「遺産は私がもらう!」母の死後、独身長女の不満が爆発…ドロ沼相続と「遺留分」の存在

(※写真はイメージです/PIXTA)

いつの時代もなくならない相続トラブル。「もっとはやく対策を始めていれば…」という声は尽きません。本記事では、実際に起きたトラブルを紹介し、相続対策の重要性について解説していきます。

長女が「長男の嫁」に放ったとんでもない一言

夫婦のうち一方の死亡に伴った、配偶者と子どもによる相続を「一次相続」、そして一次相続後、配偶者の死亡に伴った子どもによる相続を「二次相続」と呼びます。どちらもしっかり対策を行わないと、泥沼の「争続」に発展しかねません。

恨みつらみはなかなか消えないもの。一次相続で納得いかない結果に終わった……義家族との間にわだかまりが残った……家族は、ずっとそのときの感情を覚えています。積年の怒りを爆発させるのが、「相続」なのです。

母が亡くなったあと、独身長女・長男の嫁・長男の子どもの間に起きた下記のトラブルは、まさに典型例といえましょう。

“母は2人の孫だけはかわいがっていましたが、独身の長女にしてみれば、それもおもしろくなかったのだと思われます。

そして、今回、母が亡くなり二次相続が発生しました。相続人は長女と、長男の代襲相続人である孫2人です。かねてから長男の妻に不満を抱いていた長女の気持ちが、ついに爆発しました。「嫁のくせに親の面倒も見ないで、孫を取り入らせて遺産だけもらおうなんてずるい。母の面倒を最後に見たのは私なのだから、母の遺産は私がもらうのが当然でしょ。孫たちの代襲相続は放棄してもらうわ」と長男の妻に言い放ったのです。”倉持公一郎氏『ワケあり不動産の相続対策』

※ 代襲相続人・・・相続人となるはずだった兄弟姉妹がすでに亡くなっていたり、何らかの理由によって相続権を失っていたりする場合に、代わって相続人になる人のこと。今回のケースでは長男が死亡していたため、その子どもが相続権を得た。

「嫁のくせに面倒もみないで」「母の面倒を最後に見たのは私なのだから」から察するに、長女ひとりで懸命に親のお世話(介護)をしていたのでしょう。時間や費用ともに大きなウエイトを占める親の介護は相続トラブルの火種になりやすいものです。

結局、本事例は“長男の妻は長女に言われるがまま、未成年である子らに代わって、「代襲相続を放棄します」という書類にハンコを押してしまいました。”となんともツラい幕引きをしています。家族にわだかまりが残らないよう、できる限り配慮した遺言書を用意していれば……義両親の面倒をもっと見ていれば……相続のシーンでは「たられば」が尽きないものです。

とはいえ、長女の発言には穴があったことにお気づきでしょうか。カギとなるのは「遺留分」です。

お金巡り激怒「自分が何言っているかわかってるの⁉」

兄弟姉妹(甥・姪)以外の相続人に、最低限保障された相続財産の割合のことを「遺留分」と呼びます。たとえ遺言を残していたとしても「納得いかないので遺留分を請求します」と相続人の誰かが遺留分侵害額請求をすれば、よもや裁判沙汰です。

本事例では母親の子どもたちが相続人であるため、代襲相続人の孫にも遺留分は発生します。長女の言い分に理解を示せる面はなきにしもあらず……ですが、この権利を長男の妻が知っていたら、また結末は変わっていたかもしれません。

実際に遺留分侵害額請求権を行使した事例が下記になります。長男が遺言書の内容に猛反発、長女のヒロコさん(仮名)に大声を出し……。

“「ちょっと落ち着いてよ! お母さんの字で、ハンコも押してあるじゃない! 共謀してるなんて信じられない。自分が何言っているかわかってるの⁉」

「こんなもの認められない。無効だよ無効!」

こうして長男は遺留分(今回の場合、民法上では実家の1/4が長男の持ち分)をヒロコさんに請求(遺留分減殺請求)したのです。

ヒロコさんはすぐに弁護士に相談し「遺留分を渡したくない」と伝えました。しかし、争っても勝ち目がないと弁護士に諭され、しぶしぶ応じることにしたのです。遺留分は現金で精算しました。”(2020/10/1 江幡吉昭氏 幻冬舎ゴールドオンライン連載『駅3分の空き家めぐり…63歳長男「嘘だろ!?」亡母の遺言に絶句』)

これまたドロ沼。遺産争いとは結局「お金の取り合い」なわけですから、結末がどうであれ、その過程は苦しいものになります。

遅かれ早かれ起こる「相続」。たとえ今家族仲に問題がなかったとしても、お金が関わるとその関係性は容易に揺らぐものです。致し方ないことである以上、いつ何があっても問題ないように、事前の対策が求められます。

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