障害者アートを発信 長崎県立大3年・古川さん 休学し、レンタル事業始動 賃金増へ信念貫く

レンタルできる作品の一部。100枚以上のストックがある(本人提供)

 障害がある人が描いた絵のレンタル事業を立ち上げた、長崎県佐世保市の大学生がいる。県立大経営学部3年の古川友稀さん(22)。4月から休学し事業を本格的に始動させた。社名の「SigPArt(シグパラート)」は「シグナル」「パラ」「アート」を組み合わせた造語。「障害者のアートを発信する」という決意を込めた。
 事業は企業や個人を対象に、月額1万円からのサブスクリプション(定額利用)で事業所に飾る絵やデジタルサイネージ(電子看板)を貸し出す。描いた障害者が定期収入を得られるようにとレンタル方式を選択。SDGs(持続可能な開発目標)に関心のある企業をターゲットに据える。
 障害者の描く絵については大阪にある2カ所のB型作業所と提携し、現在数百点を用意。佐世保市にある事業所とも調整している。1月に会社を設立。4月から営業活動をスタートさせたが、契約に至った例はまだない。「うまくいくか分からないけれど、障害者の賃金を増やすという信念を曲げずにやり遂げたい」と語る。
 大阪府出身。起業家の父の影響で、ぼんやりと社長になりたいと考えていた。事業を着想したきっかけの一つは、高校3年の夏。テレビ番組で就労継続支援B型事業所の平均工賃が時給換算で150円程度と知り、強く印象に残った。

障害者の描く絵のレンタルサービスを始めた古川さん

 大学進学後、グループホームでアルバイトを始め、障害者と接する機会が増えた。同大の起業サークルにも参加。ある日、美術館で障害者アートの展示を見て事業の構想が固まった。
 1年生を終える頃、同年代4人で事業化へ動き出した。ビジネスコンテストに参加したり、交流のあった社会人に相談したりしたが、最終的に3人は熱量の違いや就活のため離れていき「つらかった」と振り返る。現在は他大学の学生と2人で運営に当たる。
 今月初め、以前から事業の相談をしていた佐世保市のタクシー会社「ブルーキャブグループ」の円田真代表(41)と面談。「会社の存在意義をもっとつくらなければ」と厳しい助言を受けたが、「ブルーキャブ」をテーマにした新作を条件に、数枚の絵を購入してもらえることになった。
 助言を踏まえ古川さんは今後、購入プランも導入する方針。「障害者の賃金や働き方の問題はこの事業だけでは解決できないが、多くの企業と思いを共有したい」と県内外を駆け回る。

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