インタビュー:金利も市場機能働く本来の姿に=金融政策で加藤元官房長官

Yoshifumi Takemoto Makiko Yamazaki

[東京 13日 ロイター] - 官房長官や厚生労働相などを歴任し、首相候補にも名前が挙がる自民党の加藤勝信衆院議員はロイターとのインタビューで、物価や賃金が上昇し始めた中で金利の動きも市場に委ねるのが「本来の姿」と述べ、日銀が利上げなど金融政策の正常化を進めるのは自然との考えを示した。一方、足元の経済は「強くない」と述べ、タイミングは慎重に探るべきとした。

加藤元官房長官は「物価も賃金も動かない時代から動く時代にシフトしており、金融政策も金利が動き、市場機能の働く本来の姿になっていく流れ」と述べた。34年ぶりの水準で推移する為替の円安が物価上昇を招き、消費に悪影響を及ぼす懸念が広がる中、日銀が金融政策の正常化を進めることに理解を示した格好だ。

加藤氏は足元の為替について「円安過ぎるかどうかよりも、円安が物価に与える影響を注視している。国民は明らかにこの2年間の物価上昇に苦しんでいる」と述べた。

ただ、追加利上げは経済状況を見極めて判断すべきと指摘。「実際に金利を引き上げるに当たっては、決して強くない足元の経済、特に消費をどのように見るかが重要」と語った。

日銀は3月の金融政策決定会合で17年ぶりに利上げを決めた。4月の会合では政策金利を据え置いたが、円安によって基調的な物価上昇の上振れが続けば「正常化のペースが速まる可能性は十分にある」など追加利上げに前向きな意見が複数出ていた。

加藤元官房長官は円安の要因について、日米の金利差とともに日本経済の構造問題を挙げた。「日本の経常収支は黒字だが貿易収支は赤字。貿易はかなりがドル決済。ここ数十年製造業が海外移転し、円安で日本から商品の輸出大幅に増えるということがなくなった」と述べた。

長期的な対応として「国内に投資を呼び込み日本経済を強くする必要がある」と指摘。「人手不足の中、デジタル化や省力化、効率化、生産性の向上を図るとともに、労働移動とリスキリングなどで付加価値の高い職に労働移動が進むように政策的に進めていく必要がある」と語った。

円安・物価高は安倍晋三政権の進めた大規模な金融緩和を軸にしたアベノミクスに起因するとの見方があることに対しては、民主党政権で「円高が放置される中で、製造業の国内空洞化が加速した」と反論。「過去2年間の急激な物価上昇は、ウクライナ戦争後の世界的なエネルギー価格上昇などが主な要因」と分析した。

岸田文雄政権が目指しているデフレからの完全脱却宣言については、「宣言ががないと金融政策を変更できないということはないが、経済の現状認識を通じて金融政策(運営)とリンクはしている」と述べ、経済の好循環が実現すれば、いずれ宣言も可能になるとの見解を示した。

*インタビューは10日に実施しました。

© ロイター