高校無償化「背景に税収差」 東京都と近隣3県で意見食い違い

東京と近隣3県の間で「財政格差」を巡る意見の食い違いが続いています。東京都が今年度から始めた高校の授業料の実質無償化などについて、近隣3県が、税収の格差を理由に「行政サービスの格差に繋がる」と反発しています。これに対し小池知事は、5月10日の定例会見で改めて反論しました。

小池知事:「行政サービスの違いということは、地域ごとのプライオリティ(優先順位)の問題でございます。これを財政の問題にすり替えるというのは、自治の観点からどうか」

5月10日の定例会見で反論を繰り広げた小池知事。発端となったのは、東京都が今年度から始めた高校授業料の実質無償化です。約600億円の予算をかけ、公立高校を無償化し、私立高校では授業料の助成ついて所得制限を撤廃しました。これに対し、声を上げているのが近隣の3県です。

神奈川県 黒岩知事:「都道府県間の財政状況の違いにより、福祉や教育など住んでいる場所で大きな差がつくべきではない性質の行政サービスにおいて、格差が生じていると考えている」

3県の知事がそろって懸念する「教育を含めた行政サービスの格差」。千葉県の子育て世帯はどう感じているのでしょうか。

千葉県民30代:「うらやましいと思います。なんで千葉県はしないだろうと思う。悔しいとは思わないが、不公平とは思う」

千葉県民30代:「どこに住んでいてもどこの学校に行っても、一律で同じような待遇であってほしい」

千葉県民30代:「(Q:東京へ引っ越すという考えになる?)そうですね、そういう考えの人も出るという気はする」

「格差」の原因と指摘されているのが、東京と他の自治体との「税収の差」です。

埼玉県 大野知事:「行政サービスの不均衡の背景には、消費地等に適正に税収が帰属せず、本社のある自治体に税収が集中するなど税源の偏在が存在しており、埼玉県としては強く懸念しています」

しかし、この主張に小池知事は…

小池知事:「(都の)収入面だけに着目した指摘自体が、物事の一面だけをとらえた見方だと言わざるを得ない」

小池知事は、東京には地方交付税が交付されてないことを考慮すると、人口1人あたりの都の一般財源は全国の平均水準だと説明し、近隣3県の知事の主張を真っ向から否定しています。

今月7日、3県の知事は行政サービスの格差を埋めるための財政措置を国に要望しました。

盛山文科相:「文部科学省としては教育の機会均等をはかるために、基盤として行う国の支援とそれに上乗せして行われる地方自治体の独自支援が一体となって、教育費負担の軽減が図られることが望ましいと考えている」

盛山大臣は5月10日の閣議後会見で、具体的な財政措置には言及せず、格差については「一般論としてそれぞれの自治体が独自の支援について取り組んでいくものではないか」と述べるに留めました。

国側が、自治体の取り組むべき課題だとする一方、小池知事は5月10日の会見で、近隣の県と一体となって国に求めていくべきだと改めて主張しました。

小池知事:「東京都もいろいろな施策を講じているが、国がその施策を講じるまでの間ということを申し上げている。今なすべきことはともに足並みを揃えて、国に対して子供施策の充実に向けた抜本的な見直しを求めることでございます」

近隣の県知事が国に提出した要望書の中身について見ていきます。埼玉・千葉・神奈川の3県知事は、「税収に恵まれている東京都は子どもへの月5千円の給付や、授業料無償化、給食費の無償化などさまざま施策を打ち出していて、周辺自治体との地域間格差が拡大している」「経常的な収入に対する支出の割合も東京都は全国で最も低く、自由に使える財源が潤沢なことなどから格差が生じている」と主張しています。

こうしたことから国に対し、「財政状況で格差が生じない、居住する地域にとらわれないこども施策の実現」「税源の偏りが小さい地方税体系の構築」を求めました。

そして要望署の提出後、各県知事は取材に応じまして、埼玉県の大野知事は「自由に使えるお金を人口一人当たりで割ると埼玉は6600円、東京は6万7000円で置かれた環境が違う。国に対して問題提起をした」と話し、

千葉県の熊谷知事は、「東京の足を引っ張りたいわけではない。都と同じことをやると一年の財源も持たない。やらないのではなく、やれない」とし、

神奈川県の黒岩知事は「3分の1の生徒が東京からきているクラスもある。同じクラスで支援が違うのは国のシステムがおかしい」と指摘しています。

財政力の違いから行政サービスに格差が出ているという主張ですが、一方の小池知事は次のように反論しています。

東京は都道府県で唯一、地方交付税の交付を受けておらず、一人当たりの一般財源額では都は全国平均と同じ水準だと説明しています。またその他の道府県では市町村が担っている消防や上下水道、さらに首都を守る警察に要する経費だけでも年間1兆円を超えるとして、収入面だけで「格差が生じている」という指摘はあたらないと主張しています。そして5月10日の会見でも財政状況による地域間の格差拡大という主張については「明らかな事実誤認がある」と否定しました。

© TOKYO MX