政治資金規制法改正 与党案は“お話にならない”? 会期内に自民党は有効な政治改革案を作れるのか

派閥裏金事件の初公判で安倍派事務局長は何を述べたのか。今後の展開はどのように見込まれるか。そして政治改革に関する与野党の案の内容はどのようなものか。「BSフジLIVEプライムニュース」では自民党の牧原秀樹氏、立憲民主党の長妻昭氏、若狭勝弁護士を迎えて議論した。

安倍派会計責任者の裁判は核心に触れず終わるか

長野美郷キャスター:
自民党派閥の裏金事件で政治資金規正法違反の罪に問われた、安倍派事務局長で会計責任者の松本淳一郎被告の初公判が、5月10日に東京地裁で開かれた。2018年から2022年の5年間にあわせて約13億5000万円を虚偽記載したとする起訴内容を松本被告は大筋で認め、一部の議員が中抜きした分は把握していなかったと主張。また検察側の冒頭陳述で、松本被告は前任者から説明された通りに収支報告書を作成すれば収入支出とも虚偽の金額を記入することになると認識したが、かねて発覚してこなかったことなどから虚偽記入を継続したと指摘した。

山下高志 フジテレビ社会部司法キャップ:
概ね認めており今後の焦点と言えるものは少ないが、ポイントは故意の範囲と情状酌量。不記載は認めるが議員側の中抜きは把握せず、という点。この主張の意味合いは情状酌量のみにある。

反町理キャスター:
13億5000万円のうち数千万円の分を割引いて考え、罪が軽くなる可能性はあるのか。

若狭勝弁護士:
ないと思う。裁判所はほとんど事実通りに認定すると思う。冒頭陳述の主張はほとんど表面的な話で、国民が知りたい話はもとよりない。恐らくこの事件は早々に終わらせ、深掘りしない。松本被告も早く終わらせたく、利害も一致する。

反町理キャスター:
虚偽記載は松本被告の前任者の時代に既に行われており、それを引き継いだという話。普通、弁護人ではなく検察がこれを言うのか。

若狭勝弁護士:
慣習的にやってきていて重い責任はないということを前提にしている。結論としては執行猶予。安倍元総理がやめろと言い、後に再開した時にはどうしていたのかという話には入りたくない。松本さんは会計責任者だが、犯罪としてはある意味、従属的なところに位置づけるのだと思う。

反町理キャスター:
司法のあと、政治の場で解明していく材料があまり出なさそうな裁判。

長妻昭 立憲民主党政調会長:
予想通り。政治家に一度も相談しなかったのか。収支報告書を出すときのチェックを全部自分でやったのか。そして一番知りたい、キックバックを再開したときの事情を知っているかなど含め全く聞けない。検察は「恐る恐る」だと感じてしまう。

若狭勝弁護士:
少なくとも逃げの姿勢。もしこの裁判で新事実が被告人の口から述べられた場合、検察審査会にすごく影響が出る。検察にとって検察審査会は非常に怖い存在。もう一度捜査させるべきだ、となるのが怖い。

長野美郷キャスター:
今後の裁判はどう進むか。現在起訴されているのが、松本被告のほかに二階派会計責任者の永井等被告、安倍派に所属していた衆院議員で自民党を除名された池田佳隆被告、自民党を離党した参院議員の大野泰正被告。検察が見出そうとしている決着点は。

山下高志 フジテレビ社会部司法キャップ:
起訴した内容で有罪を取れるかという一点。周囲の話はあまり出ないと思う。

長妻昭 立憲民主党政調会長:
一番知りたいのは、キックバック再開時のこと。裁判で誰かが聞くことはないか。

若狭勝弁護士:
裁判の推移を見ると誰も聞かない。検察は踏み込まない姿勢で、弁護団が踏み込んでも、むしろ松本被告の不利益になる心配がある。

長妻昭 立憲民主党政調会長:
自民党にお願いしたいのは、私は間違いなく政治家が関与していると疑っているが、それについて証人喚問で松本さんに伺うこと。自民党の了解があればそれができる。

牧原秀樹 自民党政治刷新本部幹事:
国対の判断はあるかもしれないが、多くの自民党の議員にも真実を知りたい思いはあり、もちろん私も今の時点で反対だという気持ちは全くない。

反町理キャスター:
裁判の後で自由な立場になった松本さんが国会の証人喚問に応じると、非常に緊迫度が増す気もするが。

牧原秀樹 自民党政治刷新本部幹事:
先のことはわからないが、引き続き自民党も努力すべきで、松本さんが真実を語っていただくような舞台を整えることは必要。他方、例えば本人が有罪となって執行猶予の状況であり、出たくないという時に呼ぶかどうかは、その時の判断もあろうかと思う。

具体的な額を示さない与党案には「諦め」がない

長野美郷キャスター:
政治資金規正法の改正をめぐり、自民・公明が与党案を取りまとめた。政治資金パーティー券購入者の公開基準は現行の20万円超から引き下げることを明記したが、具体的な額は示されず。政策活動費の使途公開については、支払を受けた者が使途を報告し、収支報告書に記載するという文言が記載。政治刷新ワーキンググループでは参加議員からどんな声があがったか。

牧原秀樹 自民党政治刷新本部幹事:
公明党案の5万円よりもさらに細かく明らかにするという意見もあったが、応援してくれる人のプライバシーの問題もあり、第三者機関を作ったときにその第三者機関には全部言うなど様々な意見が出た。透明性を高めていくことについては誰も異論がなかった。

長妻昭 立憲民主党政調会長:
失礼ながらお話にならない。野党案を丸呑みするぐらいでなければ。パーティーも利益率が九十数%で献金とほぼ同じだが、パーティー券だけは、献金できない外資系でも外国人でも補助金をもらっている企業でも買える。これは禁止して個人献金主体にすべき。政策活動費という名目のものも廃止し、一般の支出と同じにする。

反町理キャスター:
5万円や10万円以内なら報告不要といったルールはこれから決めるのか。これから野党との協議だと言っていたら、与党案は多分できない。与党案を提出せず、与野党協議特別委員会の議論に臨むと聞こえる。

牧原秀樹 自民党政治刷新本部幹事:
法案は与党としてちゃんと作る。今日我々がかなり意見を言ったので、これを受けて公明党さんとの法案を具体的に進める。与党案に固執して野党の意見は全然入れないというわけではなく、野党の皆さんの意見も真摯に聞いていく。

長妻昭 立憲民主党政調会長:
なぜそんなにややこしいことをするのか。全部普通の支出と同様にすれば、収支報告書に全部載る。

若狭勝弁護士:
政策活動費を政治家の資金管理団体に入れるようにすれば、出たお金は全部、収支報告書に書かなければいけない。また個人がもらった場合、政治家本人が自分の資金管理団体に寄付する特定寄附という扱いがある。

反町理キャスター:
でもそこから先ではまた透明性が上がる。いずれにせよ「逃げられない」という諦めがまだないと。

若狭勝弁護士:
おっしゃる通り。

企業・団体献金の禁止をめぐる与野党の溝

長野美郷キャスター:
立憲民主党、日本維新の会、共産党、国民民主党の野党4党の国会対策委員長らの会談で、野党4党は政治資金規正法の改正について「政策活動費の全面開示」「『連座制』の強化」「企業・団体献金の禁止」の3つの柱について大筋合意。また衆議院政治倫理審査会でまだ弁明していない自民党議員44人の審査を求め、申し立てを行う方針でも一致した。

長妻昭 立憲民主党政調会長:
根本原因が見えてきた。1993年にも、政党助成金をもらう代わりに企業・団体献金は禁止しようという合意があった。本丸は企業・団体献金の禁止。先進7カ国の中でも、非常に日本は献金が緩くなっている。この案を呑んでいただければ日本の政治は一定程度きれいになる。岸田総理には蛮勇をふるってほしい。

長野美郷キャスター:
企業・団体献金についての各党のスタンスは、国民民主党以外の野党は禁止または廃止を掲げているのに対し、与党案では言及されず。野党は法案として一本化できるか。

長妻昭 立憲民主党政調会長:
我々は2年前にも提出しており、その法案も参考にしてできると思う。やはり上限が150万円の個人献金と比べ、企業・団体献金は金の桁が違い、一つの企業で5000万円という例もある。また、献金以上にパーティー券が多い可能性もある。政治資金パーティーの名目なら、例えば大臣になった人が所管業界から金を貰うこともできる。これが放置されていることは非常に政治を歪める。与野党問わず問題意識を持ち直すことが必要。

牧原秀樹 自民党政治刷新本部幹事:
例えば中小企業の5万円献金がダメで、お金持ちの個人が150万円献金はいいのかという話も含め、理屈でも詰めなければいけないことが多くある。また、新人はいきなり個人献金を集められない。私も落選中は本当に大変で、企業が応援してくれたが全く多額ではなかった。それが政策を歪めるか。

若狭勝弁護士:
企業・団体献金は将来的になくしていく方向を考えるべき。問題のないところもあるが、癒着やしがらみが生まれてくることも確か。

反町理キャスター:
5月10日現在、与党案ができていない。総務会の日程、総理がG7に行ってしまうことなどを考えると、5月中に衆議院を通過する形でなければ非常に苦しい状況になるのでは。

牧原秀樹 自民党政治刷新本部幹事:
日程的には相当大変。だがこの会期内にやらなければいけないわけではない。私個人は会期を延長してもやればいいと思う。必ず一定の成果を得るべき。
(「BSフジLIVEプライムニュース」5月10日放送より)

© FNNプライムオンライン