『366日』プロデューサーが明かす広瀬アリス&眞栄田郷敦の役者魂「“ト書きの1つも漏らさずやるぞ”という気迫」

現在放送中の、広瀬アリスさん主演月9ドラマ『366日』のプロデューサーが、撮影の裏側や、話題のエンディング曲の企画について明かしました。

【写真11枚】広瀬アリスと眞栄田郷敦の切ない表情が光る…ドラマ『366日』を写真で振り返り!

本作は、HYの名曲『366日』から着想を得たオリジナルラブストーリー。高校時代に実らなかった恋をかなえようと再び動き出した雪平明日香(広瀬)と同級生・水野遥斗(眞栄田郷敦)が、12年越しに交際。予期せぬ悲劇に直面しながらも愛する人を思い続ける2人の姿が描かれます。

本作のプロデューサーである狩野雄太(フジテレビドラマ・映画制作部)に、ドラマ制作の裏話や、キャストの印象、ラブストーリーを作る際の面白さについて聞きました。

『366日』歌詞のあの部分が物語に?なぜ茨城県龍ケ崎市が舞台?

――放送後の反響はいかがですか?

恐れ多くもたくさんの反響をいただいており、ありがたいです。特に業界関係者の方から「見たよ」とご連絡をいただくことが多く、これまで手がけてきた作品のなかで一番かもしれません。外を歩いていても『366日』について話す声が聞こえてきて、大勢の方が見てくださっていることに驚いています。

――世の中に“恋の歌”は数多ありますが、なぜ今、16年前にリリースされた『366日』をモチーフに選んだのでしょう。

正直に言うとたまたまです。もともと僕自身がこの曲をとても好きで、去年の初めくらいに川崎鷹也さんと(HYの)仲宗根泉さんが歌っている映像を偶然見て「やっぱりいい曲だな」と思って。

その頃、ちょうど連ドラの企画を考えていて、「そういえばフジテレビ系列では昔、『天体観測』(2002年)のように楽曲がタイトルになっているドラマがあったけど、最近ないな…」と気づいたこともあり、この企画を考え始めました。

それともう一つ、僕は今年40歳になるんですが、『366日』はちょうど自分が入社した当時大ヒットしていた曲だったので、より思い出に残っているというのも理由です。

――『366日』の楽曲から、ドラマに具体的に取り入れている歌詞はありますか?

各話、歌詞を部分的に拾いながら作っています。たとえば第2話で明日香は、ようやく両思いになった遥斗が事故で意識を失うという現実に直面しますが、「それでもいいと思える恋」ってどんな恋だろうとか。第4話では下田莉子(長濱ねる)が彼氏と別れましたが「苦しい恋」ってどれほどだろう、とか。

全体としては、HYの皆さんがこの楽曲に込めたテーマ「大切な人を強く思い続ける気持ち」から発展して、“明日香が遥斗をどれだけ強く思い続けるか”を軸にストーリーを組み立てています。

――物語の時間軸を、高校時代と現在にフォーカスしたのはなぜですか?

最初は、高校時代から大学時代、そして現在に至る12年間の物語にしようと思いましたが、登場人物が大幅に増えて、視聴者の皆さんも感情が乗り切れないまま話が進んでしまうのではと考え、高校時代と現在に絞りました。

高校時代の舞台を茨城県龍ケ崎市にしたのは、僕自身が高校時代に何度か訪れたことがあったからです。個人的な思い出や、こういう青春だったらいいなという理想を乗せています。当初は広島にする案もありましたが、1クール前の月9ドラマ『君が心をくれたから』の舞台が長崎県だったので、関東圏にしました。

ほかにも、『366日』ということで、うるう年の2012年2月29日を調べたら、 東京スカイツリーの竣工日がまさにこの日だったので、第1話の高校時代の会話や、現在の明日香と遥斗の初デート先にスカイツリーを取り入れてみました。

――ちょっとした偶然や思い出が、このドラマを彩っているのですね。

そうですね。それから、ラブストーリーを作るうえで面白いなと思うのは、作品に参加する人たちの体験談がリアルに出てくるところ。

たとえば第1話で、 明日香と遥斗が手をつないだまま、青信号になっても横断歩道で横断歩道を渡らずキスをするシーンが出てきます。映画『花束みたいな恋をした』(2021年)にも似たような場面があるので、シチュエーションを変えるか変えないか話し合ったんです。でも皆で「信号待ちでキスしたことあるよね!?」って盛り上がって(笑)、信号待ちキスは“恋愛あるある”だろうという結論にいたって残しました。

綱啓永の“泣き芝居”の素晴らしさに、監督はあえて…

――メインキャスト5人の、撮影現場での印象を教えてください。

皆さんすごく真剣に考えながらお芝居をしてくださって、“ト書きの1つも漏らさずやるぞ”というような気迫を感じます。いい意味で話しかけにくい雰囲気の時もあるほど、本気で挑んでくださっています。

広瀬さんは制作発表会見のときに、「(僕の)“結婚、恋愛をしなくても幸せになれる時代に、真っすぐに人を愛し続けるというのは、どういうことか”という言葉に惹かれた」と言ってくださったのが印象的です。広瀬さんがこの作品をとても真剣に考えてくださっていることを感じて、感銘を受けました。現場ではよく、『366日』を聴きながら明日香の気持ちを作っている姿を見かけます。

眞栄田さんはもう台本を読み込んで、読み込んで、目線1つにもしっかり意味を持たせて、遥斗を深く理解して演じてくださっています。

小川智也役の坂東(龍汰)さんはいつも明るいので、明るく元気な性格の智也は素に近いのかなと感じています。その一方で、本番では“締めるところは締める”お芝居を見せてくださっています。

長濱さんは、自分の演技はこれでいいのだろうかと常に考えていて、この撮影期間中にお芝居がどんどん進化しているような気がします。最初にお会いしたときと比べて、顔つきが違うように感じます。

吉幡和樹役の綱(啓永)さんは、特に第3話の終盤で見せた、眠っている遥斗を前にして泣くお芝居に圧倒されました。実はこの時たまたま、脚本家の清水友佳子さんも現場にいらしていたので、、冗談半分で「綱くんにかかってるからね」って、プレッシャーをさらにかけたら、今までみたことない綱さんの本気の表情が垣間見えました。

――あのシーンは大きな反響がありましたね。

あれ実は、頭から終わりまで一連で5回も撮ったんですよ。しかも平川雄一朗監督が、編集であえてカットを割らずに使ってくれました。それはやっぱり、綱さんのお芝居が素晴らしかったから。ある意味、お芝居が勝ったっていうことですよね。撮影後の綱さんは魂が抜けたかのように疲れ果てていましたが、真面目で素晴らしい俳優さんだなという印象がさらに強くなりました。

『366日』仲宗根泉×男性アーティストコラボ企画の誕生秘話

――SNSでは、ファンの皆さんからいろいろと質問が挙がっています。たとえば、和樹が高校時代に撮影した桜の写真「No.3」は、どのように用意したのですか?

あれは、第3話で遥斗と和樹がランニングをサボって雑談していた高校のプールで、あのロケ場所から実際に撮影しました。桜は合成でしたが…(汗)、撮ったのは確か、このドラマの助監督です。予想を超える素晴らしい仕上がりで、驚きました。

――毎話エンディングで、主題歌『366日』をHY・中曽根さんとさまざまな男性アーティストがデュエットで披露しています。この企画が生まれた経緯を教えてください。

HYの事務所の社長さんが、ドラマの脚本を読んで「男女の物語だから、『366日』男女デュエットバージョンを作るのはどうか」と提案してくださったんです。毎回のオンエアでアーティストが解禁されたら「今週はこの人が歌ったんだ!」という驚きがあり、リアルタイムで見るテレビとしても面白いですよねという話になり、いろいろなアーティストの方にお声がけさせていただきました。

レコード会社の垣根を超えて、素敵な方々がお引き受けくださっています。多くの方が知っている偉大な楽曲であり、アーティストの皆さまにもこの楽曲に思いを載せてくださっているのかなと思っています。

――最後に、ドラマ後半の見どころをお願いします。

明日香と、高次脳機能障害を抱えた遥斗が、まっさらな状態からもう一度恋をやり直していく様子が描かれます。前半よりラブストーリーらしさが増して、2人の恋が二転三転していきます。周りのキャラクターたちにもまだまだいろいろな転機が訪れるので、後半もぜひご注目ください。

© 株式会社フジテレビジョン