印総選挙、6月4日一斉開票

中村悦二(フリージャーナリスト)

【まとめ】

・世界最大規模のインド総選挙、6月4日投開票。

・現首相モディ氏が圧倒的な支持を得ている。

・対中絡みで、米はインドを重視せざるを得ない。

世界最大の総選挙」といわれるインドの総選挙の投票結果が6月4日に一斉に開票される。有権者数(18歳以上)は日本の人口の7倍近い9億7000万人弱。インド人民党(BJP)を与党とし、2014年から首相を務めている73歳のナレンドラ・モディ首相の手腕が向こう5年間も信認されそうというのがもっぱらの予想だ。

その場合、モディ政権は3期目に突入することになる。一方、最大野党のインド国民会議派(INC)を中核とする野党連合のI.N.D.I.A.(インド国家開発包括同盟)は首相候補を選べないなど混乱状況にあるとされる(図1参照)。

▲図1

■ インドの総選挙の仕組み

インドの議会制度は、上院と下院による二院制で、下院は日本の衆議院に相当し、定数は545議席。小選挙区制で最大得票を得た候補者一人が当選となる。投票で選出される543議席に加え、大統領によって2議席が指名される。

上院は日本の参議院に相当。各州および連邦直轄領の代表の集まりという位置づけだ。地方議会議員数に基づき、比例制などの間接選挙によって選出される。

投票は地域ごとに別々に行われる。今回の下院議員選挙は4月19日-6月1日に7回に分けて投票があり、開票は前述のように6月4日に一斉に行われる。

投票は電子投票機を使って行われる。字が読めない人向けにBJPは「ハスの花」、INCは「手のひら」などといったマークで識別する方法も採られている。85歳以上の有権者や一定の障害のある場合は郵便投票も可能だ。

■ 情勢-モディ氏が圧倒的

現首相のナレンドラ・モディ氏およびBJPが圧倒的な支持を得ていると見られている。

同氏が2014年に初めて首相に就任した選挙では、経済発展と汚職撲滅を公約に掲げて過半数を占め、勝利した。

モディ氏は1期目の2019年の選挙では、同年2月に行ったパキスタン支配地域への空爆、小規模農家に対する補助金支給、低所得者に対する大幅な減税や医療費保証の導入といった農民層と低所得者層に寄り添った政策を打ち出し、大勝した。

モディ氏はその際、「ヒンドゥー・ナショナリズム」を前面に押し出した。この時の投票率は過去最高の67%を記録した。

■ モディ氏の来歴

モディ氏は西部グジャラート州の出身。鉄道駅などで「チャイ」と呼ばれる紅茶を売る貧しい家庭で育ったといわれる。

2001年から13年間、グジャラート州の州首相を務め、電力や道路などインフラ整備に努め、内外企業の誘致に取り組んだ。

米国はグジャラート州首相だったモディ氏に対し、イスラム教徒の虐殺を黙認したとして、査証(ビザ)発給を2005年から拒否していたが、モディ氏はインド首相として、2014年9月に国賓として米国に招かれた。近年では、対中絡みや世界経済におけるインドの存在感の拡大で、米国は一層、インドを重視せざるを得なくなっているようだ。

トップ写真:選挙集会で演説するナレンドラ・モディ首相(2024年4月14日インド・マイスル)出典:Abhishek Chinnappa/Getty Images

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