レッチリに新ギタリストが加入!オルタナティブロックの最重要人物「デイヴ・ナヴァロ」  レッチリ来日記念!コラム3連発、90年代に残した3枚のアルバム

レッド・ホット・チリ・ペッパーズが90年代に残した3枚のアルバム ②『ワン・ホット・ミニット』

レッチリ来日記念、コラム3連発!vol.2は「ワン・ホット・ミニット」

2024年5月、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(以下:レッチリ)が来日する。今回のライブは代表曲を惜しげもなく披露するとアナウンスされている。前回の来日公演でもヒット曲満載だったが、それ以上の大盤振舞が期待できるのだ! チケット代はなかなかの金額だが、間違いなく素晴らしいライブを観せてくれるだろう。

今回の来日公演を記念して、90年代にレッチリがリリースした3枚のアルバムについてコラムを書かせてもらう。2回目となる今回はデイヴ・ナヴァロが参加したアルバム『ワン・ホット・ミニット』を取り上げたい。

ジョン・フルシアンテが脱退そして、デイヴ・ナヴァロが新加入

1991年リリースのアルバム『ブラッド・シュガー・セックス・マジック』で大ブレイクしたレッチリだったが、ギタリストのジョン・フルシアンテが脱退してしまう。ジョンはドラッグに溺れ、かなり深刻な状態で日本公演の途中でバンドを離れてしまったのだ。

世界的ブレイクの立役者であったジョンを失ったレッチリだったが、その後任に当時のオルタナシーンで人気、実力ともにナンバーワンのギタリストだった元ジェーンズ・アディクションのデイヴ・ナヴァロを迎えた。

デイヴ・ナヴァロの世界的なお披露目となったのが『ウッドストック ’94』だった。オリジナルのウッドストックから25周年を祝う大規模フェスは、ここ日本でもNHK BSで放送されたので、ご覧になった方も多いだろう。世界中が注目する新生レッチリはステージに登場するやいなや、頭に巨大な電球を被り、圧倒的なバカバカしさでシーンの最前線に戻ってきたのだ。それを見て私は、ジョン・フルシアンテはこのバカバカしさに嫌気が差してレッチリを脱退したのかなと思ってしまったのだが、このバカバカしさもレッチリの大きな魅力なのだ。では、デイヴ・ナヴァロの加入で肝心の音楽性はどのように変化したのだろう?

もともとデイヴが在籍していたジェーンズ・アディクションは、レッチリほどのファンキーさはないにしても、ファンクビートとハードなギターサウンドをミクスチャーしながらもサイケデリックな音作りを基調としていた。レッチリと音楽的な違いはあるにせよ、オルタナティブという方向性は同じであるため相性が悪いはずはないと予想できた。デイヴの加入で、レッチリにどのような化学反応が起こるのか? そして、どのような音を作りあげてくれるのかという期待が高まるばかりだった。

メタリックで切れ味鋭いのギターサウンド

『ワン・ホット・ミニット』を特徴付けているのはデイヴ・ナヴァロのメタリックなギターとサイケデリックなフレーズにフリーのブリブリとうなりを上げるベースがぶつかり合うサウンドだ。前作『ブラッド・シュガー・セックス・マジック』よりもハードで鋭い音になっているが、音が重たくなったかと言うとそうではなく、なかりシェイプアップしたソリッドな音像になっている。

リリース当時、日本のロックジャーナリズムからはかなり高い評価を獲得しており、デイヴ・ナヴァロがレッチリに持ち込んだソリッドなギターサウンドはアルバム『ワン・ホット・ミニット』において成功している。前述の『ウッドストック ’94』に続き、ここ日本においては1997年に開催された第1回『フジロックフェスティバル』では初日のヘッドライナーとして登場し、嵐の中での演奏は伝説として、今でも語り草になっている。

デイヴ・ナヴァロの脱退とジョン・フルシアンテの復帰

人気、実力ともにナンバーワン・バンドに君臨したレッチリだったが、なんと、『ワン・ホット・ミニット』に伴うワールドツアーの終了後にデイヴ・ナヴァロが音楽性の違いを理由にレッチリを脱退してしまう。私個人としてはデイヴ・ナヴァロのソリッドなギターサウンドはレッチリに新たな魅力を加えてくれたし、バンドのサウンドにもハマっていたと感じていたので、脱退の報を聞いた時には残念で仕方なかった。

レッチリを脱退したデイヴ・ナヴァロは2001年、ようやく初のソロアルバム『トラスト・ノー・ワン』をリリースしたが、この作品で鳴らされている音は暗く、重たいインダストリアル・ロックに近いものだった。この作品を聴くにつけ、レッチリとの音楽性の違いによる脱退は仕方ないものだったと納得させられてしまった。

一方、残されたレッチリには、かつてバンドを脱退したジョン・フルシアンテが復帰することになった。レッチリ脱退以降のジョンはうつ病を患い、ドラッグへの依存も深刻なものになっていた。ドラッグを買う金を稼ぐためにソロアルバムをリリースしていたほど、彼の生活は荒んでいた。こうした状況にフリーら友人たちが手を差し伸べて、ジョンはうつ病を克服し、ドラッグ中毒からも抜け出すことに成功した。そして1999年、ジョン・フルシアンテのカムバック作品としてアルバム『カリフォルニケイション』がリリースされる。

今こそジョン不在期のレッチリを再評価しよう!

アルバム『ワン・ホット・ミニット』は充分に傑作と言える作品なのだが、ジョン・フルシアンテ復帰後の『カリフォルニケイション』から『ステイディアム・アーケイディアム』までの3部作に比較されることが多くなり、バンドヒストリーの中では重要視されないアルバムという刻印を押されてしまった不幸な作品だ。

しかし、デイヴ・ナヴァロの戦慄するギターとレッチリの鍛え抜かれたバンドサウンドのぶつかり合いは聴き応え満点だし、収録曲も粒揃いだ。黄金時代を迎える前夜のレッチリを知り、感じるためにも改めて本作に向き合い、俯瞰して聴き直し、正当に評価されるべき作品だ。

さあ次回は、レッチリ黄金時代の幕開けとされるアルバム『カリフォルニケイション』を取り上げてみたい。

カタリベ: 岡田 ヒロシ

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