デコ活

 学生時代のアパート名は親しみやすくて好きだった。「キンコンカン」。お世辞にも館と呼べない小ぶりなたたずまいで、似た造りの友人宅は「さしすせ荘」だった。会ったことはなかったけれど、大家さんは同じだったようで「隙あらばおやじギャグ」な人だったのかも▲さてこれはどうだろうか。「デコ活」。額周りのスキンケアの話ではなく、脱炭素「デカーボナイゼーション」と「エコ」を組み合わせた造語。正式名称は「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」▲環境省が旗振り役となり、省エネ家電の購入や食品ロス削減など消費者に生活の行動変容を求める国民的な取り組みなのだそう。昨年7月にこの愛称が付いた。同省調査で知名度は4人に1人というが、なかなか実感が伴わない数字ではある▲吹けど踊らずだった政策「プレミアムフライデー」を思い出す。月の最終金曜日に早帰りしようというものだったが、やらなきゃ感が強すぎた▲すっかり定着したのは「クールビズ」。今や通年ノーネクタイも珍しくない。しんどいことから開放されるという便益を享受できた▲デコ活。あのアパート名のように覚えやすくはある。でも行動変容を押しつけるやり方ではプレ金の二の舞いは濃厚だ。おやじギャグの類いにしてはあまりに惜しい。(竹)

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