舟券売れすぎも痛しかゆし?競艇売り上げ「過去最高」の自治体、ギャンブル依存症予防へ

舟券の売り上げが好調のボートレース(大津市茶が崎・ボートレースびわこ)

 滋賀県は本年度、ギャンブルにのめりこんで生活に支障をきたす「ギャンブル等依存症」の予防に乗り出す。県営競艇場「ボートレースびわこ」(大津市)の売り上げが好調で、県財政への貢献度が高まる一方、依存症が疑われる人の増加が懸念されるからだ。県は、同競艇場主催レースの利用者データを分析し、実態把握や予防に向けた調査研究を実施していく。

 同競艇場の2023年度の売り上げは735億円で、22年度から約40億円増えて過去最高となった。新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要でボートレースを楽しむ人の裾野が広がったことに加え、動画サイト「ユーチューブ」の公式チャンネルで全レースを中継したり、人工知能(AI)による着順予想を無料公開したりして、インターネット上で気軽に楽しめるようにしたことなどが奏功しているという。

 県の一般会計への繰り出し金も近年は増加傾向にあり、23年度は23億円が繰り出される。近年は、乳幼児の医療費助成や県立高校舎の改修費、びわ湖ホール改修費のほか、環境学習船うみのこの事業費に活用されている。

 県財政への貢献度が増す一方で懸念されるのが、勝負にのめり込んで生活や仕事に悪影響を及ぼしてしまう人の増加だ。県立精神保健福祉センター(草津市)や保健所で受け付けたギャンブル等依存症についての相談は21年度で537件と、17年度の172件から3倍超に増えた。依存症の本人だけでなく家族からの相談も多く、多重債務のほか、貧困や暴力などが関連した相談が寄せられるという。

 こうした過度な利用を制限しようと、県は新年度、匿名性を確保した上でびわこボートのインターネット投票データを同センターで分析し、依存症になる手前で気付いたり、症状の進行を防いだりするための効果的な対策を検討する。舟券を購入した時間や金額、頻度などを分析し、依存が疑われる人の実態把握を行う。性別や年齢などの属性を加味することで、今後の啓発活動にも生かしたい考えだ。

 全国24場が全て公営という競艇業界にとっても、依存症対策は共通の課題という。県びわこボートレース局は「生活や家族を犠牲にするほどのめり込んでしまうとなれば、社会的なマイナスの方が大きい」とした上で、「データを活用して何ができるかは手探りだが、レジャーの範ちゅうで楽しんでもらえるよう工夫したい」としている。

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