「健常者と同じ土俵で戦える」eスポーツで障がい者の就労支援 会話増え生活リズムも改善【静岡発】

障がい者の就労支援にeスポーツを取り入れた施設がある。健常者と同じ土俵で戦えることが、導入の理由だという。eスポーツの技術を習得するコースの他、表現力や企画力を学べるコースも用意されている。受講者には講座の内容以外にもメリットがあるようだ。

技術・表現力・企画力を磨く

対戦形式でパズルゲームをする人たち。

ここは静岡県三島市にある障がい者のための就労支援施設だ。

取り入れているのは、ここ数年市場が急拡大しているeスポーツ。

なぜ障がい者の就労支援施設でeスポーツを取り入れたのだろうか?

加和太建設ONEGAME事業部の井澤賀奈代 室長は「eスポーツは健常者も障がい者も同じ土俵で戦える。全く同じ土俵じゃなくても同じフィールドの中でスポーツができるので、垣根が少なくていろいろなことにチャレンジできる環境があると思う」とeスポーツを選んだ理由を説明する。

施設はプロのコーチのもとeスポーツの技術を磨く「選手コース」、ゲーム実況で表現力を高める「実況コース」、ゲーム大会などの企画方法を学ぶ「イベントコース」があり、利用者は自分の好きな分野を選んで学ぶ。

平日午前10時から午後4時まで1回50分の講座を実施し、eスポーツを通して関連企業への就労や社会復帰を支援している。

「しゃべることができる」

選手コースの一瑳(いっさ)さんは、精神的な障がいから昼夜逆転の生活となり外に出ることも少ない状態だった。まずは生活リズムを取り戻したいと4月から通い始めた。

一瑳さんは「伊豆に住んでいるので(三島市の施設まで)電車で来ないといけない。電車で来るために朝早く起きないといけないので、生活のリズムがよくなると思う」と効果に期待する。

一瑳さんはeスポーツができることだけでなく施設に魅力に感じている。

一瑳さん:
人としゃべることができるのは最大のメリットだと思う。もう一度学校に通いたいと思っているので、まずは生活態度を改めていきたい

eスポーツ業界の就職を目指し

同じく選手コースの竹蔵さんは以前は別の就労支援施設に通っていたが、そこでの生活が合わずこの施設に移ってきた。以前は朝に体調を崩すことが多かったが施設に来てからは減ったそうだ。現在はeスポーツ業界への就職を目指している。

竹蔵さん:
(eスポーツは)いち視聴者としてずっと見ていたので、あまりそこで働くイメージはなかったが足掛かりになったらうれしい

マイクを手にする男性は実況コースを受講する千優さんだ。

実況コースはゲーム実況を行い、自分で動画を編集、動画サイトにアップしてゲームの面白さを伝える。

千優さんは「特撮映画を作っているみたい。こうやってやったらおもしろいし、カッコいいだろうと思って編集することが面白い」と話す。

利用者の表情に手応え

障がいを持った人たちが自分のペースで学べる就労施設。

担当者は利用者の状態が少しずつ良くなっていくことに、手応えを感じている。

加和太建設ONEGAME事業部・井澤賀奈代 室長:
「今までの自分が通っていた就労支援施設とは全く違う」「こんな雰囲気のところ初めてだ」ということで、(利用者の)表情が変わるんですね。 ここをまず学びの場として次に本格的に就労、一般企業への就職に繋げていきたい

健常者も障がい者も関係なくプレイできるeスポーツ。

障がい者の活躍の場を広げることが期待されている。

(テレビ静岡)

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