“ネリの保険”から急浮上!井上尚弥の次戦相手候補TJドヘニーの実力は?

Ⓒゲッティイメージズ

井上vsグッドマンは12月頃の次次戦?

プロボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(31=大橋)の次戦が混沌としてきた。

5月6日、ルイス・ネリ(メキシコ)をノックアウトした東京ドームのリング上でIBF・WBOスーパーバンタム級1位サム・グッドマン(25=オーストラリア)が紹介され、9月頃の対戦に向けて交渉していくことが井上本人から公表された。

しかし、その後、米プロモート会社「トップランク」のボブ・アラム氏が、元IBFスーパーバンタム級王者テレンス・ジョン・ドヘニー(37=アイルランド)も次戦の相手候補の一人と言及。グッドマンとは12月頃の次次戦で対戦する可能性があるという。

“前科”のある「悪童」ネリが井上戦の前に計量でウェイトオーバーしたり、ドーピング陽性反応が出たりした場合は、急遽ネリの代役としてリングに上がる準備をしていたドヘニー。結果的にはネリが井上と対戦し、ドヘニーは同じ日のアンダーカードでブリル・バヨゴス(22=フィリピン)に4回TKO勝ちを収めた。

いわば、ネリの「保険」として用意された選手だが、次は正真正銘の挑戦者としてモンスターと対峙する可能性が出てきたわけだ。現在、WBO3位、WBC9位、IBF10位にランクされている。一体どんなボクサーなのだろうか。

岩佐亮佑を下して世界王座獲得、最近は3連続KO勝ち

出身のアイルランドでアマチュアとして200戦以上のリングに上がり、2012年4月にオーストラリアでプロ転向。井上尚弥のプロデビューは同年10月だから、プロキャリアはほぼ同じだ。

2018年8月、後楽園ホールで岩佐亮佑(セレス)に挑戦し、判定勝ちでIBFスーパーバンタム級王座獲得。2019年1月に高橋竜平(横浜光)に11回TKO勝ちで初防衛を果たしたが、同年4月にWBA同級王者ダニエル・ローマン(アメリカ)との王座統一戦に判定負けしてベルトを失った。

2023年3月には井上の対戦相手候補サム・グッドマンに判定負けしたが、同年6月に後楽園ホールで井上と同門の中嶋一輝(大橋)に4回TKO勝ちでWBOアジアパシフィックスーパーバンタム級王座を獲得。同年10月には、再び後楽園ホールのリングに上がり、井上のスパーリングパートナーを務めたジャフェスリー・ラミド(アメリカ)に1回TKO勝ちで初防衛に成功している。

ここまで30戦して26勝(20KO)4敗。ローマン戦以降の5年間は、グッドマン戦まで2勝4敗と負けが込んでいたが、中嶋戦から3連続KO勝利と息を吹き返している。

迫力不足は否めない37歳のサウスポー

サウスポーでフットワークも使え、攻守にバランスの取れたボクサーファイター。ラミド戦は左一発で倒すなど37歳とは思えない攻撃力も持っている。

ただ、ローマンにはボディーでダウンを奪われており、2021年に判定負けしたマイケル・コンラン(アイルランド)戦でもボディーと顔面に打ち分けられてダウンを喫している。井上の強力なボディーブローを受けて耐えられる強靭さはなさそうだ。

何よりアマチュアキャリアが長く基本に忠実なスタイルのため、強烈なフックを振り回すネリのような「怖さ」はない。ノニト・ドネア(フィリピン)やスティーブン・フルトン(アメリカ)ら井上が倒してきた世界の猛者に比べると迫力不足は否めないだろう。

パウンド・フォー・パウンド1位に返り咲いた井上に、もはやスーパーバンタム級で張り合える敵はいないのではないだろうか。ドヘニーでも、グッドマンでも、井上に求められるのは「勝利」ではなく「勝ち方」と言えそうだ。



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