ロシア軍、ハルキウ州の5村を制圧と発表 簡単に越境許したとウクライナ司令官が証言

ウクライナ北東部ハルキウ州への越境攻撃を仕掛けたロシアは、国境沿いの町ヴォヴチャンスク近郊の五つの村を制圧したと、11日に発表した。ウクライナ軍偵察部隊の司令官は、同軍の防衛線が存在せず、ロシア部隊が容易に国境を越えて侵入したとBBCに話した。

ハルキウ州の5村を占拠したというロシア軍の11日の発表について、BBCは正確なのか確認できていない。

ロシア軍の10日の急襲以降、ハルキウ州の国境地帯では激しい戦闘が続いている。

同州のオレフ・シニエフボフ知事は、住民1775人が避難したとソーシャルメディアで説明した。国境から約6キロメートルのヴォヴチャンスクには数百人が残っているという。

ウクライナ軍特殊偵察部隊のデニス・ヤロスラフスキー指揮官は、「防衛の第1線がなかった。この目で見た。ロシア軍はただ歩いて入ってきた。地雷原もない場所を歩いて入ってきた」と、ハルキウ州の公園でBBCに話した。

同指揮官がBBCに見せた、ドローン(無人機)で数日前に撮影したという映像には、ロシア軍の小隊が何の抵抗も受けずに歩いて国境を越えている様子が写っていた。

同指揮官によると、当局は巨額を費やして防衛を固めているとしていたが、そうしたものはなかったという。「怠慢か腐敗のどちらかだ。失敗ではなかった。裏切りだった」。

今回の越境攻撃は、以前から可能性が高いとみられていた。ウクライナと西側の両方の情報機関は、ロシアが国境付近で兵士3万人規模の増強をしていることをつかんでいた。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領も、同国をウクライナの砲撃から守るため、ハルキウ州の内部に緩衝地帯を設けると公言していた。

ウクライナ当局は否定するが、攻撃への備えが不十分だったとみられる。

ヤロスラフスキー指揮官は、部下らとともに1時間以内にヴォヴチャンスク近くの前線に戻ると話した。ロシア軍はすでに同町の端まで部隊を進めたと報じられている。

同指揮官の部隊は2022年秋にハルキウ州でロシア軍と戦い、ロシア軍を国境まで押し戻した。ところがいま、ヴォヴチャンスクが再びロシアの手に渡ることを懸念している。そして、彼の部隊がまた同じ戦闘を繰り返さなくてはならないかもしれないと、いら立ちを示した。

地元の警官の見方では、ヴォヴチャンスクには1時間に50~60発のロシアの砲弾が撃ち込まれている。また、前線から数十キロ離れたロシアの戦闘機から滑空爆弾も発射されているという。

ロシアによる侵攻前は、ヴォヴチャンスクの人口は約2万人だった。侵攻が始まると多くが避難し、約3000人に減少。ここ数日でさらに数百人が去っている。

(英語記事 Ukraine: Hundreds flee Kharkiv area after Russian cross-border attackThe Russians simply walked in, Ukrainian troops in Kharkiv tell BBC

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