『虎に翼』“優三”仲野太賀ロスを嘆く声 花岡の“二人でお祝い”の誘いに寅子はどうする?

様々な事情で夢を諦めざるを得なかった友の無念も背負い、弁護士としての道を歩み始めた寅子(伊藤沙莉)。『虎に翼』(NHK総合)第31話では、そんな寅子に最初の難関が訪れる。

昭和14年、春。寅子は司法浪人時代からお世話になっている雲野法律事務所で弁護士修習を受けることに。雲野(塚地武雅)も祝賀会で披露した寅子のスピーチをしかと受け止めたのだろう。「男とか女とか関係なく一人の弁護士として鍛えていくから覚悟しておくように!」という心強い雲野の一言に寅子は奮起させられる。

だが、まだ司法修習生はいわば見習い。実務といっても判例の写しばかりで、数カ月後、花岡(岩田剛典)と公園で昼食をとる寅子の顔は疲れ切っていた。昼休みの集いに加わった轟(戸塚純貴)も同じくやつれている。

この春、轟は久保田(小林涼子)と一緒に共亜事件で若島大臣を弁護した錦田弁護士(磯部勉)の事務所に配属された。もう一人、女性初の弁護士となった中山(安藤輪子)は横浜の事務所で頑張っているという。一年早く高等試験に受かった花岡は残りの修習と2回目の試験が終われば、晴れて裁判官。大学を卒業しても、こうして関係が切れることなく近況を報告し合っているところを見ると、なんだか嬉しくなる。

だけど、同時に思い出すのは“魔女5”のこと。家を守るために有馬男爵と結婚した涼子(桜井ユキ)やお付きの玉(羽瀬川なぎ)、三男を連れて家を飛び出した梅子(平岩紙)、自分を曲げずに高等試験に合格してみせると誓ったよね(土居志央梨)は元気だろうか。特高警察に目をつけられ、朝鮮に帰らざるを得なくなった香淑(ハ・ヨンス)は? どうか無事であって、と願わずにはいられない。

あれから日本はますます戦争の色が濃くなり、ラジオからは各家庭にある金属資源の回収を呼びかけるアナウンスが聞こえてくる。日中戦争も激化する中、雲野法律事務所に飛び込んできたのが、著書に書かれたファシズム批判や政治批判が社会の秩序を乱した疑いがあるとして、起訴されてしまった帝大経済学部の落合教授(樋渡真司)だ。弁護を一歩間違えると非国民扱いされてしまうと、誰にも弁護を引き受けてもらえず、藁にもすがる思いで共亜事件で無罪を勝ち取った雲野の元にやってきたのだった。

落合の熱意に負け、弁護を引き受けることにした雲野。寅子も「非常時だからって言語弾圧を許すわけにはいかない」と正義感に燃えるが、公判でいくら安寧秩序を乱す内容ではないと説明しても、検察側は「疑いがある」の一点張りで埒があかない。それでも、寅子は男女関係なく困った人を救い続けると誓った。去っていった仲間のためにも諦めるわけにはいかない。そんな思いで寝る間も惜しんで落合の著書にもう一度目を通し、出版日をまとめた寅子の頑張りが功を奏す。安寧秩序を乱した疑いがあるとされた落合の著書はいずれも初版が4年前に出版されており、現在流布されている内容と一字一句違いないことに気づいた雲野は、出版法に基づく公訴の時効は1年で、すでに時効が成立していると主張。一審で無罪判決を勝ち取った。

雲野の鮮やかな弁護に興奮気味の寅子だが、家に帰っても聞いてくれる人がいない。というのも、弁護士の道を諦めて直言(岡部たかし)の工場で働き始めた優三(仲野太賀)は猪爪家を出てしまったのだ。きっと優三がいたら寅子と一緒になって喜んでくれたことだろう。別れの時は笑顔で見送った寅子だったが、ふとした瞬間に寂しさが襲ってくる。だけど、あまりにいて当たり前な存在だったから、寅子がその大切さを実感するのはもう少し後なのだろう。

一方で、花岡とも良い雰囲気の寅子。昼休みの集いでも、轟がいるにもかかわらず、寅子と花岡は何やら二人だけの空気に包まれていた。そんな中、花岡から司法修習後の試験に合格。みんなでお祝いしようと思っていた寅子だが、花岡に意を決した様子で「できれば2人で」と誘われる。はたから見れば、完全に両思いの二人だが……あまりにもトントン拍子に進みすぎて逆に不安なのは筆者だけだろうか。
(文=苫とり子)

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