ゼノフォビア=外国人嫌悪はメンタルにも悪影響を与える

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【ニューヨークからお届けします】

「ゼノフォビア」という言葉、日本でも聞かれるようになってきました。厳密には、見知らぬ人や外国人に対する恐怖や憎悪を意味します。

直近だとバイデン大統領が、日中印の成長を阻害している要因の1つが「外国人嫌悪」と発言してニュースになりました。

確かに年間100万人もの移民を受け入れているアメリカは、少子化にもかかわらず人口増加を続けています。数だけでなく、世界を相手にするビジネスにとって、多様な働き手がすぐそこにいるのも大きなアドバンテージです。アメリカが経済的に一人勝ちしている理由はまさに移民です。

ただアメリカに外国人嫌悪がないわけではありません。トランプ前大統領は根拠なく、移民を犯罪者扱いする発言を頻繁にしますが、これはゼノフォビアを助長しています。

こうした嫌悪は差別にもつながります。特にアジア系移民やその子供たちは、アメリカ人なのによそ者「永遠の外国人」扱いされ、差別の対象になりやすいことで知られています。暴力をはじめとしたヘイトクライムの犠牲になったり、微妙な差別発言の積み重ね、マイクロアグレッションを受ける場合もあります。

こうした外国人嫌悪を言葉や態度によって受け続けると、健康にも悪影響を及ぼす可能性があるといいます。ルトガー大学のドング博士が、シカゴの中国系アメリカ人の高齢者を対象に行った研究によると、差別はうつ病や健康状態の悪化、社会的孤立のリスク上昇につながることがわかったそうです。差別を経験した高齢の中国系アメリカ人は、自殺を考える可能性が2倍高いことも報告されています。

日本で生まれた相手に「日本語が上手ですね」と言ったり、「あなた〇〇人のわりにはちゃんとしている」などと、その人の人種をけなすような言い方は、ゼノフォビア的です。

価値観や習慣が違う相手が嫌だなと感じることも誰にでもあります。別に好きにならなくてもいいから、相手の権利を認めレスペクトする。それが多様な社会のあるべき姿です。

(シェリーめぐみ/ジャーナリスト、ミレニアル・Z世代評論家)

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