海外富裕層に買い漁られる前に…「日本の不動産」を“日本人”が所有すべき理由【不動産売買のプロが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

今、海外投資家の間で「日本の不動産」に注目が集まっています。海外の富裕層が日本の不動産を買い漁っているのです。『御社の新しい収益基盤を構築する 区分オフィスビル投資術』(ビジネス教育出版社)の著者である〈青木龍氏〉は、この現状に大きな問題が潜んでいると言います。ここでは著書より一部抜粋し、日本の不動産の現状について解説します。

頭金1,200万円の事例で見る区分所有の可能性

まずは1つ、オフィスビルの区分所有で成功したクライアントの事例をご紹介しましょう。E社はもともと自社使用の目的で購入しましたが、融資のしやすさや将来性も含めて、未来への可能性があると考えました。

具体的には、東京・山手線内の築30年のビルを6,000万円の物件です。規模としては1フロアで15坪と小さめですが、自社使用が目的だったので問題ありません。頭金は1,200万円。銀行融資が4,800万円も引けたので、4倍のレバレッジが利いたことになります。

ちなみに、「自社で使う」という名目は銀行融資がおりやすい側面があります。仮にそのビルにテナントが入っていたとしても「今のテナントが抜けたら自社で使いたい」という打診ができれば、それだけ銀行融資はおりやすくなります。

ここで知っていただきたいのは、「ローンを組んで返済するのも、テナントとして借りて賃料を払うのも、お金を払うという意味では同じ」ということです。ただし、1つ異なる部分があります。それは出ていくお金の「性質」が違います。

この物件をE社が賃貸で借りる場合、そのお金は所有者にお金をあげ続けることになります。つまり、他人の貯金箱にお金を入れてあげる行為です。一方、購入した場合は「自分の貯金箱」にお金を入れ続ける行為になります。

具体的に見てみましょう。この事例の物件の賃料は坪当たり1万5,000円でした。15坪で約23万円が毎月の賃料になります。賃貸の場合は所有者に対して23万円を毎月払い続けます。購入した場合は、融資の額によって返済額は変わりますが、仮に同額の23万円としても、それは「自分の資産」に対しての支払いなので、結局は自分の貯金箱になります。

この考え方をさらに発展させていきます。物件を購入し、仮にローンを20年で組んだ場合、10年経った時点では返済の半分が終わっていることになります。4,800万円のうち2,400万円は支払いが完了しているわけです。

もし、この時点で買ったときと同じ6,000万円で売却できたとしたら、頭金の1,200万円も含めて3,600万円が返ってくることになります。つまり、購入した場合は10年後でも会社にキャッシュが残るのです。

同じお金で他人の懐を温めるのか、自分の懐を温めるのか――こう考えるとおのずと答えは出ると思います。E社はこの認識もあって自社使用で区分所有に踏み切りました。

現在、この会社は自社使用で着々と資産を構築しています。もし数年後にこのクライアントの業績が良くなって手狭になり、事務所を移転することになったとしても、今度はこの物件が「貸事務所」として機能します。

今までお金を自分で自分の貯金箱に入れていたものを、今度は他人が自分の貯金箱に入れてくれることになるわけです。さらに、この物件の周辺相場の賃料は坪2万円ほどなので、売却時には7,000万~9,000万円で売れる可能性が高いです。

いかがでしょうか?

このように、区分所有でも、中古のCグレードでも、少額の資金(頭金)で大きな可能性が見えるのです。

海外富裕層に買い漁られる前に日本人が不動産を所有すべき

ここで目線をマクロに――世界に向けてみましょう。『PRESIDENT Online』の2023年5月の記事に「中国人富裕層が日本の不動産を爆買いする本当の理由」というセンセーショナルなタイトルの記事が載っていました。

この記事では、日本の不動産が爆買いされる理由として、日本の不動産が割安で、さらに海外に比べて購入の制限がないことが指摘されています。今、海外投資家の中で日本の不動産に注目が集まっているのです。

まず価格については、なんと、上海のマンション1室分のお金で日本のビル一棟が買えるそうです。日本人が知らないだけで、世界はどんどんお金持ちになり、物価上昇によって日用品や飲食代だけでなく、不動産も高騰が続いています。

一方、日本では回復の兆しが見えていますが未だ経済は停滞しています。モノの値段は上がっていますが、それでも海外に比べるとその上昇は緩やかで、結果的にお金を持っている海外の富裕層や投資家からすると「割安」と考えられているのです。

さらに、もう1つの理由として、中国に限って言えばお国柄の問題もあります。『まいどなニュース』2020年12月の記事に「中国では土地が買えない。買えるのは『70年間の使用権』だけ」というものがありました。

中国では「土地は国家のもの」という決まりがあり、個人が都市部の土地を所有することはできません。市民が家を買うときは土地の使用料(土地を使う権利を得るためのお金)を払わなければいけないのです。しかも、住宅用の土地の場合は70年の期限が法律で定められています。

日本にはそのような権利の制限はありません。国籍を問わず、誰でも自由に不動産取引が行えます。さらに言ってしまえば、日本は諸外国に比べて治安も良く、清潔な水が蛇口からいくらでも出てきて、経済的に発展していて、さらに春夏秋冬を通して色々な食べ物があって味もおいしい国です。

「割安で、使用制限なし、そして治安良し」のトリプルメリットは、海外の富裕層や資産家からすれば「あり得ない状況」であり「買わない理由がない」状態と言えるのです。その価値に気づいていないのは、日本人だけかもしれません。

ですから、日本人こそ日本の不動産に対する魅力や優位性に今すぐ気づいてもらいたいのです。

日本の不動産を買うことは国防にもつながる?

かつて、日本の大衆文化の1つだった浮世絵。後世にその価値に気づいたのは日本人ではなく外国人でした。西洋絵画に大きな影響を与えた浮世絵は、1867年のパリ万博でジャポニズム・ブームが起こって以降、かなり安く輸出されてしまいました。

私は、日本の不動産も同じようなことになるのではないかと危惧しています。日本人がその価値に気づいたときにはすでになくなっている(実物の土地はあっても日本人のものではなくなっている)のではないか、とさえ思っています。

今、日本の不動産は外国人に買い漁られています。それに対して議論が巻き起こっている状況です。主な論点は安全保障上の問題で、自衛隊基地や原発のような重要施設の周辺の土地を外国人が自由に買える状況が問題視されているのです。

オフィスビル投資においては、そのような諸問題とは分けて考えていいのかもしれませんが、それでも日本の不動産が外国人に所有されてしまうことは、国益に反するものと考えることもできます。

そう考えると、日本人が日本の不動産を購入することは外国からのサイレント・インベージョン(目に見えない侵略)から日本を守ることとも言えるのではないでしょうか。つまり、国防にもつながるわけです。

最後は少し大げさな話になってしまいましたが、それでも海外のお金持ちは自国と他国を比較し、より投資として有意義なものを選択しています。ビル一棟か区分所有か、SグレードかCグレードか、新築か中古か。

あなたも経営者であり〝兼業投資家〟として、ぜひ比較・検討をしながらオフィスビル投資を考えてみてください。それが対国外、対国内において、乗り遅れない秘訣と言えるでしょう。

青木 龍

株式会社Agnostri(アグノストリ)代表取締役社長

※本記事は『御社の新しい収益基盤を構築する 区分オフィスビル投資術』(ビジネス教育出版社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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