中国人専門家がソウルに「来て・見て・感じた」韓国政治の迷走

中国の環球時報はこのほど、遼寧大学国際経済政治学院の李家成准教授が執筆した、韓国政治の現状を紹介する文章を掲載した。李准教授は、政権から民意が離れてしまった状況を紹介した。

中国メディアの環球時報はこのほど、遼寧大学国際経済政治学院の李家成准教授が執筆した韓国政治の現状を紹介する文章を掲載した。李准教授は米国のアジア太平洋戦略や朝鮮半島問題、中国の海洋発展戦略などの研究を続けている。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の発足後にもソウルに滞在したことがあり、韓国の民意の変化などを見聞きして感じたという。以下は、同文章の主要部分だ。

尹錫悦政権は5月10日に政権発足2年を迎えた。この2年間で、尹政権の内外の施政に対する批判が高まり、支持率は低迷を続けて一時は20%強にまで落ち込んだ。1カ月前に与党の国民の力が総選挙で惨敗したことは、尹大統領の2年間の政権運営に対する韓国国民の評価とされている。筆者はこの期間に韓国に滞在して民意の複雑な変化を肌で感じた

尹政権の2年間に、韓国は低成長、高物価、高金利、高為替レートなどによる経済的窮状に陥り、国民生活は困窮した。果物も食べられなくなったと訴える人もいる。尹大統領が総選挙期間中に「ネギ1束は875ウォン(約99円)が妥当」と発言したことには、国民の不満が噴出した。現実とかけ離れた安い価格であり、韓国のスーパーではネギ1束が3000ウォン(約340円)以上で売られているからだ。尹政権は物価安定抑制を約束したが、その効果はまだ分からない。

また野党と世論からは、大統領は拒否権を過度に行使し、立法権の正常な施行を侵害したと批判された。最大野党の共に民主党や市民団体、労働組合などの「調査」に国政運営の中心を置いたことで、韓国の民主体制を後退させたとの指摘もある。総選挙での敗北を余儀なくされた尹大統領は、就任2年目にして初めて共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)党首との会談を行ったが効果は限定的で、与野党がどのような分野で協力できるかは不透明だ。

最近特に注目されている医療改革問題では、尹政権が推進した医学部の大幅拡大計画が医療界の反発を招いた。尹政権による医学部の募集拡大策は、体系的な準備や戦略的な計画を持たない政策とされている。今の韓国の街を歩いていると、救急車がうなりを上げたり、サイレンが鳴り響いたりすることによく出くわす。こうした光景は、最近の医療サービスの供給不足による混乱を感じさせる。メーデー当日に行われたたデモに、負担に耐えられないとする救急救命士らが合流する

韓国大統領の任期は5年なので、尹政権にはあと3年が残されていることになる。しかし今や、韓国の政界や社会全般では「3年は長すぎる」として、尹大統領の弾劾を求める主張まである。韓国国内の多くの政府ウオッチャーは、尹政権にとって内政においては公正と常識の原則に戻ることが急務であり、政治の分極化が社会のより深いレベルの分裂に至ることを防がねばならないと警告している。外交では「国益と実用主義」の原則に回帰し、国際的な陣営対決の袋小路にさらに足を踏み入れくないことが必要であり、日米に過度に偏った「価値観外交」からの脱却を求める意見が出ている。(翻訳・編集/如月隼人)

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