東京都知事を殺害した武闘派ヤクザをFBIとCIAが追う!「流暢、だが意味不明」なセガールの珍日本語も楽しい隠れた名作『イントゥ・ザ・サン』

『イントゥ・ザ・サン』© 2005 Sony Pictures Home Entertainment Inc. All Rights Reserved.

セガールの隠れた名作『イントゥ・ザ・サン』

アクション映画好きにとって神にも等しい(?)名優、スティーヴン・セガール。ここ数年は主演作が公開されていないものの、1980年代からアクションひと筋で活躍し続けてきたセガールへの信頼度は高く、代名詞となっている『沈黙』シリーズをはじめ劇場やテレビで彼の姿を見て育ったファンは多い。

今年72歳になったセガールだが、いまだ世界中で“発掘”的に過去作がレビューされ、若い世代にもその唯一無二の存在が浸透している。そんなセガールの隠れた名作として語り継がれているのが、日本が舞台のサスペンス・アクション『イントゥ・ザ・サン』(2005年)だ。

人種入り乱れる国際都市「東京」――不法入国者の一掃を掲げ選挙戦に乗り出した都知事候補が、何者かに射殺された。伝説のCIAエージェント、トラビスは、FBIの若手捜査官マックを相棒に調査に着手する。

次第に浮かび上がる振興暴力団の存在、それを牛耳る黒田という男、そして、チャイニーズ・マフィア。まさに、一触即発の東京戦争。最後に生き残るのは誰だ!?

「流暢、だが意味不明」なセガールの日本語セリフ

高倉健も出演した名匠シドニー・ポラックの『ザ・ヤクザ』(1974年)のリメイクとされる『イントゥ・ザ・サン』だが共通点はほとんどなく、多国籍なサイバーパンク風味をプラスしたことで、むしろ『ブラック・レイン』(1989年)を彷彿させる仕上がり。セガールが「俺の庭」とばかりに日本の街を闊歩し、また日本語セリフを吹替なしで流暢に操ることで、いわゆるハリウッド映画における日本の解像度もぐんと上がっている。

……と言いたいところだがトンデモ日本描写は多々あり、逆にそれが不思議な魅力になっているというのが実際だ。しかも肝心のセガールの日本語も、たしかにナチュラルではあるのだが予想外の高音・早口に加えて方言や単語のチョイスが独特すぎて逆に混乱してしまう方向性。おそらく本国スタッフからツッコまれないのをいいことに「これがネイティブ日本語だから」と押し通したのだと思われるが、確かにそれが本作の最大の見どころとなっているあたり、さすがセガールと言うほかない。

大沢たかお演じる狂気のヤクザがセガールと対決!

日本のヤクザだけでなく中国マフィアを絡めたことで“対カンフー”要素が加わり、アクション面はハリウッド製らしい充実の仕上がり。そして、物語上の重要人物である新興ヤクザ・黒田を狂気たっぷりに演じているのが、当時日本アカデミー賞を受賞したばかりの演技派俳優、大沢たかおだ。

大沢にはゴリマッチョ化した今こそこういった役を演じてほしいものだが、昨年から実写版『沈黙の艦隊』に主演しているので、セガールから『沈黙』シリーズを引き継いだとしても不思議ではない(?)。ちなみに豊原功補が演じる彫師の名前が「不動明王」というのも大きな謎の一つである。

そんな本作だけにマジメな批評サイトではけちょんけちょんに言われたりもしているが、ソフト購入者やジャンル映画サイトでのレビューは概ね高評価。「こういうセガールが観たかった」「セガールの最高の映画のひとつ」といった絶賛評もあり、アクション好きだけでなく“ちょっと不思議だけどクセになる映画”を観たい人にもオススメできる逸品だ。

『イントゥ・ザ・サン』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年5月放送

© ディスカバリー・ジャパン株式会社