NTT、2023年度通期決算は過去最高 新会社設立で海外展開も加速

NTTは5月10日、2023年度の通期決算を発表した。売上高は前年同期比1.8%増の13兆3746億円、営業利益は前年同期比5.1%増の1兆9229億円と、増収増益となった。

2023年度は増収増益、2024年度は減益見込むも成長分野へ積極投資

同日に実施された決算説明会に登壇した代表取締役社長の島田明氏によると、営業収益は電力事業を手掛けるエネットの電力調達価格の高騰によって減益となった一方で、NTTドコモを中心とした総合ICT事業と、NTTデータを中心としたグローバル・ソリューション事業が伸び、売上高、営業利益、当期利益はいずれも過去最高を更新したとのこと。

さらに、島田氏は2024年度の業績予想も公表した。売上高は854億円の増収、営業利益、当期利益は対前年から減益の見込み。2024年度は2027年度の中期目標の達成に向けた各施策を展開していく予定で、地域通信事業などでいったんは減益となるものの、成長分野の拡大とコスト構造改革に取り組んでいくとした。

続いて島田氏は、新会社「NTTドコモ・グローバル」と「NTTプレシジョンメディシン」の設立、CCXO(Chief Customer Experience Officer)とCAIO(Chief Artificial Intelligence Officer)の任命、2040ネットゼロの実現、IOWNの海外ビジネス展開に向けた取り組み、株主数の状況、中期経営戦略の進捗と、7つのトピックについて語った。

NTTドコモ・グローバルとNTTプレシジョンメディシンは、7月に設立予定。NTTドコモ・グローバルは、ドコモグループにおいてグローバル事業を統括し、事業横断で総合的かつ機動的にグローバル事業を推進する新会社で、Web3などのアプリケーションサービスの海外展開や、海外通信キャリアに向けたOpen RANの導入支援を軸に事業を展開する。また、NTTプレシジョンメディシンは、医療機関などとの連携を通じてメディカル・ヘルスケアデータの生成と収集を行い、製薬企業や研究機関などへのデータ流通の加速により、次世代の予防や治療法の研究開発を支援するとした。

さらに、CX強化に向けたCCXOの任命と、AIファーストを推進するために2名のCAIOを新たに任命する。2040ネットゼロの実現については、2040年のカーボンニュートラルに向けて、温室効果ガスの排出量を計画以上に削減できているとした。

IOWNの海外ビジネス展開に向けた取り組みとしては、4月10~11日にサンフランシスコにて「Upgrade2024」を開催し、グローバルにおけるIOWNの社会実装に向け、APNや「tsuzumi」などの研究開発成果や製品開発を提案したと発表。ほか、株主数が株式分割前に比べ186万人と倍増したこと、中期経営戦略の進捗についても「順調に進んでいる」とコメントした。

また、新代表取締役に就任する、前田義晃氏(NTTドコモ)、小島克重氏(NTTコミュニケーションズ)、佐々木裕氏(NTTデータ)に関しては、3人とも50代と若く、新しい世代に次の戦略を構築してもらうことを期待していると語った。

NTT法の議論をめぐっては、「それぞれの立場の方々が、保守的なスタンスで議論を進めているように思える。どうあるべきかは公正競争や経済安全保障に関する議論も含まれるが、利用者の利便性を考慮した議論が求められている」と述べた。

法人事業とスマートライフ事業で成長のドコモ、2024年度は海外展開を加速

一方、NTTの主要子会社であるドコモの2023年度通期決算も発表。売上高が前年度比1.3%増の6兆1400億円、営業利益が前年度比4.6%増の1兆1444億円と、増収増益を達成した。

同日の決算説明会に登壇したドコモ代表取締役社長である井伊基之氏によると、法人事業とスマートライフ事業は着実に成長しているが、携帯電話を主体としたコンシューマ通信事業は売上高、営業利益共にほぼ前年並みとなった。増減要因として、法人事業の大企業向けの統合ソリューション、スマートライフ事業の金融・決済やマーケティング関連事業が成長している一方、コンシューマ通信事業のサービス収入が減収となったという。

また、「dポイント」会員については1億会員を突破し、クレジットカードとQRコード決済の利用による金融決済取扱高は13兆円まで拡大。「dカードGOLD」は1000万契約を突破し、GOLD比率が6割に達したことで、収益拡大に貢献したと述べた。

2024年度に関しては、ユーザーのニーズに合わせたサービスをミックスすることで、ドコモ回線以外のキャリアユーザーの流入を含む顧客基盤の拡大を実現していくほか、アマゾンジャパンとの協業により、両社の強みを活かしながら生活に寄り添うポイントプログラムを提供していくという。

また、エンターテインメント領域では映像サービスの「Lemino」と「dアニメストア」のコンテンツをさらに充実させ、投資の領域では「dカード」やdポイントをマネックス証券のサービスと組み合わせて、利用しやすくしていく。さらにマーケティングソリューションの取り組みとして、コンビニ、ドラッグストア、飲食チェーンなどの加盟店を今後も拡大し、魅力ある経済圏を構築していくとした。7月にはコンシューマサービスカンパニーを設立し、コンシューマ向け組織を集約することで、ユーザー体験の向上や、事業運営の効率化を図っていく。

法人向けの取り組みとしては、tsuzumiの活用や「docomo business プライベート5G」による通信環境のコンサル提供を開始。また中堅・中小企業向けの取り組みとして、地域の課題解決支援を行っていく。ほか、ネットワークのレジリエンス強化、ネットワークアセットの収益化にも取り組んでいくとし、NTTドコモ・グローバルの設立によって、海外展開を加速させていくとした。

井伊氏は、2024年度の業績予想も発表。売上高は1040億円の増収の6兆2440円、営業利益は256億円増益の1兆1700億円を見込む。2023年度に続いて増収増益を目指すと述べた。

NTTグループ 2023年度 決算について

NTTドコモ 2023年度決算および2024年度業績予想について

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