「圧倒的な説得力」バフェット氏が注目する日本の【5大商社】決算と株主還元策を解説

先々週、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハサウェイの年次株主総会が開催されました。その中で、バフェット氏は日本の大手商社株の投資機会に「圧倒的な説得力」があったと語りました。

読者の中には、バフェット氏が日本の商社株に投資をされている事をご存じの方も多いと思いますが、もう一度ここで振り返って見たいと思います。

2020年8月末、バークシャー・ハサウェイが日本の5大商社である、伊藤忠商事、 丸紅、 三菱商事、 三井物産、 住友商事株を各5%超取得したことが判明しました。その後、2022年11月に「変更報告書」が提出され、発行済み株式数の6%超まで買い進めた事が判明しました。同時に、株価次第では、発行済み株式数の9.9%まで買い増す可能性があると発言しました。今年2月に株主へ宛てた書簡で保有比率が約9%に達した事がわかっています。

絶妙な商社株の購入で、次の銘柄探しなど話題はつきません。先日も、円建て社債2,633億円発行しましたが、この資金で日本株を購入するのではないかとの予測も広がっています。しかし、現在のところ5大商社以外に投資をした形跡は見られません。

そこで今回は、先週まで行われた5大商社の決算や株主還元策などを解説します。


伊藤忠

伊藤忠(8001)は、2024年3月期の連結最終利益は前の期比0.2%増の約8,018億円でした。2025年3月期は前期比1.8%増の4,800億円に伸びる見通しです。株主還元策として、今期の年間配当は前期比40円増の200円に増配を発表しました。

ただ、同社は。今年4月に経営方針「The Brand-new Deal」及び2024年度経営計画を公表しており、その内容に沿った感じです。4月の公表は3ヵ年の計画を前例に従い策定するのではなく、目の前の1年間の利益計画や株主還元を発表したものです。経営計画として、利益計画は連結純利益8,800億円(2023年8,000億予定)、ROE16%、株主還元で総還元性向50%を目途とし、 1株当たり配当200円下限 (前期比+40 円) 自己株式取得約1,500億円を掲げました。ただ、今回自社株買いは発表されませんでした。いずれか公表されると思います。5月10日現在の配当利回りは2.75%です。

丸紅

丸紅(8002)は、2024年3月期の連結最終利益は前期比13.2%減の4,714億円でした。2025年3月期は前期比1.8%増の4,800億円に伸びる見通しです。アグリ事業、建機・産機・モビリティ等のオーガニック成⻑及び、化学品、フォレストプロダクツ等の業績改善が見込まれるとしています。 株主還元策は、前期年間配当を83円→85円に増額し、今期も前期比5円増の90円に増配する方針です。中期経営戦略の期間である2023年3月期から2025年3月期において、1株当たりの年間配当金78円を基点とした、利益成長に合わせて増配していく累進配当を実施する事を公表済みです。決算発表と同時に自社株買い500億円を公表しました。5月10日現在の配当利回りは2.95%です。

三井物産

三井物産(8031)は、2024年3月期の連結最終利益は前期比5.9%減の約1兆637億円でした。2025年3月期も前期比15.4%減の9000億円に減る見通しです。化学品、鉄鋼製品がプラスで推移する見通しです。株主還元は、今期の年間配当は100円とし、6月30日割当の1→2の株式分割を考慮した実質配当は17.6%増配とする方針です。自社株買いも同時に発表し、取得総数4000万株(株式分割後ベースで8000万株)、取得総額2000億円を上限を公表しました。中期経営計画2026で3年間を対象に累進配当を導入し、配当の維持または増配を予定しています。5月10日現在の配当利回り 2.54%です。

住友商事

住友商事(8053)は、2024年3月期の連結最終利益は前期比31.7%減の約3,864億円に落ち込みました。2025年3月期は前期比37.2%増の5,300億円という見通しを公表しました。鋼管事業、建設機械事業、不動産事業、アグリ事業などを中心に着実な利益成長が期待出来るとしています。 株主還元は、今期の年間配当を前期比5円増の130円に増配する方針です。

また、新たな中期経営計画を公表し、純利益について期間中に6,500億円を目指すとしています。累進配当で、配当の更なる安定性向上及び利益成長に応じた増配を目指すとしました。

同社が累進配当を実施した事で、大手商社5社は累進配当を実施する事になります。累進配当とは、配当金を減配せずに配当水準を維持し、利益成長に合わせて増配し続けることです。また、自己資本利益率(ROE)については12%以上、総還元性向については40%以上を目指すこと及び、自社株買い取得額500億円も公表しました。5月10日現在の配当利回りは3.06%です。

三菱商事

三菱商事(8058)は、2024年3月期の連結最終利益は前期比18.4%減の約9640億円でした。2025年3月期も前期比1.5%減の9,500億円に減る見通しを公表しました。非資源ビジネスの鋼管事業が北米で緩やかな市況回復を見込み、建設機械事業が堅調に推移するとしています。株主還元は、今期の年間配当は100円とし、前期の株式分割を考慮した実質配当は42.9%増配とする方針です。現在9月末まで5,000億円の自社株買いを実施中です。累進配当も維持し、配当性向40%以上を目処に実施すると公表しました。配当利回りは2.95%です。

5社ともに資源ビジネスをネガティブになるように設定しています。商社は、資源ビジネス=商品市況(原油、金、天然ガスなど)と非資源ビジネス(あまり価格変動なし)で決算を行います。価格変動を保守的に見積もっているように思います。仮に、商品市況などが堅調に推移した場合は、業績の修正もあるでしょう。

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