「繰り返し読む」や「マーカーを引く」勉強法、実は効果が低い!科学的根拠に基づく勉強法とは

上昇志向が強いオトナのために、東カレ編集部が厳選した“ワンランク上の自分になれるための本”を紹介します。

今回、紹介するのは、『科学的根拠に基づく最高の勉強法』安川康介著(KADOKAWA)

この本は、日本で医者を目指し、アメリカの臨床医として働く安川先生のYouTubeで300万回以上(2024年4月)再生されている人気動画「科学的根拠に基づく最高の勉強法」を書籍化したものです。

これを読めば、今までの自分の勉強法は間違っていた、と気づく人も多いでしょう。

特定の試験や資格に向けて勉強している人だけではなく、すべての学ぶ人が効率が高い勉強法を知ることができます!

▶前回:「マウンティングを制する者は、人生を制する」一流エリートが実践するマウント攻略法とは

▼INDEX
1. 科学的に効果が高くない勉強法

2. 科学的に効果が高い勉強法

3. 本書のココがすごい!

1. 科学的に効果が高くない勉強法

今の義務教育では、勉強すべき内容は教わりますが、「どうしたら効率の高い勉強ができるのか」という勉強法そのものについては、あまり教えてくれません。

勉強の効率を上げたいのならば、比較的効果の低い勉強法について知り、こうした勉強法に使う時間を減らし、その分効果の高い勉強にあてることが重要です。

それなりに時間をかけて勉強しているのに、あまり覚えられない、試験の点数が伸びない、という人は、科学的に効果が高くない勉強法で勉強してしまっていないか振り返ってみてください。

また勉強が得意な人でも、なぜ自分が周りと比べて勉強ができるのかを考えることによって、さらに効率的な勉強法がわかるようになります。

①繰り返し読む(再読)

教科書や本は何度も繰り返し読んだほうが良いと、どこかで聞いたり読んだりしたことがある人は多いかもしれません。

繰り返し読む、再読するという勉強法は、最も一般的な勉強法の1つです。しかし結論から言うと「ただ繰り返し読むこと」は、効率が低いことがわかっています。

普通の再読に、学習効果があまりないと考えられる1つの理由としては、同じ文章を2回目に読むときのほうが文章に慣れすらすら読め、わかった気になってしまうため、さらに理解を深めたり、覚えたりするといった深い情報処理が新しく行われにくいことが考えられます。

このように表面的に情報が処理しやすくなったことで、実際には内容を記憶し深く理解していないにもかかわらず、覚えた気になってしまう、理解した気になってしまう心理的な現象は、「流暢性の錯覚(幻想)」と呼ばれています。

何かを学習するときは、この流暢性の錯覚に気を付けなければなりません。僕たちの脳は、実際にしっかり記憶して、深く理解していないのに、自分の知識や習熟度を過大評価してしまうことがあるのです。

②ハイライトや下線を引く

色とりどりの蛍光ペンを使って単語や文章をハイライトすると、なんとなく勉強した気になります。けれども残念ながら、ハイライトすることや下線を引く勉強法にはあまり効果がないことがわかっています。

こういった勉強法は、個人差があると言われています。つまり強調する場所を選ぶのがうまい人もいれば、そうではない人もいて、そのハイライトした教材をどのように勉強するかも人によって違う。

だから、ハイライトをより効果的に行う人には役立つかもしれないが、推論を必要とするより高度な課題では、かえってパフォーマンスを低下させる可能性があると研究結果があります。

このようにかなり低い評価となっているハイライトと下線ですが、僕は、ハイライトしたり下線を引いたりします。大事なところは蛍光ペン、それよりちょっと重要性は落ちるけど強調したい箇所は、赤いペンで下線と使い分けたりもする。

しかし、再読と同じで「勉強した気になってしまう」ことがある点には注意し、ハイライトや下線を引くだけではなく、あとから述べる効果の高い学習法を行う必要があります。

2. 科学的に効果が高い勉強法

次に学習において科学的に効果が高いとされている効果的な学習法について、その根拠となる論文の一部を紹介しながら説明します。

①アクティブリコール

まず学ぶために決定的に重要なのが、アクティブリコールです。簡単に言うとアクティブリコールとは、「勉強したことや覚えたことを、能動的に思い出すこと、記憶から引き出すこと」です。

実はこれまでの学習に関する数多くの研究から何かを記憶するためには、それを積極的に思い出す作業や、脳みそから頑張って取り出す作業こそが、決定的に重要だということが明らかになっています。

ちなみに、情報を積極的に思い出すことによって、その情報が長期的に記憶に定着しやすくなる現象のことを「テスト効果」といいます。

一般的に想像するような試験やクイズなどを受けないといけないのかと思われるかもしれません。しかし、試験やクイズに限らず、とにかく記憶から引き出す作業であれば、効果が期待できます。

多くの人は、勉強に対してインプット中心のイメージを持っています。

例えば、ある教科書を100ページ読んだAさんと、200ページ読んだBさんがいたとします。「どちらが多く学びましたか?」と聞かれたら、200ページ読んだBさんと答える人のほうが多いのではないでしょうか。

インプットの量で学習を評価してしまう考え方は、とても一般的です。できるだけ多くの文章を読む、できるだけたくさん講義を聴く、できるだけインプットの量やそのための時間を増やすことがよい勉強法だと考えている人が多いかもしれません。

しかし、インプットだけしか行わない勉強方法というのは、科学的には効率が悪いことがわかっています。

勉強した内容を思い出す、記憶から取り出す作業(例えば、覚えたことを白紙に書き出したり、練習問題を解いたり、テストを受けたりすること)について、すでに覚えたことを単に確認する作業であるとか、学習の効果を判定するための作業であると勘違いしている人がいます。

けれども学習に関する数多くの研究から、思い出す作業、アウトプットすることこそが、記憶を長期に定着させる効果的な勉強法だということがわかっています。

アクティブリコールのことを「ただの暗記」なのではないかと思う人もいるかもしれませんが、アクティブリコールには、教材の内容について直接聴く問題だけではなく、推論など、より深い理解が必要な応用問題に対しても効果があります。

また、アクティブリコールを時間をおいて繰り返すと、学習効果が高いことがわかっています。アクティブリコールは、情報を積極的に思い出すことで、「この情報は大切だよ」と自分の脳に言い聞かせ長期記憶として保管してもらう、そんなイメージを僕は持っています。

学生や資格試験の勉強をしている人であれば、ほとんどの人が問題集や過去問を解いたり暗記カードを使っているでしょう。

しかし、何かの教材を読んでいる時、その範囲の練習問題が常にあるわけではないし、問題集によっては試験範囲を網羅的にカバーしておらず、問題集で問われなかったところが穴になる可能性もあります。

そのため、教材を読んでいる時からアクティブリコールを意識する必要がある。

記憶から引き出す作業をより重視し、インプット中心の勉強から、アウトプットをより重視した勉強に変えてみることが大切です。

ここで僕が医学の膨大な知識を覚えなければならない時に使ってきた、そして今でも使う「ブツブツつぶやいて教えるふりをしながら書き出す白紙勉強法」を紹介します。

長ったらしい、大そうな名前を付けてみましたが、至ってシンプルな勉強法です。

1)英単語のリストなど覚えたい情報をまず読みます。その後その情報を見ないで、覚えたい内容を白い紙にできるだけ書き出していきます。

その際のポイントは、元の情報を見ない、つまり記憶の手がかりがない状態で頑張って記憶から引き出すことです。

2)覚えにくい内容や難しい内容の場合、声に出しながら書くようにします。これは、ある情報をただ黙読するよりも書き出したりブツブツ呟いたり、声に出したりしたほうが記憶に残ることが知られていて「プロダクション効果」と呼ばれています。

3)さらに誰かに教えているフリをしながら、アウトプットすると、より効果は高いと思います。誰かに教えることは、実際に情報の整理や記憶の定着を促す効果が確かめられています。

誰かに教える、または教えようとすることで、その学習内容の理解が深まることを「プロテジェ効果」といいます。

興味深いことに、実際に誰かに教えなくてもあとで誰かに教えることを前提に勉強すると、学習効果が高いという研究報告があります。

②分散学習

一夜漬けのように、あるまとまった学習範囲を間隔をあけずに一度に続けて勉強することを、「集中学習」と言います。

一方で、時間をあけて勉強することは「分散学習」や「間隔反復」と呼ばれています。そして一度にまとめて勉強するよりも、時間を分散して勉強するほうが長期的な記憶の定着が良く、この効果は分散効果と呼ばれています。

これは同じ内容を同じ時間をかけて勉強するにしても、分散したほうが学習効果が高いということを意味する。

つまり2時間続けてある範囲の英単語を勉強するよりも、今日は1時間、別の日に1時間と分散したほうが、時間が経ってもテストしたときに覚えている単語の数は多いということ。

また、学習の間隔を長くあけたほうが、より長く記憶に定着すると言われています。

つまり半年後の試験に向けて勉強する場合と、1週間後の試験に向けて勉強する場合では、最適な復習のタイミングが異なるということになります。

さて分散学習はあくまでも勉強のスケジュールについての話ですが、学習方法を繰り返せばよいかというと、それこそがアクティブリコールです。

まず、新しい範囲を勉強するときは、少なくとも1~3回内容を思い出せるようになるまでアクティブリコール(紙に書き出す、思い出すなど)をする。その後、決まった間隔は特にありませんが、1日~1週間後にまたアクティブリコールをしてみます。

この際、忘れている内容についてはもう一度知識を確認し、少なくとも1回アクティブリコールをします。これを何回か間隔をあけてまた繰り返します。

イメージしやすいように具体例を出してみます。

難しい英単語20個を覚える場合、英単語を見て発音しながらスペルを書き出し、日本語の意味を声に出してみます。

その後、今度は何も見ずに英単語のスペルと意味を思い出させるだけ、ブツブツいいながら白い紙に書いていきます(アクティブリコールとプロダクション効果)。

その際に覚えにくいものは、教えているフリをしながら行います(プロテジェ効果)。

その時点で覚えていなければ単語のリストを見て英単語のスペルや意味を確認します。

再度アクティブリコールをして、覚えていない単語をまた確認という過程を、すべての英単語について少なくとも1回はアクティブリコールできるようになるまで繰り返します。

これで1回目の勉強は終了です。

そして難しい単語の場合は、1日以内にまたアクティブリコールし、忘れている単語があればまた確認します。

この流れを分散学習で繰り返します。

アクティブリコールを間隔を変えて、ただ繰り返す。

このきわめてシンプルな勉強方法をあまり意識してこなかったという人もいるかもしれませんが、今日からこれを実践するだけで勉強の効率が大きく改善されるはずです。

今何かの大きな試験に向けて勉強している人は、試験までに何度も間隔反復ができるように勉強のスケジュールを組んでみるといいでしょう。

その際にはもちろん教科書を「繰り返し読む」というものではなく過去問や模試を解く、白紙の紙に書き出す、フラッシュカードを使う、誰かに教えるなどのアクティブリコールを中心とした復習を意識してみることが重要だと思います。

3. 本書のココがすごい!

今回紹介した、『科学的根拠に基づく最高の勉強法』安川康介著(KADOKAWA)のすごいところは下記に集約される。

①科学的で効果的な勉強法のエッセンスが詰め込まれている。

②誰でもすぐに実践できる勉強法なので、簡単に取り入れやすい。

③この記事では紹介できなかったが、具体的な記憶法や勉強に対するモチベーションのコントロールなど精神面についても書かれていて多方面から役に立つ。

【著者】

安川康介
YouTube(米国内科専門医 安川康介の医学チャンネル)
X(安川康介@米国内科専門医)

2007年慶應義塾大学医学部卒業。日本赤十字社医療センターにて初期研修を修了後渡米。ミネソタ州ミネソタ大学医学部内科レジデンシー、テキサス州ベイラー医科大学感染症フェローシップ修了。

米国内科専門医・米国感染症専門医。南フロリダ大学医学部助教。

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