター相談室】

15歳。心臓が悪く1回の病院受診とお薬も飲んでいますが夜中に咳き込む事が増え心配です。日中は1人で留守番させており、ほとんど寝ていて、暖房はエアコンが中心です。加湿器を置くと咳は改善されるでしょうか。(トイプードル、やまももさんの相談)【お答えします】 福井県獣医師会 開業部会 とくだ動物病院(福井県福井市)岩本毅獣医師

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ご質問ありがとうございます。トイプードルの心臓病ということで、今回は小型犬にもっとも多い僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)のお話をさせていただきます。もしちがうご病気で通院されている場合には、今回の内容はご相談に合わない内容もありますのでかかりつけの獣医師にご相談ください。

僧帽弁閉鎖不全症とは…咳を引き起こすメカニズム

僧帽弁は左心房と左心室を仕切っている弁です。通常、左心房から左心室へ一方通行に血液が流れますが、この僧帽弁がうまく閉まりきらずに左心室から左心房へ逆流してしまう病気を僧帽弁閉鎖不全症といいます。一般的には僧帽弁が分厚くいびつになったり、弁を固定する腱索がちぎれたりすることが逆流の原因とされています。

この逆流の状態が進行していくと、本来左心室へと送り出されるはずだった血液が左心房内で渋滞するため、結果として左心房が血液でパンパンになります(左心房拡大)。気管は心臓のすぐそばに通っているので、大きくなった左心房は気管を圧迫するようになり、咳が出やすくなります。これが心臓病(僧帽弁閉鎖不全症)により咳をひきおこすメカニズムです。

僧帽弁閉鎖不全症の治療法は?

この病気には主に強心薬で治療しますが、重症度によっては血管拡張薬や利尿薬などさまざまな種類のお薬を組み合わせて使います。咳が増えているとのことなので、病気の進行により、現在処方されているお薬では心臓の負担を減らすのに十分でないのかもしれません。また、僧帽弁閉鎖不全症のわんちゃんは気管・気管支の病気を一緒にかかえている子も多くいます。場合によっては追加のお薬で症状が軽くなるので、詳しくはかかりつけの獣医師とご相談ください。

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心臓病の愛犬、室内の温度管理どうすれば…

さてご質問いただいた室内の温度管理についてですが、暑さ・寒さは心臓の負担を大きくします。とくに朝晩の急激な温度変化は負荷がかかるので、冬場は加湿器で温度の変化をやわらげてあげることで咳が減ることもあります。ただしこれから梅雨から夏にかけての蒸し暑い季節は、湿度が高いと反対に心臓病のわんちゃんはしんどくなります。福井県はとくに高温多湿な気候なので、エアコンのドライモードや除湿機などで湿度の管理にも注意してください。

僧帽弁閉鎖不全症は、近年人気のトイプードルやチワワでよくみられる病気です。咳が多い、寝ているのに呼吸が苦しそうなどの症状がみられる場合には、近くの動物病院へお早めににご相談ください。

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