歩いて食と文化を満喫! 波佐見でガストロノミーウォーキング 町挙げたおもてなしに満足 長崎

町婦人会メンバー(左)からイノシシ肉のメンチカツと缶ビールを受け取る参加者=波佐見町田ノ頭郷

 地域の食や文化、温泉を楽しむウオーキング大会「ONSEN(オンセン)・ガストロノミーウォーキング」。「めぐる、たべる、つかる」が合言葉で、開催する地域は増えつつある。長崎県東彼波佐見町の大会は2019年から町や町観光協会などでつくる実行委が開き、22年度には全国の大会の中で最高賞の「グランプリ」に輝いた。今年3月末に開かれた第6回大会に記者が参加し、歩きながら地域の魅力を満喫した。
 ガストロノミーとはフランス語で「美食学・美食術」の意味。ウオーキング大会は、ANA総合研究所(東京都)などでつくる「ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構」が提唱し、16年に大分県別府市で初めて開かれた。開催地は17年度の17カ所から、23年度は40カ所に増えた。
 今年の波佐見大会の参加費は4千円。記者を含め約300人がエントリーした。美肌の湯「はさみ温泉」の近くにある町立波佐見南小を発着する約11キロのコース。道中には地元の食やスイーツ、地酒「六十餘洲(ろくじゅうよしゅう)」などを振る舞うポイントが九つある。町民約150人が運営や交通整理などで大会を支えた。
 スタートから約10分後、最初のポイントの鴻ノ巣公園へ到着した。地元産のイチゴを頬張ると、参加賞としてもらった波佐見焼のぐい飲みに純米酒が注がれた。イチゴと酒の味が溶け合い、早くもほろ酔い気分に。
 約3キロ地点の第3ポイントでは、波佐見町婦人会が作った揚げたての「イノシシ肉メンチカツ」が缶ビールと一緒に渡された。清水栄子会長(71)は「カツはどこで売っているのかとよく聞かれますが、このイベントの限定品です」。
 約9キロ地点の第7ポイントで味わった「煮ごみまんじゅう」も県立波佐見高家庭部による創作料理。筑前煮に似た郷土料理「煮ごみ」を、プルプルした米粉の皮で包んで蒸した一品だ。「波佐見茶」の香りと共に楽しんだ。

酒蔵などが軒を連ねる宿郷を歩く参加者ら=波佐見町、今里酒造前

 ほかにもアスパラベーコン、アイスクリーム、ちゃんぽん、はさみ寿司(ずし)、窯だしピッツァなどが振る舞われた。スタートから3時間半後、長崎和牛の焼き肉で食べ納め。手間ひまかけた料理も多く、昨年の参加者アンケートでは96%が「料理に満足」と答えた。
 酒蔵やレトロな銀行跡が軒を連ねる宿地区をはじめ、歩きながら町の歴史や文化に触れた。川棚川沿いに約5キロ、600本の桜が連なる「桜づつみロード」では、咲き始めの花を見上げながら進んだ。
 ゴールでは町観光協会長の松下和徳さん(64)が迎えてくれた。松下さんは6年前、熊本県阿蘇市の大会に町職員と参加した際、花が満開のソバ畑に歓声を上げる参加者の姿を見た。「私たちには当たり前の景色でも町外の人には特別に映る」と思い、桜の季節の開催を決意したという。
 初参加した熊本市の会社員、中尾奏美さんに感想を聞くと「さまざまな人に声をかけてもらい、町を挙げてのもてなしがうれしかった」と満足そうだった。
 ウオーキングの後、はさみ温泉につかると疲れも吹き飛んだ。大会で消費したカロリーは1036キロカロリー。大会で飲食した合計カロリーには程遠い。「晩ご飯は控えめにしよう」と思いながらも、温かいもてなしとグルメに大満足の一日だった。

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