広瀬アリス『366日』、“原作曲” とのズレに違和感あったが…今期ドラマ「記憶喪失」だらけでも名作になりそうな予感

広瀬アリスと眞栄田郷敦

HYの代表曲「366日」から着想を得たオリジナルラブストーリーと謳っていたわりに、曲の歌詞とあまりリンクしない展開が続いていたため、ずっと違和感があった。だが、中盤回に来て “そういうことか” とようやく腑に落ちた。

先週の5月6日(月)に第5話まで放送されている広瀬アリス主演の月9ドラマ『366日』(フジテレビ系)。

同級生の明日香(広瀬)と遥斗(眞栄田郷敦)は、高校時代ひそかに想い合っていたが、当時は恋が実らず。そして初めて出会ってから12年後、28歳になって再会した2人はようやく恋人同士に。

だが第1話のラストで急転。幸せ絶頂の初デートの日、待ち合わせ場所に向かう途中で遥斗が転落事故にあってしまい、意識不明の重体に。第2話から意識が戻らないまま物語が進み、第4話のラストでようやく目を覚ましたが、なんと記憶喪失になっていた。

第5話で、明日香や家族、友達が遥斗に寄り添ったことで記憶は回復傾向。今夜放送の第6話の予告によると、遥斗は中学生までの記憶は戻り、家族や幼馴染みのことは思い出すようだ。

しかし、肝心の明日香のことは忘れたままという、切ない展開になる模様。

■物語を「366日」の歌詞とシンクロさせる方法とは?

冒頭で説明したとおり、HYの代表曲「366日」を原作的に扱った作品になっており、公式サイトには《楽曲とドラマのこれ以上ないシンクロにご期待ください!》と記されている。

HYの「366日」は、端的に説明すると、元恋人にこっぴどくフラれてしまう失恋ソング。歌詞には、両想いだった相手がまた自分を好きになるなんて叶いもしない願いといったことや、とうとう相手から会うことも拒否されるといったことが綴られている。

実は、そういった部分に大きな違和感があったのだ。

誠実でやさしい好青年である遥斗が、明日香のことを残酷に拒絶して、絶望の淵に叩き落とすだろうか? 歌詞をなぞる物語にするためには、遥斗が相当なクズ野郎に成り下がらないかぎり、難しいのではないか? と。

しかし、第5話を観ていて、2つの要素から楽曲とシンクロさせる筋道が浮かび上がってきた。

ひとつめの要素は、遥斗が明日香のことを忘れてしまっており、関係値がリセットされていること。

もうひとつの要素は、遥斗を担当する看護師の女性がフィーチャーされていること。その看護師はたびたび遥斗を特別視しているような素振りを見せていたが、第5話ラストで高校時代から彼に片想いしていたことが示唆されたのである。

この “点” と “点” を結びつけると、今後のストーリーの予想ができるだろう。

遥斗が明日香のことを思い出せないまま、献身的にそばにいてくれる看護師に惹かれ、恋仲になってしまう。そして、その新しい彼女のせいで明日香はフラれ、拒まれるようになる――という展開。

それならば「366日」の歌詞とシンクロさせられるわけだ。

■フジの “ドラマ二階建て” 枠の両方で記憶喪失キャラ

本作は、なにかとケチがつけられているドラマでもある。

第1話は、前クールの月9ドラマ『君が心をくれたから』に展開が酷似しているとの指摘が相次いだ。確かに、『君が心をくれたから』も高校時代に想い合っていた男性と久しぶりに再会するも、彼が交通事故にあい、瀕死になったところで第1話が終了していた。

また今クールのドラマは、主要キャラが記憶喪失という設定がカブりまくっている。『くるり~誰が私と恋をした?~』(TBS系)の主人公や、『9ボーダー』(TBS系)の主人公の恋人も記憶喪失。

ここまでは他局だからいいが、なんと『366日』のすぐ次の時間帯で放送されている『アンメット ある脳外科医の日記』の主人公も、記憶喪失となっている。“ドラマ二階建て” 枠の両作で主要キャラが記憶喪失というのは前代未聞で、あまりにアイデアが枯渇しすぎではないかと心配にもなる。

――フジテレビの看板枠である月9の作品は、毎度よくも悪くも大きな注目を集めるので、ツッコミや酷評をされがち。だが、『366日』はそんな逆風にあらがい、名作になりそうな予感もする。今夜放送の第6話以降の後半戦に期待したい。

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