「つくってあそぼ」の“ワクワクさん”23年 久保田雅人さんは講演会年間100本こなす超多忙生活

久保田雅人さん(C)日刊ゲンダイ

【あの人は今こうしている】

久保田雅人さん(62歳)

子どもの頃は身近なものを使って工作し、それを使って遊んでいたもの。NHK教育(Eテレ)の工作番組「つくってあそぼ」をよく見ていた、という向きも少なくないだろう。同番組で工作を教えてくれる“ワクワクさん”として出演していたのが久保田雅人さんだ。久保田さん、今どうしているのか。

◇ ◇ ◇

久保田さんに会ったのは、東京メトロ・銀座駅から徒歩6分のところにある喫茶店内の会議室。あれ、久保田さん、変わらずワクワクさんのままだ!

「『つくってあそぼ』が終わって、この3月で11年。番組放送期間中からやっていた、全国の幼稚園や親子の工作教室などで、工作を教えて遊ぶという活動を、ずっと続けております。番組で取り上げたり、カットされたりしたものを再演しています。でも、実はこの帽子や衣装は番組で使用したのとは別物で、似たものを探して着用しています」

久保田さん、まずはこう言ってニッコリ。

「『つくってあそぼ』の裏話などをする講演会や幼稚園の先生の研修会、大学の学園祭も含めると、年間100本ぐらい。長年続けておりますと、いろんなことがあります。とある幼稚園では園児の数が半分以下になったり、廃園となった幼稚園があったり。少子化を肌で感じています。寂しいですね」

家庭内でも、少子化を感じているという。久保田さんは29歳のとき、劇団の5歳年下の後輩と結婚。30歳の長女、28歳の次女、26歳の長男に恵まれたものの3人とも未婚で、孫はいない。

「将来の不安から結婚しよう、子どもをもとう、と思わないみたいですね。子育ての楽しさ、喜びを教えるべきだったな、と親として反省しています。子育ては確かにつらさもありますが、たとえ裕福でなくても、それを上回る喜びがある。私は家で家族5人で食事をするときが、一番幸せでしたから。NHKから日焼けなどを禁じられ、子どもたちが小さい頃に海やスキーに連れて行ってはあげられませんでしたが」

顔のシワが少なく肌がきれいなのは、日焼け禁止だったおかげか。

「毎晩、お風呂でゴシゴシこすり洗いをした後、何もケアしていないんですけどね(笑)。子どもたちと長年接しているので、心も老けずにいられました。健康面も問題なく、仕事に穴をあけたことは一度もありません」

ユーチューブ「わくわくさんの工作教室」は赤字

久保田さんの3人の子どもたちは「カタギの仕事」につき、長女と次女は独立。現在は夫人と長男の3人で、都内のマンションで暮らす。

「子どもたちには私のように、テレビに出るような仕事につくのは絶対に許さん、と伝えていました。照明や音響など裏方ならいいけれど、表に出る役者などの仕事ほど、努力が報われない職業はないですから。私は27歳でワクワクさんに選んでいただき、テレビの仕事だけで食べてこられて本当にラッキーでした。それまではオーディションを数多く受けても、合格したのは2つだけ。苦労しました」

3年前にユーチューブチャンネル「わくわくさんの工作教室」をスタートさせた。リアルだけでなく動画でも、工作の楽しさを伝える活動を続けているのだ。

「番組終了後、雑誌などで工作を紹介していて、文章や写真だけでなく動画で伝えたい、と思ったのがユーチューブを始めたきっかけ。スタッフ3人に、ボランティアで協力してもらっています。制作費くらいはまかないたいのですが、赤字ですね(笑)。それでも今のコンセプトで続け、ワクワクさんのイメージを守りながら、活動を続けていきたい。私は人前でしゃべること、工作をすること、子どもたちと遊ぶことが大好きなんです」

気晴らしは映画やアニメのDVD観賞だ。

「70年代の邦画や洋画──『仁義なき戦い』や『ゴッドファーザー』、昔のテレビアニメ『銀河英雄伝説』とかが好きですね」

さて、落語家や教師志望だった久保田さんは、立正大学4年のとき、夢破れて劇団入り。1989年、手先の器用さなどから、「つくってあそぼ」の試作番組「わくわくおじさん」のオーディションに所属劇団の推薦を受け合格し、同年、“ワクワクさん”としてデビュー。

翌90年から「つくってあそぼ」がスタートすると、明るく親しみやすい工作ぶりで人気を得て、2013年まで23年間、出演を続けた。

「番組のスタッフは最初から最後までほぼ同じだったのでチームワークが良くて、月に1回はみんなで居酒屋やカラオケに行っていました。相棒の子熊のゴロリくんの着ぐるみに入っていた操演者や、声を担当していた方とは、本番直前に『今日行く?』『30分だけ行くか』と目配せし、本番を終えた18時ごろから、30分のはずが午前3時まで飲んだりも(笑)。彼も私も声が大きいから、『もしかして、ワクワクさんですか?』と声をかけられ、酔いがさめたりしてね(笑)」

ゴロリくんとの楽しい掛け合いを、また見たい。

(取材・文=中野裕子)

© 株式会社日刊現代