日本の席取り方法が海外ではあり得ない理由とは 自転車盗難や強盗に遭遇した友人 日本人女性の驚きの体験談

イギリスのカフェ。ホッとひと息をつきたいものだけれど…【写真:Moyo】

世界的に見ても、治安が良い日本。同じ感覚のまま海外旅行をしたり、暮らし始めたりしたら、危険な目に遭う可能性があります。ひょんなことからイギリスに移住、就職し、海外在住歴7年を超えたMoyoさんが、外国暮らしのリアルを綴るこの連載。27回目は、ロンドン生活で身近に起きた犯罪についてです。

◇ ◇ ◇

気を緩められないカフェ

海外のカフェなどでスマートフォンやノートパソコン、バッグを置いて離席することはありえない、とよくいわれますがこれは本当です。

ある友人は会社のランチ休憩でカフェを訪れた際、テーブルの下に少し荷物を置けるスペースがあったので、そこにショルダーバッグをぽんっと置いて、同僚との会話を楽しんでいました。その友人は基本的に慎重な性格でしたが、テーブルが一つひとつ離れた配置だったことに安心し、誰かが盗みに近寄ってきてもわかると思ったそうです。

ですが、いざ帰ろうと席を立ち上がるとバッグがないことに気づき大慌て。スマホはかろうじてテーブルの上で自分が握りしめていたため無事だったものの、バッグのなかにはお財布のほかに、家の鍵や会社のIDカードなど何もかもが入っていました。

盗んだ犯人が悪いことに変わりありませんが、少し気が緩んでしまった自分のミスに茫然自失として、彼女はしばらくショックから立ち直ることができませんでした。

しかし数日後、突然見知らぬ番号から連絡が。カフェから少し離れた住居地のゴミ箱に、彼女のバッグが不自然に捨てられていたのです。それを見つけた人が、残されていた持ち物から彼女の身元を調べて連絡してくれました。

現金などはしっかり盗まれていましたが、足がつかないようにそのほかのものはほとんど戻ってきたため、彼女の気持ちも少し落ち着きました。

日本ではバッグなどを置いて席をとってから注文しに行ったり、トイレのために離席したりする人が多いですが、海外では目を離した隙に何が起こるかわからないので絶対にやめましょう。隣に座っている人にお願いして荷物を見ていてもらうということもできますが、保証はありません。席取りにはハンカチやノートなどを代わりに使い、貴重品は肌身離さず持っているほうが安全です。

キングス・クロス駅周辺の自転車【写真:Moyo】

遅刻してでも自転車の盗難を防ぐ

また日常的によく起きるのは自転車の盗難。どんなに厳重にロックしていても盗まれないほうがまれかもしれません。友人は盗難に気をつけて、パブで自分の座っているテーブル近くに駐輪して1杯していたにもかかわらず、気づいたら自転車がなくなっていたそうです。

道端ではよく、自転車の前輪や後輪、もしくは両輪が外されて駐輪している光景が広がっています。私もイギリスで自転車に乗る生活をしていましたが、そこまでしないと守りきれないんだなと思い、しばらくの間、購入を躊躇していたことがあります(結局、購入しましたが)。

自転車を買うときにアドバイスされたのが、ブラックやシルバーなど人気のあるベーシックカラーではなく、明るい赤やパステルカラーなど、あえて人気のない色を選ぶこと。それだけで少し狙われにくくなるそうです。

警察への届出や保険加入などいろいろと対策はありますが、一度盗まれれば無事に見つかるほうがまれ。せっかく気に入って購入しても盗まれたら一巻の終わりです。執着しないほうが気分も軽くなる、と友人もアドバイスしてくれました。

連載の第22回でで通勤に自転車を使っていたことをお話ししましたが、始めてすぐのある日、手続きミスでビル内の駐輪場に停められないことがありました。仕方なく会社のあるビル近辺の路上に停めようか迷っていたら、警備員が口を揃えて「絶対に盗まれるからやめたほうがいい。それなら遅刻してでも家に帰ったほうが絶対いい」とアドバイスしてきます。結局、手続きがなんとかうまくいき、その日はビル内に駐めることができました。

しかし後日、同じような問題が、いつも自転車通勤をしている同僚に降りかかりました。その同僚は遅刻して会社に到着。なんと彼女の場合は埒があかなかったので、自転車を戻しに一度自宅に帰ったそうです。彼女は片道約40分くらいかかるところに住んでいたので、かなりの力技だと思いましたが、やはりお気に入りの自転車盗難ほど悲しいことはないので、仕方がありませんよね。

トラウマになる自宅やお店への強盗

自転車の窃盗だけでなく、家屋への窃盗や強盗も頻繁に起きます。友人は数時間、自宅を留守にしている間に窓から泥棒に入られてしまいました。しかも、友人が戻ったときに犯人はまだ室内おり、いつもと違う様子を不審に思い友人がおそるおそる家に入っていくと、犯人が窓から出ていく後ろ姿を見てしまったそうです。

犯人の物色中にタイミング良く家に帰宅したため、幸いこの友人に身体的な被害や、盗難被害などはありませんでした。しかし、窓などが壊されていたり、家のあちこちに形跡が残っていたりしていて、しばらくトラウマに怯えていたことはいうまでもありません。

また別の友人は、新しいアパートメントに引越ししてまもなく、ある日帰宅するとノートパソコンなどの貴重品がすべて盗まれていたこともありました。捜査の結果、その犯人は前に住んでいた住人で、合鍵を使って侵入したんだろうということでした。

さらに、アルバイト中に強盗と遭遇した知り合いもいます。ファッションブランドの路面店で接客業をしていたところ、強盗に押し入られてお金を奪われたケースでした。彼女自身に怪我などはありませんでしたが、あまりのショックですぐにそのバイトを辞めました。

また、カフェのマネージャーが休憩中にお店を閉めてノートパソコンで事務作業をしていたところ、強盗がいきなりドアを打ち破って侵入。パソコンや金銭を持って行ったという事件もあります。

例を挙げればキリがありませんが、本当に誰もが何かしらのエピソードを持っているのがロンドンです。どんなに自分が気をつけていても、不運にも巻き込まれる可能性はあります。最大限予防しつつ、ぜひ安全な生活を送ってください。

Moyo(モヨ)
新卒採用で日本の出版社に入社するも、心身ともに疲弊し20代後半にノープランで退職。それまでの海外経験は数度の旅行程度だったが、イギリスへ語学留学ののち移住した。そのまま、あれよあれよと7年の月日が経ち、現在はフランスに在住。ライター、エディター、翻訳家、コンサルタントとして活動している。最近ようやくチーズのおいしさに少し目覚める。

© 株式会社Creative2