【ジーコに常勝復活を託された男・鈴木優磨に課せられるもの(1)】「3-0でリードしていたら守り切れないと。弱いチームです」。背番号40が東京V戦後に苦言を呈した真意とは

東京ヴェルディ戦後に厳しい表情の鹿島アントラーズFW鈴木優磨 撮影:中地拓也

ガンバ大阪、湘南ベルマーレ、柏レイソルとの大型連休3連戦で勝ち点9を積み上げ、3位に浮上した鹿島アントラーズ。今季開幕からJ1トップを走ってきた初昇格・町田ゼルビアがやや足踏み状態に陥り、好調だったサンフレッチェ広島やセレッソ大阪の勢いにも陰りが見られつつあることで、彼らに大きなチャンスが巡ってきたと言っていい状況だった。

こうした中、12日に迎えたのが、東京ヴェルディ戦(東京V)。ご存じの通り、鹿島対東京というのはJリーグ発足当初の黄金カード。93年チャンピオンシップも両者が熾烈なバトルを繰り広げ、東京Vが最初のリーグタイトルを手にしている。

当時の両軍10番であるジーコ、ラモス瑠偉という偉大なレジェンドがこの試合前にトークショーを実施。ジーコは「今の鹿島のキーマンはユウマ(鈴木優磨)だ」と名指しで大いなる期待を口にした。

「最近のユウマは単にゴールを奪うだけでなく、アシストやチャンスメークの部分でも際立った仕事をしている」とも発言。背番号40は攻撃の絶対的主軸としての価値を”神様”に認められた格好だ。

ならば、偉大な先人の目の前で異彩を放ち、明確な結果を残さなければならない。鈴木優磨自身にも強い覚悟があったに違いない。

それを具現化したのが、開始早々の先制点だった。前半3分に名古新太郎が蹴った右CKを相手FW木村勇大がハンド。それがVAR判定で明らかになり、鹿島にPKが与えられ、背番号40がゴール前に立った。彼は相手守護神・マテウスの動きをしっかりと見極め、逆を取って左隅に蹴り込む。今季6点目となる一撃で東京Vにカウンターパンチを食らわせたのである。

■「もう少しうまい守り方はあった」

そこからの試合運びも素晴らしかった。3分後には名古新太郎が2点目を叩き出し、リードを広げる。鈴木優磨自身も引いてボールを受けて逆サイドに展開したり、前線で起点になったりと幅広い役割を披露。ジーコが言う通りの大黒柱らしい働きを示していた。

2点リードの後半も鹿島は開始早々に右CKから植田直通が3点目を挙げ、勝負を決めたかと思われた。ゆえに、ランコ・ポポヴィッチ監督もイエローカード3枚をもらっている濃野公人らを下げる采配を見せたのだろう。

ところが、鹿島は選手交代によってバランスが崩れ、相手が左の切り札、チアゴ・アウベスを投入してきたことで、一気に攻め込まれ始める。そして後半24分に齋藤功佑の一撃を浴びると、さらに混乱に陥る。

「バランスを取っていましたけど、サイドにドリブルが武器の選手が入った時に、そのカバーをするのか行きすぎて真ん中を空けてしまう時もあるので。サイドバックのカバーはしないといけないけど、もう少しうまい守り方はあったと思います」と佐野海舟も反省していたが、最終的にズレを修正できないまま1点差に詰め寄られ、後半ロスタイムに3点目を献上。終わってみれば、3-3のドローという信じがたい結果に終わったのである。

■「弱いチームです。まだまだひどいんで」

ゴール裏から大ブーイングが浴びせられる中、フル出場した鈴木優磨は誰よりも責任を痛感していたのだろう。

「3-0でリードしてたら、やっぱり守り切れないと。弱いチームです。まだまだひどいんで」
彼はこう言葉を絞り出すしかなかった。

やはり”神様”の御前で常勝軍団復活への希望を見られなかった悔しさは誰よりも強いものがあったはず。3点リードで勝ち切れない勝負弱さをどう克服していくのか。背番号40は大きな壁にぶつかった格好だ。

(取材・文/元川悦子)

(後編へ続く)

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