オー・ルージュでトヨタらを続々オーバーテイクのルーキー「完璧なレース。赤旗がチャンスを奪っただけ」プロトン大躍進

 5月11日に行われたWEC世界耐久選手権第3戦スパ・フランコルシャン6時間レースで速さと強さを見せたポルシェ963のプライベーター、プロトン・コンペティション。そのドライバーを務めるジュリアン・アンドラウアーは、自身にとってわずか3戦目のハイパーカークラス出走にも関わらず、際立ったパフォーマンスを見せた「完璧なレース」について振り返った。

■「このクルマが僕に自信を与えてくれた」

 日程が重複したIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に参戦するハリー・ティンクネルを欠くなか、アンドラウアーとニール・ジャニのコンビは、99号車でレースの多くの部分をリード。折り返しとなる3時間時点でトップを走り、その後も赤旗からのリスタート後のピットタイミングで8番手に後退するまでは、表彰台圏内を維持する走りを見せていた。

 最終的には、赤旗前に給油を済ませていた車両が大差で1〜2位を占めたこともあり、99号車ポルシェはワークス・フェラーリ499Pの2台に次ぐ5位に終わった。

 アンドラウアーは3番グリッドからスタートドライバーを務めて16周目までに首位に立っただけでなく、ケメル・ストレートで発生した事故による赤旗中断後、1時間44分で争われた決勝の終盤パートでも、チェッカーフラッグまでに3つポジションを上げている。

 特筆すべきは、アンドラウアーがアルピーヌのポール・ループ・シャタン、トヨタのブレンドン・ハートレー、そして小林可夢偉を、いずれもオー・ルージュでパスしてポジションを上げたことだ。レース序盤にキャデラックのアレックス・リンをパスしたのも、同様にスパを象徴するこのコーナーだった。

 2017年末にポルシェのジュニアドライバーとなり、WECでは2018/19シーズンからLMGTEアマクラスのデンプシー・プロトン・レーシングでGT車両を走らせてきたアンドラウアーは今年、ハイパーカークラスに参戦を始めたばかり。FIAのドライバー・レーティングでは、ゴールドにカテゴライズされている。

 フランス出身・24歳のアンドラウアーはSportscar365に対し、自分のマシンから得た自信が、失地を挽回するためにプッシュして攻撃に移る動機になったとレース後に語っている。

「良いクルマを持っていて、パフォーマンスも問題なく、良いポジションにいて、ますます自信が持てるときは、すべてが正しい方向に進む。そしてさらなるリズムを生み出し、よりリスクを冒し、いろいろなことが試せるようになるものなんだ」とアンドラウアー。

「最終的には、このクルマが僕に自信を与えてくれたので、僕は良い最終結果と、少なくとも良いパフォーマンスが得られるようにベストを尽くそうと努力した」

「残念ながら今日はそれが報われなかったけれど、戦略、全員の実行力、そしてペースなど、全体的に良いポテンシャルを示したと思う」

1999年フランス・リヨン出身のジュリアン・アンドラウアー

■トンネルの出口から差し込む光

 オープニングスティントでは、先述のとおりキャデラックのリンと、ポルシェワークスのフレデリック・マコウィッキをパスしてトップに立ったアンドラウアー。その後も後続のフェラーリ499Pとの差を15秒以上に広げたが、ターン8で起きたアクシデントによって2時間目に導入されたセーフティカーにより、リードは霧散してしまった。

 アンドラウアーはこの最初のスティントについて「僕は、ただ乗っていただけだ。クルマはいい状態だったし、レース全体を通して非常に良いパッケージがあったと思う」と振り返っている。

「僕らはレース全体を通して速かったと思うし、僕としてはスタート時点からタイヤと燃料を同時に節約して、良いリズムをもたらすことができたように感じている」

「ル・マンでも同じポテンシャルで、同じことが起こることを願っているよ」

 プロトンはレース後半に入るとフェラーリ勢の後塵を拝し、赤旗時点で3番手を走行していたが、レース再開の決定によりチームは表彰台を失った可能性が高かった。

 それにもかかわらず、アンドラウアーはスパでのプロトンのパフォーマンスを肯定的に振り返り、「完璧なレース」であったと表現した。

「僕は何も変えていない」と彼は言った。

「正直に言うと、僕らは完璧なレースをした。序盤からリードを奪い、いくらかのギャップも作ることができた」

「バーチャルセーフティカー(とその後のセーフティカー)の導入で、フェラーリとの15秒の差を失い、フェラーリの方が少し速かったため、(レースの)中盤でポジションを失った」

「だけど、僕らは少なくとも表彰台、もしかしたら勝利を目指して戦っていた。赤旗がチャンスを奪っただけだ」

「結局のところ、これがレースなんだ。今日は僕らにとって不運だが、次回はもっと幸運になることを願っているよ」

プロトン・コンペティションの99号車ポルシェ963 2024WEC第3戦スパ

 チームメイトで2016年ル・マンウイナーのジャニもプロトンのパフォーマンスに対しては肯定的な印象を持っており、チームにとっての「最初のクリーンな週末」だったと指摘している。99号車はとりわけ第2戦イモラで厳しい戦いを強いられ、ハイブリッド・モーターのトラブルによりリタイアを喫していた。

「今日は僕らが最高順位のポルシェになるはずだったけど、結局はそうはならなかった」と40歳のジャニは語った。

「僕らにとって、それはトンネルの出口から差し込む光だ。準備やすべての点でクリーンな週末を過ごせたのは初めてで、それが功を奏した」

「僕らは後続を引き離し、僕らが首位に値することを示した。ジュリアンは素晴らしい仕事をしてくれたし、僕らはできることを最大限に発揮した。物事がうまくいけば、少しゲームに加われることを示した」

「赤旗がなければ、最低でも3位だっただろう。僕らが勝てたかどうかは分からないけど、3位だったことは確かだ」

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