「源氏物語」「伊勢物語」などの華やかな物語屏風も展示 『歌と物語の絵 ―雅やかなやまと絵の世界』泉屋博古館東京で開催

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「やまと絵」の様式を継承した屏風や絵巻物によって、和歌と古典文学の世界を絵画化した「歌絵」と「物語絵」を紹介する展覧会が、港区の泉屋博古館東京で、6月1日(土)から7月21日(日)まで開催される。館蔵の住友コレクションのやまと絵を一挙に公開する豪華な展覧会だ。

日本古来のやまと絵は、平安以来、宮廷や社寺の一級の絵師が貴人の美意識に寄り添いつつ追求してきた絵画様式。桃山から江戸時代になると、そのやまと絵の領域が広がり、かつての一部の貴人のためだったものから、より広い階層へと向けた一段と親しみやすく、視覚効果の高いものへと生まれて変わっていったという。住友コレクションのやまと絵は、そうした変化をとげた17世紀以降の、繊細な描写と典雅な色彩を特徴とする絵巻物や屏風が中心となっており、その雅やかな世界を堪能できるのが同展の魅力のひとつだ。

今回紹介される主なテーマは、和歌と物語。平安時代中頃に和歌の隆盛とともに広がった歌絵は、同展では、和歌に繰り返し詠まれた地名である「歌枕」からイメージされた《柳橋柴舟図屏風》や、和歌を絵画化した扇を画面に散らした屏風などに見ることができる。三十一文字の限られた言葉から最大限の表現を生む和歌と同様、絵画でも、シンプルなモチーフを大胆にデザインした華麗な表現が印象深い。

《柳橋柴舟図屏風》(左隻)江戸・17世紀 泉屋博古館
《柳橋柴舟図屏風》(右隻)江戸・17世紀 泉屋博古館

一方、物語絵は、物語の中を流れる時間を表すような巻物や、特別な場面を抽出してドラマティックに描き出す屏風のかたちで描き継がれてきた。同展の絵巻物では、中世の宮廷絵師による説話絵巻と江戸時代の華麗な物語絵巻のように、時代も趣も異なる作品を見比べられるのが楽しみなところ。屏風では、「伊勢物語」「源氏物語」「平家物語」の三大物語屏風が華やかに並び、こちらも異なる画派による異なる構成の作品を比較しつつ鑑賞できる。こうした絵画には、描かれた時代の好みや解釈も反映されている。当時の人々の気分を映し出した雅やかで華麗、ときにユーモラスな世界が見られるのも興味深いところだ。

《源氏物語図屏風》(右隻)江戸・17世紀 泉屋博古館

本来は手元で見る絵巻や座敷で目にする屏風は、細密描写が大きな見どころである。同展では、文化財用高精細スキャナーで撮影した物語絵屏風3点の拡大画像の紹介もある。ガラスごしでは見えにくい表情や仕草など、緻密な描写も味わいたい。

<開催概要>
企画展『歌と物語の絵 ―雅やかなやまと絵の世界』

会期:2024年6月1日(土)〜7月21日(日)
会場:泉屋博古館東京
時間:11:00〜18:00、金曜は19:00まで(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜(7月15日は開館)、7月16日(火)
料金:一般1,000円、大高600円
公式サイト:
https://sen-oku.or.jp/tokyo/

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