年金80万円の62歳元サラリーマン、年金機構からの「緑色の封筒」をうっかり捨てかけたが…止めてくれた娘に感謝のワケ【FPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

年金機構から届く大切な封筒を、新聞、チラシに埋もれ、思わず放置してしまっていたり、捨ててしまったりということはありませんか。本記事では小島さん(仮名/62歳)の事例とともに、年金機構から届く通知や年金制度について、FP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

チラシに埋もれていた、年金機構からの緑の通知

小島秀隆さん(仮名)は60歳で定年退職を迎え、継続雇用で関連会社で働きながら65歳の年金受給を待っています。愛娘の真奈美さん(仮名)が連れてくる孫の世話を楽しみながら過ごしていました。

62歳のある日、郵便配達員が緑色の封筒を手渡してきました。しかし、秀隆さんはその重要性に気づくことなく、封筒を空けるのを後回しにしてしまい、新聞、チラシに埋もれていたのでした。

緑色の封筒が古紙のなかに紛れ、何日も経過したころ、孫を連れてきた真奈美さんはなんとなくその封筒に目をとめます。小島さんに見せ、「なにか大事なものなんじゃないの?」と、真奈美さんは呆れた様子で小島さんに差し出したのでした。

封筒を開けると、そこには特別支給部分の老齢厚生年金の請求案内があったのでした。まだ62歳の小島さん、「おれ年金もらえるの65歳からのはずだけど……」と言いながら不思議そうに年金事務所に確認の電話をしたのでした。

特別支給部分の老齢厚生年金が受取れる?

年金事務所に連絡した小島さんは、特別支給部分の老齢厚生年金の存在について話を聴いたのでした。現在では公的年金は65歳から受給することができますが、男性の場合は昭和36年4月1日以前に生まれている方、女性の場合は昭和41年4月1日以前に生まれている方は60歳代前半から公的年金を受け取る権利があるのです。

会社員で厚生年金に加入していた人の場合、老齢基礎年金、老齢厚生年金を65歳から受け取ることができますが、老齢厚生年金に相当する金額を60歳代前半から受け取ることができるというものです。

公的年金は以前は60歳から受け取ることができましたが、受給開始年齢を繰り下げる制度改正の際の経過措置として年金の受給開始年齢を徐々に引き上げる制度となっています。そして小島さんの場合は、ちょうどその経過措置がとられている年代だったのです。

小島さんが受け取ることができる特別支給部分の老齢厚生年金は年間約80万円を受け取ることができます(65歳以降は基礎年金が約80万年+老齢厚生年金80万円で合計160万円、60歳代前半は特別支給部分の老齢厚生年金80万円のみ)。

公的年金の時効は受給開始年齢から5年間です。5年間は遡って受け取ることができるものですが、小島さんはそんな大事な書類が入った封筒を新聞紙やチラシにまぎれて古紙回収に出してしまうところだったのでした。

在職老齢年金の制度

さらに、小島さんは年金事務所の窓口で相談した際に「在職老齢年金」の制度についても知ることになりました。特別支給部分の老齢厚生年金の受給額を質問する際に、職員からいま勤務しているかどうかを尋ねられ、その際に65歳未満の人の場合は年金額と賃金の合計を月割した金額が28万円を超える場合には、超えた分の1/2がカットされて受け取れるというものでした。

現役のころより給与の額は下がっているとはいえ、小島さんの現在の年収を月割すると25万円となり、計算式は下記のようになります。

計算式:(報酬額25万円+年金月額6万5,000円ー28万円)×1/2=1万7,500円

となり、年間約21万円の年金がカットされるということでした。

小島さんは正社員時代の癖で定時で帰宅せずに、惰性でいつも少し残って残業していました。しかし、公的年金が減ってしまうのはまずいと、残業はできるだけせずに定時で帰るように努力するようになりました。

なお、現在では制度が改正になり、65歳未満の人、65歳以上の人共に年金月額と報酬等の月額が48万円を超えた場合に適用されています。

こうして、事前に封筒を見つけたことにより危うく請求漏れしてしまいそうだった年金を請求することができ、減額されそうだった年金を満額受け取ることができることができたのでした。

小島さんはしっかり者の娘に心から感謝しました。

年金は制度を正しく理解し、不明な点は必ず問い合わせる

今回は危うく年金を受け取り損ねてしまいそうになった小島さんの事例をご紹介しました。

年金制度はとても複雑で、今回のような支給開始年齢の引き上げる際など制度が大きく変わる際には特に注意が必要です。

また、年金機構からの通知は重要な書類が多く、自身の年金加入の記録に関する情報も送られてきます。内容が誤っている場合もあり、その場合には本来受け取れる金額よりも少なくなったり、受給できるはずだった年金が受給できなくなるような場合もあります。

そのため、こういった通知が届いた際にはすぐに中身を確認し、不明な点はお近くの年金事務所に問い合わせするようにしましょう。

小川 洋平

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