巨人“正捕手問題”は「チームの転換期」 大城卓が2軍へ…小林が再評価される理由

巨人・大城卓三(左)と小林誠司【写真:矢口亨】

昨季134試合出場の大城卓は2軍降格…小林、岸田がマスクを被る

巨人は12日のヤクルト戦(神宮)に1-3で敗れ、連勝は「4」でストップした。首位から一夜で陥落したが、ここまで19勝16敗3分で2位と、Aクラスをキープ。昨季とは違う捕手複数制を取り入れ、守り勝つ野球を見せている。野球評論家の新井宏昌氏は“正捕手問題”を「現状を把握したチームの転換期」と分析する。

昨年まで正捕手争いで一歩リードしていたのは強打が売りの大城卓だった。今季も開幕スタメンを勝ち取ったが、23試合出場で打率.188、0本塁打3打点と打撃不振もあり、5月8日に2軍降格。昨季は自己最多の134試合で打率.281、16本塁打を放った正捕手に代わって、マスクを被るのが小林と岸田だ。

そのなかで特に存在感を見せているのが、2017年にゴールデン・グラブ賞に輝いた小林。ディフェンス面に定評がありながらここ数年は出番が減少し、昨季はわずか21試合の出場に留まった。だが、今季はすでに17試合(先発14試合)に出場し強力投手陣を支えている。

チームは2020年を最後にリーグ制覇から遠ざかり、この2年間はBクラスに甘んじた。新井氏は今季から捕手出身の阿部監督が指揮を執ることで、“野球観”の変化が見られるという。「これまでは巨人が得意とした打ち勝つ野球。だが、現状は岡本和以外に長打は期待できない。若手も積極的に使い犠打、エンドランなどで僅差のゲームをものにするために捕手としての能力が高い小林にシフトした」と指摘する。

“強打の捕手”だった阿部監督だが「捕手出身監督は守り重視の傾向」

ここまで4勝0敗、防御率1.37と復活の兆しを見せる菅野とのバッテリーで再評価され、キャッチングや強肩を生かしたスローイングも「1軍で十分に通用するレベル」だという。阿部監督は現役時代に“強打の捕手”として活躍したが「チーム全体を考えると、捕手出身監督は守り重視の傾向がある。その中で小林が一番フィットするということでしょう」と新井氏。

大城卓に比べれば打力に劣る小林だが、この日は7回先頭で四球を選び二盗(エンドランで打者が空振り)に成功。「打つだけが必要なことではない。最低限やるべきことはできている」。その後は門脇の右飛でタッチアップし三進するなど、下位打線としての役割を果たしているといえる。

リーグワーストのチーム打率.228ながら、首位・阪神に0.5ゲーム差の2位。貯金「3」をキープできているのは、投手を含めたバッテリーの踏ん張りだ。打線の奮起が待たれるところだが、新井氏は「巨人も時代、時代によってあり方が変わっている。阿部監督も現状を把握し、捕手の重要性を考えていると思います」と話す。

チーム全体の打撃が向上し、大城卓が1軍復帰した時に阿部監督はどのような起用法を見せるか。今季の巨人は“正捕手問題”にも注目が集まりそうだ。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

© 株式会社Creative2